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2019年01月10日20:28

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米澤穂信『本と鍵の季節』(集英社、2018年)を読む

 米澤穂信『本と鍵の季節』(集英社、2018年)を読み終えた。主な登場人物は、高校二年の男子二人。人が死ぬような話ではなく、ライトなミステリ小説である。そして目の前の謎を解き明かしたあとの、鈍い痛みというか、苦みが残る感じも、いつもの米澤節といったところ。謎がすっきり解けても、めでたしめでたしとはならない点、好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、私はこの苦みを求めて、この人の本を読んでいるような気がしている。

 米澤さんの代表作のひとつ「<古典部>シリーズ」(『氷菓』など)は、アニメ化もして、私も見たけれど、原作と比べると結末がマイルドになっている。とはいえ、あの苦みは小説だからいいのであって、映像作品だと必要以上に後味が悪くなる可能性もあった。だから、アニメ版の『氷菓』はむしろ安心して見られる点でいい作品に仕上がっていると思う。

 今回の作品には、女性が主要人物として登場しない。米澤さんの作品で登場する女性たちは、みな芯が強い。そこがないぶん、男子高校生二人が、それぞれの価値観を補い合いながら物語が進んでいった。
 あとから振り返ると、高校時代はまぶしいようにも思ってしまいがちなのだけれど、そうだよね、どんよりとした曇り空みたいな日々だったよなと、思い返す。米澤さんの小説を読むと、いつもそんな気持ちになる。
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