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2017年09月07日18:41

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フランク永井と青江三奈、ジャズの聴き比べで感じる青江三奈の歌唱力

 フランク永井のジャズの実力には定評がある。ジャズ出身というかジャズ歌手になることが目標で本人はビクターに入った。デビュー曲は「恋人よわれに帰れ」(1955(S30)年10月:A-5206-B面)。
 日本人の歌手で例え当時の米軍キャンプで歌っていたとはいえ、レコードの売れるジャズスターになることは、よほどのことがない限り難しく、結局は流行歌手になった。これは結果的に正解で、フランク永井は昭和歌謡を背負うスターになった。
 フランク永井はそれでもジャズへの思いは深く、公演では必ずと言っていいほど好きな洋楽をプログラムに入れた。英語の勉強も絶やさずに磨きをかけた。そうした努力は、何枚かジャズのアルバムを出しているが、最終的に「オール・オブ・ミー〜スタンダードを歌う」(1981(S56):SJX-30051)に満足いく集大成をなしとげたのではないだろうか。当時第一線で活躍するジャズ仲間とともに楽しみながらぞんぶんの歌唱をしている。
 データブックにも記したが洋楽は100曲ほど歌い残しているのだが、表だって流行歌から解放されて、好きな歌に打ち込んだことで、満面の笑顔も写真で残された。
 フランク永井のジャズはその後、繰り返しいくつものCD作品で出され、いまだに流行歌と両翼を飾っている。
 「オール・オブ・ミー」は大好きな一曲である。

 さて、同じレコード会社の青江三奈だが、彼女については何度か取り上げているが筆者は当時あまり聴かなかった。彼女は1941(S16)年生まれで2000年に膵臓癌で亡くなっている。59歳の若さだった。
 鬼才川内康範の「恍惚のブルース」でデビューしいきなりの大ヒットを得たということもあるが、青江の印象は異例のかすれ声(ハスキー)と、ため息路線などと言われたように過剰ともいえる色気を前面に出す歌い方が印象だ。
 言うまでもなく、この世界での売り込みをどう強く印象付けるかという商戦の名残。川内康範の「誰よりも君を愛す」とか、城卓矢「骨まで愛して」など川内のコトに通常線を数歩も踏み込んだストレートな歌詞を、歌いこなすには並みの技量ではできない。
 青江は見事に川内が描く世界をてらいなくやってしまった。それは青江が並みの歌い手ではないことのあかし。高校時代から銀巴里に立ち、池袋のクラブでたいていの歌を求められては歌いこなしていた。この長き時代に、鍛えぬいた歌唱力があの声になったのかもしれない。
 NHK紅白には18回出場、日本レコード大賞も多数受賞しているほんものの実力歌手である。
 さてその青江はフランク永井と同じように連日は子供向きでないお色気歌手だが、ジャズへの志向も並々ならないものを秘めていた。1984年海外(ブラジル)での公演を経て思いが、1993年の初のジャズアルバムに結実する。THE SHADOW OF LAVE(1993/10:VICJ-182)。
 青江が世界に通用するような見事な歌唱を披露した。本人も意外な公表に驚き、ニューヨーク公演までする。1995年にライブ Passion Mina In N,Y.(VICL-724)を発売するに至る。が、こちらは主に和曲のカバー。
 THE SHADOW OF LOVEには、以下13曲が採録されている。
  01_CRY ME A RIVER
  02_IT'S ONLY A PAPER MOON
  03_THE MAN I LOVE
  04_LOVE LETTERS
  05_LOVER, COME BACK TO ME
  06_BOUBON STREET BLUES〜伊勢佐木町ブルース
  07_HARBOUR LIGHT
  08_WHEN THE BAND BEGIN TO PLAY
  09_WHAT A DIFFERNCE A DAY MADE
  10_GREEN EYES
  11_GRAY SHADE OF LOVE
  12_SENTIMENTAL JOURNEY
  13_HONMOKU BLUES〜本牧ブルース
 マル・ウォルドロンが編曲、フレディ・コールとのヴォーカル・デュエットがはいる。青江の大ヒット作品「伊勢佐木町ブルース」「本牧ブルース」が英語版で登場する。知れたジャズ曲が多くいくつかはフランク永井も歌っていて、その聴き比べに興味があった。
 基本的に青江のは米国でのリズムが基調。それでも全体の編曲が耳に心地よく青江の声がこれほどジャズにあっているとは、驚きだった。ジャズ歌手にはハスキーが多いこともあるが、逆に青江のハスキーは抑えられたように感じるのが不思議だ。

 さて余談になるが、フランク永井のLP「オール・オブ・ミー」の録音も技術者の自慢で、これは近年のハイレゾ音源化するときのサンプルとして利用された。ビクターからもハイレゾ版でリリースされている。
 ハイレゾは通常のCD音源よりも何倍か音質が良くなっているとされる。CD自身も最初に商品化された1980年の初頭から比較すると、その後同じサンプリング周波数・ビットレートでも格段の改善がなされてきた。
 そこに関係する技術の詳細は複雑で説明できない。CDに刻む混むデータを汎用としながらもプラス補正データを埋め込むのだ。だから、その補正データを再生プレーヤが読み取り再現しなければ、意味がなくなる。プレーヤの機種によって異なることになる。
 これではまずいと言える。しかし共通で仕込まれている機能(映画でもそうだがよく聞くドルビーなど)のせいで良くなったようだ。
 青江のTHE SHADOW OF LOVEを見ていてあらためてその表記に気付いたのだが、20bitK2という機能。これはCDの16bit深度に20bitで用意したデータを挿入しているのだという。確かビクターの技術陣の開発だ。
 では、その再生時のプレーヤにそのデータを復刻変換する機能は「標準で付いて」いるのだろうか。いまどき、Dolbyもそうだけど20bitK2再生対応などとプレーヤに記載されているのを見たことがない(ように思う)のだが…。当然装着だからないのかは分からない。
 もし再生機能で対応していないのなら、ただのCD規格レベルの音にしかならないわけだ。などとつらつら頭をめぐらしつつ、青江三奈アルバム(リリース時は当然だがLPはすでになく、CDで発売)を楽しんだ。素晴らしい演奏と歌唱だ。
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