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2016年07月10日19:07

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読書日記Nо.929(なんだか「向こう」の方が楽しそうだ)

■坪内祐三「昭和にサヨウナラ」2016年4月扶桑社刊

本日、7/10は、参議院選挙。

政治的人間ではないので、この道楽読書日記でも、いわゆる
政治の話はしないが、一応、朝8時前に、投票所には足を運んだ。

21歳の二女は、今回が初めての選挙の投票で、さらに、選管の
アルバイトで、期日前投票や、本日投票所の事務をしている。

時給1000円で、こんな楽なバイトはないとのこと。都知事選だけで
50億円かかるというので、国政選挙では、いくら経費がかかるのか。

がらにもなく、選挙の話をしたが、それはたまたま本日がそうだった
からということです。

さてさて、本書のことでした。

紀伊国屋新宿店の店頭で、青い美しい表紙の本を見かけて、帯の文言
を見て手に取ってしまった。

“なんだか「向こう」の方が楽しそうだ”。

「向こう」とは、もちろん彼岸のことで、本書は、レクイエム集なんです。

惹句を紹介しますね。

“気鋭の評論家が活写した、忘れられない先達へのレクイエム集”

“久世光彦、中村勘三郎、丸谷才一、赤瀬川原平、車谷長吉、野坂昭如etc.
類いまれなる観察者=“文士”による、人の、街の、時代の貴重な記録&追悼随筆集。”

著者の坪内祐三さんは、雑誌のコラムなどで、目にはしたことがあるが、
著書をきちんと読んだことはなかった。

略歴は以下。

1958年東京都生まれ。文芸評論家。早稲田大学文学部英文学科卒業。
文芸クォリティマガジン『en-taxi』の編集同人をつとめる。著書に『ストリーワイズ』
『靖国』『古臭いぞ私は』『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』(2001年講談社エッセイ
賞受賞)『文学を探せ』『探訪記者松崎天民』『父系図』など多数。編書に『明治文学』
(全25巻・筑摩書房)などがある。

書評は、新聞や雑誌にもいくつか掲載されていたが、著者と同業者(編集者から
物書きになったキャリア)の嵐山光三郎さんが、「週刊ポスト」の書いていた文章の
さわりを紹介。

“サヨウナラ友ヨ。
 サヨウナラ師ヨ。
 サヨウナラ父ヨ。”

“ 知己を失うことは、自分のからだの一部を失うことなのだ。日常生活で知りあい、
バーで語りあい、芝居で会い、編集者としてつきあい、ときにケンカし、決別して、
ひょんなことで和解する。”

“ 坪内氏が親しくしていた友人知己との永訣を語りつくす。その語り口はトツトツ
として読者の心をたたく。”

レイクエムとしても心によく響いてくるが、私は、東京の出版文化における人物たち
の交友録としても強い印象を受けた。

文化は、人と人との交流の火花から生み出されるものでもある。

著者は、その最前線にいて、その謦咳に接し、編集者としても仕事をしてきた。
だから、諸先輩たちへのレクイエムが、こんなにも読者の胸に響いてくるのだと思う。

I miss you。

レクイエムで読みとるのは、その気持ちの切実さだけだ。
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