11/26(木)、静岡文化芸術大学の授業〈文化と芸術C〉の聴講第8回。
テーマ；第1次世界大戦後の音楽状況
講師；上山典子
◆第1次世界大戦による帝国の崩壊
4つの帝国がこの戦争中,戦争後に消えてなくなった。
�．�ーストリア=ハンガリー帝国(ハプスブルク帝国)
�▲疋ぅ陳觜�(プロイセン王国)
��ロシア帝国(ロマノフ王朝)
�ぅ�スマン帝国(オスマントルコ)
�．魯廛好屮襯�家を君主/皇帝とする王国/帝国(神聖ローマ帝国〜オーストリア帝国〜オーストリア=ハンガリー帝国)、650年近く権力を保持。1918年、皇帝カール1世退位。実質的な最後の皇帝はフランツ・ヨーゼフ1世(1916没)。オーストリア,チェコスロヴァキア,ハンガリー他の小国に分裂。
�▲疋ぅ蝶很�(1918-19)により、皇帝ヴィルヘルム2世オランダ亡命〜退位。ヴァイマール共和国成立。
��ロシア革命(1917)によりロマノフ朝皇帝ニコライ2世退位。1922年ソビエト連邦樹立。
��1922年メフメト6世亡命により帝国崩壊。1923年トルコ共和国成立。
欧米諸国の状況
・アメリカ；
空前の繁栄期を迎えた。世界最大の債権国に(戦前は大債務国)。
大量生産、大量消費、大衆文化の出現。
南部から黒人の移住。国外からの移民増。都市問題の発生。
…シカゴ好景気。反面、スラム街、職にあぶれた貧民。
・ドイツ；
1919年、ヴァイマール共和国成立。
ヴァイマールはドイツ古典主義の都。リスト等が宮廷音楽家として活躍。
ヴァイマール憲法制定。1933年ナチス政権奪取迄の短命に終わる。
インフレ進行、マルク価値、戦前の1兆分の1に下落。
1923年、戦争賠償金支払い不履行。アメリカの援助で復興。
・イタリア；
急激な右傾化が進む。ムッソリーニの台頭。(ヒトラーより早い)
◆体制変化によるオペラ劇場の変化
宮廷劇場から国立歌劇場へ。
<19c>. <第1次大戦後>
宮廷劇場(王家の私的所有物) 国立歌劇場(オペラ劇場の国有化)
…パリオペラ座は例外(半官半民)
上流社会の社交場 国によって運営される「文化の伝統」へ
王家の富の誇示
宮廷の主の趣味の反映 大衆の好みに対応
…特定のレパートリー …新作発表増
◆新古典主義の勃興
・1918年、第1次大戦終結後に生まれた新しい芸術動向。
・大戦前の印象主義(漠然)や表現主義(ドロドロ)、または後期ロマン大袈裟で感情過多の主観主義、大編成オーケストラに対する反動。
→簡素な旋律、簡素な形式による明朗な音楽
…「デ･スティル」「バウハウス」等、美術,建築世界と傾向を同じくする。
・ストラヴィンスキーの変化。
原始主義/大オーケストラ → 旋律線、バスの輪郭が明確に/小編成。
ex.『春の祭典』 『兵士の物語』
・反ワーグナー
「フランス6人組」；
�．襯�･デュレ(1888-1979),�▲▲襯謄紂愁�･オネゲル(1892-1955),��ダリウス･ミョー(1892-1974),�ぅ献Д襯瓠璽�･タイユフェール(1892-1982),�ゥ侫薀鵐轡�･プーランク(1899-1962),�Ε献腑襯献�･オーリック(1899-1982)
�ー匆饉腟舛坊硬櫃垢襦Ｂ臀芦山擴範¬漸馗垢法�社会主義的音楽のあり方(社会の為の音楽、判り易い音楽)を主張するようになる。
�▲好ぅ更饑辧�従軍。騒音音楽の取り込み。ex『パシフィック231』。スイス･フラン紙幣(20フラン)のモデルに。オネゲルのみワーグナー嗜好。
��ユダヤ人。映画音楽に傾注していく。1940年米移住、その後パリへ。
�そ�性の台頭。
�◆銑�1892年生まれ、パリ音楽院の同窓。
�ゥ團▲縫好函�オペラも作曲。両性愛、愛人の1人に小説家･詩人のレイモン･ラディゲがいた。
�Ρ撚莢山據�ex.『ローマの休日』
・批評家アンリ･コレが1920年に命名した一派。新古典主義の音楽傾向を代表する。
・6人組の精神的モデルはエリック･サティ(1866-1925)。
・精神的支柱/指導者はジャン･コクトー(1889-1963/詩人,小説家,劇作家)。
・多ジャンル芸術の交流
・音楽傾向；
バッハ,ラモーといったバロック時代の音楽の復活。
調性を維持しつつも、多調,複調等新手法も取り入れ。単なる復古,懐旧ではない。
エリック･サティ；
・未来の音楽を先取りする新しい考え方を提示した先駆者。
・1887-95年、モンマルトルにあるキャバレーのピアニストに。シャンソン作曲ex.『ジュ･トゥ･ヴ』。またある秘密結社の公認作曲家であった時も。
・パリ音楽院中退(学籍は10年)、アカデミズムに馴染まず。
・1910年代、ダダやシュルレアリスムの芸術家達と交流。
・ロシアバレエ団に委嘱された『パラード』(1917)を作曲。ジャン･コクトー(台本),パブロ･ピカソ(舞台装置,衣装),レオニード･マシーン(振付)等、前衛芸術家達と共同作業が実現。センセーションを呼ぶ(音楽よりピカソの衣装に)。初演は戦中。サイレン,タイプライター,ピストル,ラジオの雑音,蒸気船のポー等、日常音を取り込み。
・サティに対する世間の評価の変化
19世紀末は単なる「変わり者」 → 第1次大戦末期には一転して注目を集める。
・室内楽『家具の音楽』(1920)
座り心地の良い椅子や何気なく壁に掛けられた絵画のように、人々の注意を惹かず、意識的に聴かれる事のない音楽、という理念を提唱。現代のBGM的な概念。
CD試聴�．廖璽薀鵐�『3つの無窮動』(1918)
大戦中作曲のピアノ曲。無窮動＝常動曲、動きが窮まる事なく果てしなく続く。
1曲目、判り易く親しみやすいメロディの反復。同じ左手伴奏。しかし、激しい転調がふんだんに。
2曲目、訥々として、洗練しない雰囲気。
3曲目、快活なリズム楽章。和音の響きは印象派的な感じ。
試聴�▲潺隋次�3章の6つの舞曲』(1969-70)
2台のピアノの為の作品。ミョーは2人にそれぞれ3つずつの舞曲を献呈。1章毎2つの舞曲がセットされているが、別々に弾いてもよいし、重ねて弾いてもよい、という珍しい発想と指示。
それぞれは落ち着いて、整然とした感じ。しかし2曲重ねて弾くと、複調曲という新味。
6人組には2台のピアノの為の作品が多い。
試聴��サティ『パラード』(1917)より、「アメリカの少女」
タイプライターの音を使用。打楽器リズムと効果音として。ピストル音、蒸気船のポー音も。
ジャズの取り入れ、ラグタイム。
未来派の騒音音楽をサティは日常音として取り込み創作した。
サティの後世への影響、日常音の使用は「環境音楽」または「サウンドスケープ(音風景)」(マリー･シェーファーetc.)へ、『ヴェクサシオン』の840回繰り返せという指示は「ミニマリズム」(スティーヴン･ライヒetc.)等へ。
試聴�て院悒献爛離撻妊�』第1番
管弦楽版≒ドビュッシー編曲
試聴�テ院▲轡礇鵐愁鵝悒献�･トゥ･ヴ(あなたが欲しい)』
キャバレー時代作品。ピアノソロ編曲。歌詞はアンリ･パコ―リ。
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