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2015年11月14日18:23

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映画「火葬」

「第一回大阪韓国映画祭」というイベントにて見に行ってきました。
主演が韓国の名優・安聖基(アン・ソンギ)、監督がこれまた韓国を代表する監督の林權澤(イム・グォンテク)となれば、見逃せない。

オ・サンム(アン・ソンギ)は大手化粧品会社の常務。
脳腫瘍に冒され、四年の闘病生活を送っていた妻(キム・ホジョン)が亡くなった。
あわただしく葬儀の準備に追われながら、オ常務は、妻に献身的な介護を続けた日々を思い出す。
そして通夜の席にやってきた、部下のウンジュ(キム・ギュリ)の姿に、彼の心はざわめく。

中途採用で、広報部門に配属になったウンジュ。
最初に見たときから、オ常務はその美しさにひきつけられる。
しかし、すでに妻はつらい闘病の毎日を送っていた。寝不足になりながら妻の病院に足しげく通う彼は、どこか妻を裏切っているような後ろめたさを感じてしまう。

バイタリティがあって仕事もできるウンジュを、ついつい見つめていることに気づくオ常務。
病身の妻とはあまりにも対照的なはつらつとした美しさは、まぶしいほどだった。
かといって、何か行動をおこすわけでもない。
オ常務はシモの世話もいとわず妻を看護するが、逆にその献身ぶりに「お母さんはこんなに弱っているんだ」と、見舞いに来た彼の娘は号泣してしまう。

忘年会でウンジュからプレゼントだと言って赤ワインを渡されたオ常務。
病室に置いていたところ、妻はまるでなにかを感じたかのように、そのワインをガブ飲みしてしまった。

そんなある日、会社で「結婚します」とウンジュから報告が。
逆にオ常務はこれで彼女に対する、淡い期待のような想いがふっきれる、と安堵した感じだった。

ところがウンジュの婚約者の女性関係がモトで結婚は白紙に。
オ常務は、どこかで彼女の破談を歓迎する自分がいることに改めて気づく。
ウンジュは結婚式の招待状まで同僚に送っていたため、会社にいづらくなった。
そして彼女は得意の中国語を生かし、中国進出する同業他社の面接を受けてみたいと、オ常務に相談。彼は推薦状を書くよ、と彼女に言う。

真夜中の病室でノートPCを開き、ウンジュの推薦状を作成していると、妻が目を覚ました。
「こんな時間まで仕事なの?」。
まもなく妻は帰らぬ人になるが、火葬場でオ常務のスマホに届いたのはウンジュからの「面接した会社に受かりました」というメールだった。

「会ってください」というメールもさらに届くが、オ常務はそれらをすべて削除してしまう。
葬儀のあと、別荘に妻の遺品整理にやってきたが、そこへ「今からそちらへ向かっています」というウンジュからのメールが届く。

別荘へ到着したウンジュは、鍵のかかっていない室内に入るが、オ常務はいない。
幾度スマホを鳴らしても出ない。
オ常務は彼女と入れ違いに別荘を出て、山道を歩き続けていた。

そしてその脇をウンジュの運転するクルマが通り過ぎてゆく。
彼女は、そこにオ常務が歩いていることに気づいているはずなのに、声をかけるでもなくスピードを上げて通り過ぎて行った・・・


物語は葬儀のシーンと、妻が生きていた頃の風景が交互に描かれていく。
妻がいるのに美しく若い部下に心奪われる、初老の男、というと不倫モノかと思うが、結局そういった場面も一切ないし、ふたりとも告白するでもない。
しかし、病身の妻が第一だけど、ウンジュが気になってしょうがない、ウンジュのほうも厳しい上司だけれどもオ常務を、カッコよくすてきな人と好感を持っているー。
そういったふたりの微妙な感情の行き来の表現が、実にうまい。恋になる一歩手前、そしてお互いがブレーキをかけているのだが、病が重くなる妻をいたわり、介護することでそんな想いを断ち切ろうとするかのようだ。

アン・ソンギという俳優を知ってからもう30年近くになる。
ずっと長いことファンなのだが、初めてスクリーンで見たとき「役所広司と鹿賀丈史を足して2で割ったような感じ」と思った彼も63歳になった。
アップになるとさすがにああ、年をとったなあ・・と思ってしまう。
しかし、イム監督はあえて「疲れた老年に差し掛かった男」を描くため、こういったシーンを多用したように思える。
オ常務は前立腺肥大症を患っていて、病院で定期的に出にくくなった尿を抜いてもらっているシーンとか、えっ! と思うような場面が登場する。
排泄物で下着を汚した妻を浴室に連れて行って洗ってやるシーンはある意味壮絶で、わたしのすぐ後ろの席からは涙をすする音が聞かれた。

オ常務とウンジュのあいだには通いあっている心情が確かにある。
しかしそれをぶつければ、取り返せないところに来てしまう。
だからなのか、あえて想いを語ることなく、山道を去っていくウンジュのクルマ。
わたしはそこにイム監督の名作「西便制(ソピョンジェ)〜風の丘を越えて」のラストシーンを見る思いがした。
あれも、長いこと離れ離れになった姉弟がようやく再会できたのに、あえて名乗らずに去っていく、というものだったのだ。

今回の日本公開タイトルは「火葬」となっているが、韓国では「火葬/化粧」となっているようだ。
化粧品会社で働くオ常務とウンジュに掛けているのだろう。
ちなみに韓国語の発音は「火葬」も「化粧」もおなじ「ファジャン」である。

また、女優のキム・ギュリは日本のタレントでいえば、ちょっと石原さとみに、キム・ホジョンは、モデルのはなに似ているので、見ながらなんとなく親しみがわく。
(11月14日、グランフロント大阪・ナレッジセンター)
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