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2015年11月05日16:25

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五姓田義松展図録/角田拓朗他編･著～その1

五姓田義松展を10/20(水)に神奈川県立歴史博物館で観た事は、先月24日に、連続する2つの日記で書いた。
そこでも記したように、同展図録は売り切れていて持ち帰る事ができず、注文して家に送ってもらう手続きを取った。
月末予定と言っていたが、それは10/29(木)に届いた。
800点の作品(デッサン,下絵含む)と資料を集めた展覧会だったから、図録も287ページという分厚いものになった。

・タイトル　『平成27年度特別展没後100年五姓田義松―最後の天才―』
・編･著　角田拓朗
・発行　2015.10.23、神奈川県立歴史博物館

発行の上に印刷日が記されていて、同年10/16となっている。版数は書かれていない。
という事は、会期が9/19～11/8だったのだから、オープン時にまだ図録は用意されていなかった。私が行った10/20時も、恐らく試し刷り程度しかできていなかったのではないか、そんな風に推察した次第である。

図録は以下の構成で並べられている。(展示の順序とは違う。)

Ⅰ　鉛筆画/水彩画
Ⅱ　油彩画
Ⅲ　家族/自画像
Ⅳ　五姓田義松旧蔵作品群
Ⅴ　資料編

技法と絵のモチーフによる仕分け、そして、誰が所蔵していたによる仕分けが混在しているので、見にくさ、捜しにくさはある。

Ⅳの「五姓田義松旧蔵作品群」というのは、没する時義松の手許にあったもので、KPMのナンバリングがなされている。神奈川県立歴史博物館(Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History)が所蔵･整理をし、1～636迄の番号が付されている。但し、図録上では、絵のモチーフ等によって、あちこちに散らばっている。

他に「齋藤俊吉氏旧蔵品」という分類もあり、齋藤俊吉氏の母親が義松未亡人の家政婦をしていた縁で譲り受けたものらしい。
これらは、当館寄託品の位置付け。63点あって、図録では全部Ⅰ章に入れられている。

また皇室関係でグルーピングされるものも10数点あり、これらは宮内庁所蔵である。図録ではⅠ章とⅡ章に入っている。(*1)

他に、所蔵先で目立つのは、東京藝大。先の日記にも書いたが、晩年困窮した義松が、黒田清輝に頼み、自身の所蔵品の1部を買い取ってもらった作品群である。約10点。(*2)

つまり、義松自身が晩年迄持っていた作品から、東京藝大への売却が発生し、更に死後、齋藤俊吉氏への譲渡があり、その残りが、Ⅳ章の作品群だという算数になる。
それらは、デッサン、下絵、習作の類が殆どで、紙の表にも裏にも描かれていたり、制作年不詳が多く、ハサミで切り取られたりしているものもある。(*3)
但し、ハサミで切ったのが誰かは判らない、いや、正確に言えば、展覧会場でも図録でも明記されていなかった、大事な事だろうが。

(*1)『御物孝明天皇御肖像』や『御物明治十一年北陸東海御巡幸図』等の作品がある。
前者、孝明天皇というのは明治天皇の父親。図録には「日本水彩画史上の傑作」と表現されている。義松23歳の作。
後者は、明治天皇の巡幸につき従い、各地の景物を描いたもの。油彩と水彩とがあり、合計41点残されているが、今展には内10点が来た。
皇室から若い画家が注文を貰うというのは、当時でなくとも驚くべき事である。

(*2)義松が滞仏中に描いた作品、2つの自画像『自画像(十三歳)』『自画像』その他が含まれる。何れも油彩で優れた作品ばかりだ。
掲げるのは、『西洋婦人像』(1881)。レオン･ボナの画塾で描いた初めての裸婦習作である。
人体の骨格や皮膚の質感他、進歩の跡が認められる。

2つの自画像については、共に先の日記でも書いた。内後者は第1回内国勧業博覧会で西洋絵画の最高賞を取ったもの。前者については、今回再考したい事柄があり、後で触れる事とする。

(*3)先の日記に写真を貼り付けた《六面相》もここに含まれる。(図録ではⅢ章)

図録には、図版以外に、今展の企画者で神奈川県立歴史博物館の学芸員角田拓朗の論文1つと、関連地図(横浜,東京,パリ他)、年譜、文献等が網羅されている。

(続く)
　

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