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2015年10月15日23:05

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文芸大聴講〈文化と芸術C〉第3回〜モダニズムとアヴァンギャルド

10/15(木)、静岡文化芸術大学の授業〈文化と芸術C〉の聴講第3回

テーマ;モダニズムとアヴァンギャルド
講師;上山典子

19世紀の芸術における「改革」の整理〜個人,個別作品から見て

・V・ユゴー戯曲『クロムウェル』の序文(1827)
伝統的アカデミズムの創作法「三単一の法則」(*1)を覆すマニフェスト提示。

(*1)時・所・筋の一致。ある1日の、ある1つの場所の、1つの物語。=フランス古典主義演劇論。

・第1回印象派展(1874)
モネ(*2),ドガ,ルノワール等が保守的なアカデミズムに対抗して自主開催。

(*2)『印象 日の出』(1872)については、従来1873年の制作ではないか、また、「夕日」ではないか、という説があった。これに対し、米テキサス州立大における天文学的証明=この景色(太陽の位置等)は1872年11/13 07:35分頃のそれに間違いない。

・バイロイト祝祭劇場(*3)完成(1876)
ワーグナーによる既存オペラの徹底的批判。歌劇→楽劇。

(*3)当時バイロイトは辺境の地だった。それが、世界のワーグネリアンを呼び寄せる場所となった。
従来、チケット購入に7年待ち等という状況があったが、近いうちにネットで買えるようにするとの事。

まとめると、

19世紀;産業や技術を信奉した楽観的進歩主義の時代。
進歩は「改革」と言うべき範疇であって、「反芸術」の動きではない。芸術の存在自体を否定する事はない。

20世紀初頭(第1次大戦前迄);従来の芸術の語法・美学・制度の根本を徹底的に、しかも性急に破壊しようとする動き、と言える。
そのラディカルさは「改革」と呼ぶより「革命」である。
  ↓
20世紀初頭の芸術動向〜流派に先立って

【モダニズム】Modernism

「近代」を意味する用語だが、芸術史用語としては、19世紀末〜20世紀初頭に興った新しい思潮、スタイルを指す。
特徴は、過去の作例の否定、同時代性の称揚、芸術の自律性の追求等。
音楽においては、20世紀初頭〜第1次大戦勃発前の時期に該当する。

【アヴァンギャルド】Avant-garde

語源;仏語の軍事用語。「Avant(前)- garde(衛る)」本体に先駆けて敵と対峙する部隊。攻撃の最先端に立つ。
転用;芸術領域では、大胆不敵に先駆者の役割を果たす(と自負する)運動や集団の意で広く用いられるようになった。
文学・美術・音楽・舞踊・演劇・映画等、あらゆるジャンルにおいて、時代の最先端で創作活動に携わる芸術家、前衛芸術を指す。
音楽においては、特に第2次大戦後の実験音楽に適用される事も多い。
それ以前のロマン主義や印象派等の芸術思潮とは異なり、特定の流派や様式を形成している訳ではない。共通点は、過去や伝統との「断絶」、歴史的循環の非連続性。

敢えてチャート化するなら、
・進歩主義→モダニズム→アヴァンギャルド
または、
・モダニズムにおける急進的な反モダンの考え→アヴァンギャルド

主流から隔絶される場に立とうとする点で、危険思想ともとられかねない傾向がある。社会の反応には興味ナシ。
アヴァンギャルドはエリートに対抗するエリート。

革命的創作、モダニズムの象徴的作品〜個別

・ピカソ《アヴィニョンの娘たち》1907
遠近法を否定するキュビスムの原点。

・シェーンベルク弦楽四重奏曲第2番 1908
調性否定。西洋音楽として初めて無調に到達。=不協和音の解放
表現主義的傾向も示す。

・マリネッティ「未来派宣言」1909
「ル・フィガロ」紙に掲載した意見広告。
これにより、未来主義の唱道者、未来派の代表となった。(*4)

(*4)但しグループに集まったのは5人のみ。しかしインパクトは大。
過去を捨てる主張。産業主義,工業主義の側面も。戦争による浄化を評価。
戦争の称揚は、後、ムッソリーニに受け継がれた。
第1次大戦に突入してしまった為、活動時期は極めて短い、。

・ルッソロ「騒音芸術」1913
未来派の1人。ノイズの解放。楽音だけでなく、騒音を音楽に取り入れた。騒音楽器の創作。

・カンディンスキーの「抽象主義」絵画 1910頃
シェーンベルクとの交流。歳は7歳上。(*5)
無調音楽に接してインスピレーションを得、抽象絵画へ進む。
《即興》《印象》《コンポジション》等のシリーズ。

(*5)シェーンベルクのコンサートの直後にカンディンスキーがシェーンベルクに送った書簡が残る。1911年1/18付け。
心に浮かぶ精神的なもの(目に見えないもの)を表現したい。
《コンポジション》は音楽から得たタイトル。
経歴;モスクワ大学法律学卒→ミュンヘンに移動、絵画を学ぶ→モスクワへ戻る=ロシアアヴァンギャルド全盛→レーニン、前衛を危険視→ドイツ国籍→ナチス台頭→フランス国籍

・ストラヴィンスキー『春の祭典』1913初演
多用なリズムと拍子で作曲。バレエ・ロシア団初演(ニジンスキー振付)は観客の暴動に発展。=リズムの解放、打楽器の解放
原始主義の傾向も示す。

20世紀初頭の芸術動向〜流派として

【表現主義】
ドイツを中心に、人間の内面のドロドロした表現(ex.不安,恐怖,罪,死,狂気といった生々しい情感、ネガティヴな情感)を強調し、美的な限界を越えようとした。
「ドイツ表現主義」と限定的な言い方をする場合もある。
ドイツにおける印象派絵画に対する反動という側面も。印象派の興味は現象(目に見えるもの)→感情重視。本来見えないものを外へ押し出そうとした。
ex.R・シュトラウス『エレクトラ』;殺人がテーマ。反モラル。旧時代にはテーマ,モチーフにならなかったもの。

【原始主義】
フランスにおける印象派絵画に対する反動。
ex.ゴーギャン;明確な輪郭線による形体回帰、鮮やかな濃い色彩。
ex.フォービスム

音楽では、異国趣味傾向と表現主義の欲求が結びついて、本来人間に内在する激しい力、原始的な強さを表現しようとした。
ex.ストラヴィンスキー『春の祭典』;太古のロシア
ex.バルトーク;民族への回帰

【未来主義】
イタリア・ミラノを中心に、文学,音楽,演劇,建築,映画,モード,料理等、あらゆる方面で19世紀の枠組を破壊しようとした、総合的な芸術傾向。その過激さは、後、政治運動に結び付く。


第1次大戦前に登場した新潮流を集約すると、
従来の芸術を成立させてきた語法,美学,制度の最も根本的な部分を、徹底的に、しかも性急に破壊しようとする動き。
過去を問答無用で葬り去ろうとするラディカリズム、とも。
 

〈試聴〉
シェーンベルク「5つのピアノ曲」より第5曲「ワルツ」

無調作品=調性の否定。
3分程の小曲だが、先が全く読めない事から、長く感じる。
「ワルツ」と行っても、従来のリズム舞曲ではない。踊れない!

調性の時代;バロックから300年間続く。

それ以前は、
教会旋法の時代=グレゴリアン・モード
 
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