10/7(水)〜8(木)、静岡文化芸術大学において毎年恒例の薪能公演があった。
第15回目である。派手さのない古典芸能を、15年間続けているという事は全くもって素晴らしい。
今回の企画は以下の通り。
10/7(水)第一夜 能講座
・第一部「頼政あらすじ」 薪能プロジェクトチーム
・第ニ部「能面を打つ」 能面師 北澤秀太
・第三部「能と茶の湯」 文芸大学長 熊倉功夫
10/8(木)第二夜 薪能
・創作狂言『無限魚箱』(作 左口歩)
・仕舞『高砂』,『芭蕉』,『野守』
・火入之儀
・能『頼政』
◆能面師 北澤秀太のプロフィールと話
1968年生まれ、今年47歳と若いが、人間国宝野村万蔵家の面制作に携わる。文芸大教授で、今回『頼政』のシテを務める観世流梅若猶彦の面も作った経緯から、今回の講演招聘となった。能面以外に、彼の家は元々神仏木彫の家系でもある。成田山新勝寺総門の獅子頭その他を制作してもいる。サンフランシスコで上演された、シェークスピア能『リア王』の面では、海外でも絶賛を浴びた。
能面は能の愉しむ事の1つでもある。
能面の注文には2つのパターンがある。1つは、古くから代々の面の写しとして。木材は消耗する為、写しを作って代々存続させていく必要がある。
もう1つは、創作能の能面制作。新しい能が作られ公演されるに当って、それに相応しい新たな面が作られる。前述の梅若からの制作依頼もこれ。
この後、制作の工程を、�．劵離�材選びから、写真と伴に紹介した。ケヤキはもっと固い。木は柾目を使う。乾燥が足りないと完成後に割れ目が入る。しかし、乾燥し過ぎでもダメ。
�∩督Α［愕圓鬚里海�りで切った後、叩きノミと金槌で粗彫。金槌は握り部分と鉄部分は直角でない。やや鋭角の方が叩き易い。握り部分はカシ材。自分の手に合うように作ってもらう。彫る部分により、鉄から遠い部分を握ったり、近い方を握ったり持ち替える。金槌は大中小3本用意している。カンナも削る部分と手に合わせ、大中小3本用意している。
�∋転紊押．離澆�300種類くらいある。能面だけではそんなに使わないが、北澤は神仏も彫る為、これくらいの数が必要になる。表の彫りを仕上げてから、裏を彫る。面は芸術的に優れていなければならないが、実用品でもあるから、裏は大事。演じにくいのではダメ。重いと疲れる。
��彩色 肌の色は胡粉とニカワと水の調合。これも微妙で、事後ヒビが入ったりする事がある。新作の面でも、注文主(踊り手)により、使い込んだ風合いを求める人もいるし、新しさを出したい人もいる。ここは話し合いを事前に充分しておく。
口紅；水銀系の顔料。その他顔料は日本画と同じ。
眉；1本1本書いては擦り、木になじませる。擦り過ぎると汚くなるなる、その直前で止める。
裏；汗等水分から守る為、漆を使う。
その他、面の種類毎の特徴についても語ってくれたが、その部分は略す。
◆熊倉功夫の話
中世は、伝統芸能が次々に生まれ花開き、現代も残っている。その理由は不明だが。
能は、世阿弥が興し、14〜15世紀に山(ピーク)が形成される。それを支える世界が中世にはあった。
いけ花もこの時代。野山にあるものを取って、部屋飾りとしたのが鎌倉時代。また、身を飾る(髪を結って刺す)事にも使用された。「かざる」と「かざす」の言語的類似性。
その後、室町時代に室内装飾として確立。また、建築や器との芸術的連携。神を招く神事としても。
香もこの時代の興り。
茶は栄西が中国から持ってきた。
中世は、日本人の生活に根差した楽しみが多々形成された。
中世という時代は、宗教を頼りにして、芸能が生まれた。芸能は神と身体のよりどころである。
禅宗がここで大きな役割を持ったが、特に一休の働きは特筆すべき。
一休は、寺に閉じ籠らず、街に出ていって、人々と交流した。とんちも、そうした庶民生活との馴染みの中から生まれた。結果、人々の人気を得た。こうした人物はそれ迄にいない。
芸能者も一休の許へ行った。
能 金春禅竹もその1人。禅を能の背景に結び付け、能の理論書を書いた。
茶人、連歌師も一休の許に出掛けた。
自分が行っている事(芸能や茶等)の意味,価値を問い、その会話の中で確立していく。
金春禅竹は、茶人 村田珠光の言葉を聞き書きしている。月は満月よりも雲間に欠けて見えるのがいい、という歌、その日本人的嗜好。(「満月」は藤原道長の隠喩である可能性も。)
村田珠光と一休の晩年は重なりが多い。
能と茶の世界の交流が濃厚にあった事が、判る。
他にも、千利休と観世宗拶との茶会のエピソード。
利休の子(養子)少庵は、能楽師(鼓の名人)宮王三郎三入の息子と言われる。(松永弾正説もあるが。)
(続く)
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