mixiユーザー(id:60260068)

2014年07月21日04:03

29 view

詩『魔術師とアホウドリ』


彼女は私にふれもせず
胸の奥にある芯に火を放った

瞬く間に燃えひろがる炎は
彼女の周りを焼きはらい
その炎の中心でひとり
彼女は涼しげに舞っている

次々に油がそそがれ
私の姿が燃えさかる
それでも彼女をほのかに照らし出す
数多の篝火の一つに過ぎない

火の粉はカケラさえ彼女に届かず
焼けこげた芯が胸の壁に刺さる

炎は肥大し続け
道は彼女へ向かう一本のみ
燃えれば燃えるほど
道は綱のように細くなり
私は両手を広げたアホウドリになる

魔術師との対峙に
私の翼は大きすぎた
よろよろと歩む脚が綱をはずし
私は炎のすきまからまっ逆さまに
深い灰へとしずんでいく

足場のない暗闇から
見上げれば遠く
彼女は明々と空に浮かぶ月になって
永劫の輝きをやめない






0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する