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2013年11月17日18:54

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『極小の極大』


目を奪われる一点を見つめると、テーブルに落ちた絵の具の小さな滴が干からびている。
近づいていくと、そこは顔料で塗りつぶされた広大な黒で、周りは見渡す限りの地平線に囲まれている。自分の目がこの辺一帯を見つめている筈なのだが、空は眩しくて白い。私は白と黒に挟まれてハレーションを起こしている。

地面に落ちている巨木を拾い上げようとするが、表面のキューティクルに吸い込まれ体が挟まってしまった。妻がテーブルを拭きあげるとまずいことになるので、抜け出そうとするが、静電気に捕まったようで身動きが出来ない。シャンプーの香りが激しくて気が遠くなりそうだ。

衝撃に叩かれた私は目が覚めると思いきや、しばらくすると水流に飲まれ泡の中に貼りついている。このまま下水道に直行かと思っていると、何故か光に包まれている。
流しの端のしぶきになっているようだ。
弾けた!そう感じた。どこに飛ばされているのか分からないが、飛んでいる。やはり白い光に囲まれている。

灰色の壁に衝突した。が、痛くない。私は物凄いダイエットに成功したようで、衝撃のエネルギーを持つほど体重は重くないようだ。沢山の灰色の洞穴の中にへばりついて時間が止まっている。いつ目が覚めるのかとへとへとになりながら奥の暗闇を見つめる。と、

青い点が見える、近づく、青い点。
球体、
地球。
ここは、宇宙に繋がっているのか。
目の前全てが地球になると、大気圏に突入したらしく、燃えている、体が燃えている。次第に濃くなる空気を激しく吸い込みながら落ちる、意識が遠退く、落ちる、全てを破壊するような衝撃に、はっと、目を覚ます。

目の前に絵の具の滴と長い髪の毛、
「どうしたの?凄い音がしたよ」
という妻の声に、
「隕石が衝突したみたい」
と答えた。



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