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2013年09月25日23:13

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『東京捕物帖』


(東京の宵、下町には明かりが灯り、サラリーマンを赤く誘ってやまない。)


お、寄ってくか、八田。
「え、マジっすか、おでんとかほっけとかいいっすね」
ばかやろっ、一杯ぇだけだって、
「うっそだぁ、先輩、一杯だけ?」
ガラガラ、
あったり前ぇよぅ、こちとら、宵の銭は持たねぇ、なんちって。ねぇちゃんいつもの。
「なるほどね、じゃあ割り勘っすね、お姉さんぼくも」
小遣ぇ少ねぇもんでな、すまねぇなぁ、さんぴん。
「いやいや、なんで、江戸の町人やってんすか」
まあ、いいじゃねぇか。何だか気分が出るってもんよ。
「そうっすか?じゃぁ、拙者は、奉行で」
ポクッ、
「痛てっ」
調子に乗るんじゃねぇよ、さんぴん。10年
早ええってんだよ、10年。おぉう、ねぇちゃんありがとよ。
「はい、はい、親分、おっしゃる通りですぜ」
何でぇ、丁稚(でっち)のくせに、はいはいたぁ何でぃ。へーぃって言ってみろい。
「なんだとぅ、もう一遍言ってみろい、っときたもんだいっと」
ああ、びっくりしたぜ、さんぴんごときに喧嘩売られちまったかと思ったぜ。
「おいらぁ、親分に楯突いたりしやせんやぁ」
おお、そうかいそうかい、しかし、お前ぇも江戸がいたについて来やがったなぁ。なかなかどうして、やるじゃあねぇか
「そうですかい?へへ蒲鉾ぐらいなら」
おぉ、上手ぇこと言うじゃあねぇか。そりゃぁそうと、表が騒がしぃじゃねぇか、おぅ、八、ちょいと見ておくれ。
「へ〜ぃ、親分」
っあぁ〜っ、旨いねぇ。ねぇちゃん、おいらにだけ良い酒注いでくれたなぁ?いやいや、色男はつらいねぇ。
「お、お、お、親分ぅん、て、大変だぁ」
なぁんだ、八、慌ててどうしてぃ。
「し、死んでる〜ぅ」バタッ、
手前ぇが死んでどうすんでぃ。あん?ひっ!し、死んでる!
ポクッ、痛てっ、何しやがんでぃ、八!
「おいら死んでねぇよ、親分、外、外」
なんだ、八の幽霊かと思ったぜ。ほう、どれどれ、こいつぁあ、女だな。
「そんなこと分かってやすよ」
つれない奴だなぁ、まあ、まあ、おいらに任しとくれ。えぇと、こいつぁあ、殺しだなぁ、八、ちょいと番屋ぁ行って旦那を呼んで来ておくれ。
「へ、へ〜ぃ」
しかし、妙だなぁ、何でおいらが十手持って捕り物やってんでぃ?まぁ、いいか。おぅ、ねぇちゃん、大将呼んどくれ。こいつぁ、酔いが醒めちまうぜ。おぅ、ついでにもう一杯酒持って来てくれぃ。うぅう、寒っ。こいつぁあ、家に帰れそうもないなぁ、あぁあ、かかぁがまたうるせぇぞぅ。


(江戸の夜は更け、草履の足がかじかんでいる。秋の夜は長い。)


八の野郎遅ぇなぁ、へ、へ、
へぇ〜っくしょい、っあぁ〜。



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