足元を震えながらまわる
沈む太陽は大きくて
土に倒れた独楽の色は失せ
ただ呆然と影がのびている
灯籠からもれるひかりが
座敷のふすまを切れ目なく走る
壁にかかる寄せ書きのまん中に
「和を以って尊しと為せ」
と、祖父の字でかかれてある
かれた声で独楽にひもを締め
私の目の前にもってくると
「よかか、よう見とかんばぞ」
と、祖父は私の目をのぞいた
右手が振りあがると
落とすと見せかけて
水平に切る
独楽はとおく右にとび胡桃の木の根本へ
目を見開く小さな私に
祖父は五分刈りにしたり顔
牛の糞をよけながら駆けよると
独楽はしっかりと立ちあがり
幾重もの和を描いてみせていた
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