大きな家の回廊を
小さないとこ達が走り回っている
あの子達はちょっと前の僕ら
ちょっと後の僕らは
二階で何をしているのか知らない
だいぶ後の僕らは居間で高校野球
毎年高校野球
夏はいつも同じリズムに蝉の声が被さる
慌ただしいおばちゃんの声が
「スイカば食べんねえ、ほらあ、
早よ来んばなくなるよお」
せかす
ひとつ
僕はいかにも美味しいふりをする
「たくさん食べんばぞお」
おいちゃんもせかす
いとこが二階から降りて来て
大皿を出して人数分持って上がった
おばあちゃんが僕をしっかり見て
「美味しかでしょ」
端っこまで笑顔
おじいちゃんのあぐらにおさまると
オモチャのお札をくれた
「今度来た時に本物と替えるけん」
もっともっと後の僕らの写真が
天井近くでこっちを見ている
蝉がジッ、と飛んで、
また、次の蝉がなきだした
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