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2013年06月11日01:27

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『シャコンヌ2』

風は遮られ、張りつめた静寂の中で
私は巨大な穴の底にただひとり立ち
無数の眼差しと眩い光の焦点になっている



始まりは、雨上がりの緑濃い午後
葉漏れ日にかざすあなたの右手の白さ
私の胸は一瞬にしてはり裂け
体は沿道の木々に変異する
口をこぼれ落ちる生まれたての儚い震えが
湿った風に散々に吹き飛ばされる寸前、
あなたからシルクの風がそよぎ
青空からこまどりが舞い降りてくる



幾重もの季節の陽射しを受けて
ピアノとヴァイオリンの調べは
互いに離れては寄り添い
茂る芝生の上を舞い
林の木陰でたわむれ
小川の畔にたたずむ

澄みきった夜空に星々はまたたきだし
いつかのこまどりは
月のゆりかごに揺られ
穏やかな静けさの中で眠りにつく



赤く染まった雲間から
西陽が並木通りを抜けてとどいている
落ちる葉がまばたきをして
部屋のかべは静かにまぶたを閉じる

かろやかなピアノの調べはとぎれた
ヴァイオリンのかすれた声が吹き荒れ
降りやまない雪に陽はかげり
大地が凍る



春が再び訪れることはない
私はヴァイオリンを肩にのせて目を閉じる
弦に向けたこの弓を
強く深くひきおろす
遠ざかる草原


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