12/21(水)、年内最後の授業は学外講師の講演、予告した通り、講師は府中市美術館館長 井出洋一郎、タイトルは「美術館の収集と企画〜府中美術館の場合」。
・府中市美術館の概要
敷地面積約7,500�屬蓮�県立美術館クラス。
府中市人口約25万人、多摩地区の中核都市、平均年齢は高い。大学は2校のみ(八王子等は11校もある)。
1986 設立決定。10億円の準備金。バブル期。
1998 牛島憲之作品111点の寄贈を受けて、着工。
2000 6月竣工,10月開館。
・美術館建設基本計画(1996)
基本テーマ；生活と美術＝美と結び付いた暮らしを見直す美術館であるべし。
基本的性格；
1.地域社会に根差す。
2.質の高い美を身近に。
3.市民や子供の才能と美意識を育む。
4.新しい美術情報を吸収できる。
設立決定から時間がかかったのは、当初、市民から反対の声があった為。即ち、府中に美術館が必要なのか？上野に出れば充分ではないのか？
・収集計画
1.収集方針
ア.府中,多摩にゆかりのある芸術作品。
イ.国内外の近代以降に焦点。
ウ.将来性のある若手の作品。
エ.その他、相応しい作品と関連資料。
2.収集方法
ア.購入と寄贈。
イ.学芸員の調査研究を踏まえ、計画的且つ系統的に。(*)
ウ.収集選定委員会による決定。
(*)こう明文化した事は大事。つまり、市長等のトップダウンでは購入しないという意思表明である。
3.収集の特色
親しみやすい近代以降の日本の美術に焦点を当てる。西洋美術と伝統を視野に、日本近代美術の流れや特質を展望できるコレクションを形成する。(*)
(*)高額な西洋美術は基本的には購入しないという意思。
井出は3代目館長。
彼の府中美術館に対して持っていた印象
1.庶民的でない。
2.現代美術と地元系近代及び江戸美術に特色。
府中ビエンナーレに注力し、公立美術館をリードしている。
3.藝大美術館の地方版。日本近代洋画史の教科書的。
「日経五つ星の美術館」(公立134館の格付け)で、2位を獲得。
特にプロ(美術評論家筋)の評価が高かった。学芸員7名の質が高い！と。
それは、逆に言うと、庶民的でないという事でもある。
・10年間の企画展の歩み〜主な展覧会
2000 「ウィーン、生活と美術」展(府中とウィーンは提携都市)他…1日当りの入場者数年間平均@308人。
2001 「マネ〜近代絵画の起源」他…@255 年間6本の企画展を実施するのが定常化。6本は相当大変。
2002 第1回府中ビエンナーレ展,ドイツ表現主義展他…@149 ビエンナーレの入場者数は@86と極端に低かった。
2003 モーリス・ドニ展他…@181
2004 現代もの3本…@124
2005 「ベルギー近代の美〜マグリット,デルヴォー」他…@155
2006 寺田小太郎コレクション(東京オペラシティギャラリーより分与),カミーユ・クローデル展他…@168
2007 キスリング展他…@174
2008 4本現代美術…@145
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2009 「ターナーから印象派へ〜光の中の自然」展,「歌川國芳〜奇と光の木版画」展他…@237 井出が館長就任。企画展は年間5本に1本減じ、内容充実を目指す。
平成22年度予算作成時の計画または方針
・指定管理者制度導入の可能性。
・市から節約の要請。
・同じく市から、学芸員の労働過重の指摘、組織改編の要求。
・市民の声「判りにくい」との批判…入場者数に反映されている。
・企画展は更に1本減らして4本ペースに。
・府中ビエンナーレ中止→「アートサイト府中」…現代美術関連企画の性格を変える。
その結果、現状
・平均入場者数@314とアップ…ノーマン・ロックウェル展,「バルビゾンからの贈りもの」展,木下晋展 他
・美術館から外へ出る企画
今後
・よその”大”美術館から真似される府中でありたい。
江戸,近代美術の充実へ。
今回は、芸術でなく、美術館の運営,経営に軸足を置いた講演だった。
美術館というものの構造を多面的に理解するにはいい機会だった。
以下、府中市美術館のホームページ参照
・トップ
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/index.html
・企画展
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakutenkaisai/index.html
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