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2011年11月08日00:20

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草間彌生展/ワタリウム美術館

地下鉄銀座線外苑前駅を出ると、この時期、さすがにもう暗い。
ワタリウム美術館は初めてである。
建物のガラス窓には、赤い水玉模様が描かれ、「Kusama's Body Festival in 60's 展」の大きな看板が掛っている。
看板の写真はモノクロで、たくさんの突起物の中、裸でニッと微笑む草間彌生が横たわっている。草間の体にもいっぱいの水玉模様。

勘違いしていたのだが、ここで観る事ができるのは、主にビデオであって、彼女の絵画や彫刻作品は殆どない。
絵画は、『インフィニティ・ネッツ(無限の網)』というタイトルが付いているもの2枚。
同題の作品はたくさん制作されていて、私も何処かで観ている。豊田市美術館にもあったと思う。
ここにあるのは、グレーの地の上にコンクリートのざらざらの凸凹の表面を永遠に描いたような油彩の厚塗り。

立体作品では、『終わりなき愛』というもの。
箱の表面に、草間作品によく現れる突起物がみっしりと付いており、眼の高さには長方形の小さな窓。そこから覗くと、中にも突起物、こちらは真っ赤で、合わせ鏡により、無限にその光景が何処迄も続いて見える仕掛けになっている。

一般的な意味で言う作品は多分これだけで、後はビデオ。
ビデオも、インスタレーション作品と呼べるのは1つ。他は、各国の放送局が制作した記録映像を繋いだもの、及び、アングラ映像とでも呼べばいいのだろうか、彼女が1960年代に行ったハプニング(その頃はパフォーマンスとは言わなかった?)をゲージツ的映像処理したもの。

インスタレーション映像は、赤地に白黒の水玉模様の服を着た草間(固定カメラによる上半身の大写し)が即興的な歌を唄う。ぼそぼそした声で、何を言っているかよく判らない。最初外国語かとも思ったが、よく聴くとやはり日本語ではある。
続きは、自分の衣服に派手な色のガーベラを活けていくパフォーマンス。
これらは、60年代ではなく、最近のものだろう。草間の顔にも年齢を感じる。明確なデータは判らない。

ビデオのハプニング映像は3ヶ所、大小のスクリーンやテレビに映し出されていて、これがこの展覧会のタイトルの由来だろう、1960年代に行われた欧米でのビエンナーレ展や、銀座を含む大都市路上でのもの。
ギラギラの大音量のロック音楽を背景に、また、静かな展覧会のレセプション場で、裸の男女へのボディペインティング等が繰り広げられる。
1960年代の匂いがプンプンする。
その時代は、政治と性と芸術とが、専門化されず細分化されず、同じ声の中で叫ばれコンフューズされた。それだけに活力もあった。
フェミニズムの活動も、この時代にウーマン・リブ運動と呼ばれるようになった。

面白いと思えたのは、観客に若い女性が多い事。数人、またはもう少し多い人数で連れ立って来ている。
現代都市の、特に若い女性の閉塞性や鬱状況,無目的感が、草間のようなラディカルなもの、原初的なもの、肉体の匂いが前に出たものを求めるのだろうか。
これらの映像を観て、彼女達はどう感じて帰るのだろう。
1階地階のショップでは、草間彌生の、と言うより、Kusama goods と呼ぶべきカラフルな小物類がたくさん並べられ、彼女達はクリスマスカードと一緒に買っていく。
草間のファルス恐怖も水玉も、既に1つのファッションに過ぎないのか?


19:00近い時間になったろうか、ワタリウム美術館を後にし、銀座線,山手線,総武線を乗り継ぎ、今日の宿泊地両国へ。
明日の朝まず行く江戸東京博物館は、JR両国駅のすぐ北側にある。泊まるホテルは、博物館の更に北に隣接する。
朝ゆっくり寝る事ができるようにと、ここのホテルを選んだのだ。
部屋に入ってカーテンを開けると、目の前にスカイツリー。電飾はまだだから、ぼんやりとしてちょっと距離感は掴みにくい。
ともかく、まずは腹拵えしなければ、と、また駅前の繁華街に戻る。

祝日の宵だからか、通りには人が溢れている。これから食事しようとする家族、飲み屋を捜す男女、もう既に酔って赤ら顔の酔漢、様々である。
学生らしきグループも多い。この近くに大学があったかしら。
細い路地が好きな私は、つい横道に足を踏み入れる。何軒か暖簾を潜った店には、悉く満席だと断られてしまった。
やっと入れたのは焼き鳥屋の狭い2階。そこにもぎっしりの人達。既に相当できあがった連中の喚声とタバコの煙に圧倒されつつも、私も負けじとビールと日本酒。
魚類はもう売り切れとの事で、定番の焼き鳥盛り合わせ他。しかし、混んでいるからか、店員がそれに比して少ないからか、頼んだ食べ物はなかなか出てこない。空きっ腹に流し込んだアルコールは、疲れた身体の隅々迄よく回った。

今日は随分いろんなものに触れた。あちこちで観たあれこれが、酔った頭に浮かんでは消える。
長く愉しい1日だった。
 
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