mixiユーザー(id:3341406)

2011年11月05日23:50

184 view

モーリス・ドニ展/損保ジャパン東郷青児美術館

11/3〜4(木〜金)と上京。今回は美術展に目的を絞って行ってきた。
数を問題にするのではないが、今回はたまたま観たいものが重なったので、相当に歩く決心をし、朝8:20のこだまで出掛けた。現地で午前中から見始めたいとの思いからだった。
2日間の結果は急がず、順に書いていきたい。

新宿西口の損保ジャパン東郷青児美術館に入ったのは、11/3、11:00頃だったか。
正確な名は、「モーリス・ドニ〜いのちの輝き、子どものいる風景」展である。

ドニ展としては、一風変わった展覧会だと言っていいだろう。
ドニと言えば、まずナビ派の画家としてのイメージが強い。しかし、この展覧会のドニからは、近代芸術の1グループとしてナビ派の印象は鮮明ではない。
それは副題に現れているが、ここでのドニは、夫として、親として、妻を、子供達を愛情深く見つめる家庭人の姿をしていて、ゴーギャンの後を継ぐ象徴派画家の側面はあまりない。ここには、愛する妻と恵まれた子供等に囲まれ、幸せいっぱいで、明るい明るいドニがいる。

チャプター構成は以下の通り。

序章 ;若き日のモーリス・ドニ 油彩全10点
第1部;くつろぎのなかで 油彩26点他全27点
第2部;子どもの生活 油彩全35点
第3部;家族の肖像 油彩15点他全18点(我が子出生の絵入り通知状は14枚あるが、暫時1点とカウントした)
第4部;象徴としてのこども 油彩12点他全13点

第4部には、深いカトリックの信者だったドニの宗教画が収められている。この章の「子ども」とは、モーセであり、イエスである。ここに、ナビ派としての宗教性、神秘性、また特有の綜合性を観る事ができるが、他章は全て個人名としての夫、父、家庭人のドニが微笑んでいる。
そのトーンがあまりに強く、一様で、そういう意味では、このドニ展はかなり偏りがある。このドニ展からは、作品の点数が多いにも関わらず、彼の全貌は見えてこない。でも、まあ、それは善し悪しではない、主宰者がそれを企図したのだから。

モーリス・ドニ(1870-1943)は、1歳年下のマルトと、23歳の時結婚した。7人の子宝に恵まれた。とは言っても1番先に生まれた男の子は1年足らずで死んでしまった。
その後、4人女の子が続き、そしてやっと男の子、そしてもう1人女の子ができた。
最後の子が生まれて4年後に、妻マルトは病で他界している。48歳だった。26年間の結婚生活で、7人の子供を設けた事になる。
当時は幼時の死亡率が高かったから、子供をたくさんもうけるのは普通だった。

マルトが亡くなって3年後、52歳になったドニは、42歳のエリザベツと再婚した。
エリザベツは男と女2人の子供を授かった。初婚(確認の要アリ)のエリザベツとしては、遅い初産でさぞ危険だったろうけれども、乗り越えた。

エリザベツはマルトに面影が似ている。
ドニが2人の妻をこの上なく愛した事は、今回の展覧会を観れば、理屈抜きで誰にでも判る。
彼の作品の中に、マルトとエリザベツは繰り返し繰り返し出てくる。その表情は、明るく、豊かで、暗さは微塵もない。
ある場合等、1枚の絵の中に、3態の妻が描かれる。
官能的な女としての、そして、赤ん坊に授乳する母親としての、刺繍ををする家庭人としての妻である。その何れのマルトもしくはエリザベツにも、ドニの深い愛情が投影されている。
また、別の絵では、聖母マリアの姿も、マルトでありエリザベツである。
ドニは、全ての女性性をマルトとエリザベツに求め、それを得たのだろう。
こうした幸福は、全く稀有な事だ。彼が、世紀末と2つの大戦を経験した画家とは到底思えない。
今回の展覧会には来ていないが『プリウレの自画像』(1927)の背景では、テラスで抱擁するマルトとエリザベツ2人の姿が描かれている。
これは、ドニの心理を見事に表出している。死んだマルトが新しくドニの許にきたエリザベツを許しているのである。勿論現実の描写ではない。ドニの心に現れた2人、つまり、ドニはマルトに全てを許す聖母を期待したのである。
都合がいいといえばそれ迄だが、こう信じられるところにドニの屈託のない幸せがある。

絵には、子供達の姿も度々現れる。
マルトの長女(ノエル)と、エリザベツの下の子(ポーリーヌ)とは、29歳の開きがある。
絵の中で、小さかったノエルは、両親の愛情に育まれ、すくすくと成長していくその都度の姿を見せている。
後には、ポーリーヌを自分の子のようにあやすノエルの様子も描かれている。

写真は、ポスターにもなった、『家族の肖像』(1902)。
中央で輝くような笑顔を見せるのは、マルトである。そして、子供達は、左から、次女ベルナディット、マルトに抱かれる三女アンヌ=マリー、そして長女ノエル。


次は、初台、東京オペラシティ・アート・ギャラリーに行く。
 
3 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2011年11月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930