このオペラは、以前CDで、サイモン･ラトル指揮のものを聴いています。
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今日のは、macchaさんにお借りしたDVDです。
総合芸術としてのオペラの、視覚的な側面の鑑賞を伴う事ができ、前回の欲求不満は飛びました。
原作,台本その他の歴史的事実は、前回の文章で確認頂くとして、まずは、それ以降のデータ部分を掲げておきます。
演出 オットー･シェンク
指揮 レナード･バーンスタイン
演奏 ウィーン国立歌劇場管弦楽団
出演
レオノーレ＝フィデリオ グンドゥラ･ヤノヴィッツ(s)
フロレスタン ルネ･コロ(t)
ドン･ピツァロ ハンス･ゾーティン(br)
ロッコ マンフレート･ユングヴィルト (b)
マルツェリーネ ルチア･ポップ (s)
ヤキーノ アドルフ･ダラポッツァ (t)
ドン･フェルナンド ハンス･ヘルム (br)
1978年1月ウィーン国立歌劇場ライブ収録
歌手の取り揃えは、ラトル盤より数枚上だと言えるでしょう。
レオノーレ(男装し、フィデリオでこのオペラの殆どを通す)役のソプラノはアンゲラ･デノケからヤノヴィッツに替わっています。(他、フローレスタンが、ジョン･ヴィラーズから･コロ、マルツェリーネがユリアーネ･バンゼからポップ。知名度では相当な開きがあります。)
前回の鑑賞日記では、デノケの声を、「フォルテになると何処かから空気が漏れているような感じがする。ヒーヒーしてゆとりがないし、音程に微妙な影響を及ぼす。ちょっと気持ち悪く」感じる、と(意図はなくとも結果的に)悪口を書きましたが、しかし、この音程の落ち着かない様は、ヤノヴィッツも同じでした。
これはひょっとしたらベートーヴェンの音楽作法に由来するのかな、と思い始めています。ベートーヴェンの難しさなのかもしれない、と。
この問題は、時間をかけてもう少し掘り下げてみたいと思います。
これもその問題に関わりがあるかもしれませんが、ベートーヴェンは何とも重いコロラトゥーラを要求しています。コロラトゥーラは元来声質の軽い人が歌い易いものなのですが。
しかし、フィデリオの声は軽くてはその性格がでません。
地下牢に閉じ込められているらしき夫フローレスタンを、誰にも相談せず男装して迄捜しに行き、刑務所長のピツァロと対峙、終には救出するという、一生結婚しなかったベートーヴェンが理想をそこに見た強い女性像なのですから、軽くて済む役所である訳がありません。
でも、コロラトゥーラ唱法は随所にあるのです。
強くて重いコロラトゥーラ、それは難しいでしょう。モーツァルトやロッシーニのような訳にはいきません。
ヤノヴィッツは、リヒャルト･ストラウスの『アラベラ』と比べると随分お歳を召したように見えたので、声の力が衰えたのかとも思ったのですが、調べましたら、『アラベラ』は1977年、この『フィデリオ』1978年です。40歳と41歳、歳の所為ではありません。
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ヤノヴィッツの引退は1990年、53歳になってからです。
『アラベラ』は映画用に作ったオペラで、こちらはライブですから、その所為で、見ため歳の開きが感じられたのでしょう。映画は女性を美しく撮る事、御手の物ですが、舞台のライブは、その点、厳しくリアルですね。
ちなみに、両方共、監督/演出は、オットー･シェンクです。偶然です。
さて、バーンスタインの音楽作りの方は、出だしの1音から、随分ゴツゴツしているなあ、と感じました。何故か潤いのある響きがない、あのウィーンフィルのメンバーが殆ど入っているウィーン国立歌劇場のオーケストラなのに、あのウィーン国立歌劇場というホールなのに。まろやかな味わいがなく、音の輪郭やフレーズの繋がりがぎすぎすした感じに聴こえます。
バーンスタインの音楽作りの意図とウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーの間に少々擦れ違いがあるのか、とも思った次第です。
写真はヤノヴィッツとコロ。
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