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2025年06月11日19:50

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417冊目『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』

白石 一文 (著)

主人公である週刊誌の敏腕編集長「カワバタ・タケヒコ」が、業界のコネを使ってグラビアアイドルの「フジサキ・リコ」と一夜を共にするところから物語が始まります。

ハイハイ白石先生お得意の、仕事ができるモテ男のトラブルシュートものでしょ。今回は下衆要素と業界裏話がスパイスって感じかな?と。

大好物ですッ♪

ほうほう、章分けがエグイですねと、、、

んッ!?まさかの短編連作、、、じゃないよね

、、、っつーか、小説じゃなくね?

、、、っつーか、エッセイ集じゃね?

、、、、、、。

いやぁ〜〜参った、感想書くのが滅茶苦茶難しいんですけど、、、
俺の拙い語彙力じゃ、この気持ちを正確に伝えるのはほぼ不可能。
相当フワフワした感想になると思われますが、頑張って付いてきて下さい。

えぇーーと、、、そうね、、、落差が凄いです。
高尚と低俗のハイブリッドっつーか、、、
深く考えさせられる重厚さと、サクサク読める軽薄さの波状攻撃っつーか、、、
気高き精神と底知れぬ欲望の化学反応っつーか、、、
面白かったかと問われれば、、、面白かったと答えるけれど、、、
好きかと問われれば、、、好きでもあり嫌いでもあり、そのどちらでもないような、、、
おススメするかと問われれば、、、う〜〜ん、合う合わないは分れるとしか、、、

いいですか皆さん、終始こんな感じですが頑張って付いてきて下さい。

正直、結末には全然納得いってないんですよ、「でもアレしかないよなぁ〜」という妙に爽やかな諦観みたいなもんが漂ってるのも事実。
何っつーか不思議な読後感。快も不快もなく、納得も不服もなく、あらゆる気持ちが雲散霧消して、穏やかに流れていく感じ。
作中あれ程擦り倒された「格差問題」にしても、何一つ有効な解決策を提示できぬままブン投げて終わり。

そう「格差問題」
行き過ぎた資本主義の暴走によって日々拡大する格差、巨万の富を得る富裕層と貧困に喘ぐ人々。彼らの間に横たわる断絶を如何にして埋めていくのか?
実は、こっちがメインテーマ。
この一小説家にも、娯楽を求めて“小説”を手に取った読者にも、余りに重過ぎる題材。
この問題の深刻さを白石先生は、経済学者の著書を数ページに亘って引用するという荒業を以って読者に切々と訴えかけてきます。

数ページに亘っての引用ッ!!

他にも宇宙飛行士や政治家の著作を引用に次ぐ引用。
今作の十分の一くらいは、白石先生ではなく他者の言葉によって構成されているのでは?
果たしてこれが“小説”と呼べるのか?
勿論、内容が内容だけに非常に政治的な表現も目立ちます。
格差解消という観点からリベラル的な言動が優勢ながらも、保守的な観点からも切り込んだりと、一見左右の均衡は保たれてるかに思われますが、、、

作中、カワバタの雑誌に収賄疑惑を追及されている与党の大物議員「N」が、これからの日本の在り方にについて熱弁を揮う場面があります。
私、恥ずかしながら感動致しまして。
「その通りッ!!白石先生よくぞ書いてくれました」と大いに溜飲が下がった次第。
しかしッ後程この昂りには、キンキンに冷えた氷水をブッカケられることになります(哀)

大量の引用と思想信条の捩じ込み、本来ならば俺が蛇蝎の如く毛嫌いする手法。
にもかかわらず。
、、、あれ?、、、そんなに嫌じゃないぞと。何で?左右のバランス?価値観を押し付けてこないから?
これは白石先生なればこそ、恐らく他の作家さんだったら途中で読むのをやめていたことでしょう。

そうなんです、「格差問題」なんです。
これだけ俺の気持ちを揺さぶっておきながら、何一つ解決しないっつーね。
どうしてくれるんですか?白石先生???
一小説家一読者一個人、一人の力では弱過ぎる。
でもその一人がイーロン・マスクやジェフ・ベゾスだったら。
現状を変えていく力として政治を選ばないならば、我等庶民はどうすればいいのでしょうか。
今作はどこにも導いてはくれません。
只、どの方向にも歩き出せる、好きな道を選べばいいと置き去りにされるだけ。
いやホントマジで。どーすりゃいいの???
皆さんどう思います?
格差がヤバい、けれども既存の政治システムでは対応しきれないとなれば、じゃあどうする?
金持ちから問答無用で毟り取るのか?
貧乏人に更なる辛抱を強いるのか?
はたまた、世の億万長者たちが慈悲の心に目覚めるのをひたすら待ち続けるのか???
お客様である読者の胸に深々と矢を突き刺しておいて、放置プレイとは、、、やってくれますね白石先生。

でも結局は先述の通り読了後、あらゆる気持ちが雲散霧消して、穏やかに流れていってしまうのですよ。
あんなにNの国家感に感動して、格差の理不尽さに憤ったにも関わらず。

「この胸に深々と突き刺さった矢は抜けていないのに、痛みを全く感じない」

これこそが、この言い表せない読後感の正体でしょうか。

、、、、、、。

じゃあ高尚な方はこれくらいにして、低俗な話イキましょうかw
だって仕事をエサにアイドルを抱く輩が主人公の話だぜ、軽薄軽薄。
この振り幅こそ、まさに白石先生の真骨頂。
先の格差を軸に、出版・芸能界の裏話、恋愛、夫婦関係、組織内の権力闘争、闘病ものと
あらゆるジャンルから具材を引っ張って来ての、ごった煮闇鍋状態。
さらにカワバタは、死んだ息子の声を聴くことが出来る能力者ときたもんだ。
流石にこんだけ詰め込んだら、どれかには引っ掛かるっしょという布陣。
マジで、多ジャンルの組み合わせが一番得意な作家さんではないでしょうか。
それぞれが他のジャンルを侵食せず、独自の味を滲ませながら作品内で絶妙に調和してます。
まさに奇跡の闇鍋状態。

兎に角、一つ一つの要素が丁寧に作り込まれていて飽きさせません。
恋愛パートは、淡い恋の駆け引きから官能小説さながらの絡みまで濃淡揃い踏み。
闘病パートは、主人公の内面を深く掘り下げてくれますし、尚且つ抗癌治療の蘊蓄まで。
権力闘争パートは、歴史小説顔負けの権謀術数が繰り広げられ読み応え充分。
出版や芸能の業界裏話もリアリティ満載ですし、バランスブレイカーであるはずの特殊能力も、世界観を壊さないギリギリのラインでストーリーを刺激してきます。
これにッ、さっきの格差問題を切々と訴えかけてくると。

ってッ、どんだけ盛り沢山なんだよッ!!

闘病と息子の死によって倦怠と無気力に沈み込んだ主人公が、無理矢理東奔西走させられる悲劇、、、否、喜劇?をお楽しみください。

では最後に気になったところを少々。
「カワバタ・タケヒコ」や「フジサキ・リコ」など、登場人物全てが謎のカタカナ表記で戸惑います。
もしかして未来の話?って、SFじゃないんだから勿論理由は他に。
ミステリ風の叙述トリックっぽい仕掛けが、、、っつーか、普通に読み辛ぇえ。
あの程度の謎ならば、真相が明らかになるインパクトより遥かに弊害の方が大きいです。白石先生リスク背負い過ぎ。

それと表紙のコレジャナイ感について。
装幀/川上茂夫 装画/西村裕之 
両氏には申し訳ありませんが、でもやっぱコレジャナイ感が尋常じゃない。まんまチコちゃんだし。
もし表紙がチコちゃんじゃなかったら、白石ブランドとあらすじの引きでもっと早く手に取ってたはず。
おッ!?文庫版はいい感じじゃないですか、コレコレこーゆーのですよ。
年末には多分、俺のコレクションに並ぶことになるでしょう。
っつーわけで、表紙のデザインは超重要なんです。


再読の義務感
★★★☆☆
1 1

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