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2022年06月18日19:58

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348冊目『信長の棺』

加藤廣著

信長出てこねぇじゃんッ!!
イヤイヤイヤ、「本能寺三部作」ですよね??
本能寺モノで信長がモブって、、、そう来ましたか加藤先生、いやぁ〜〜勉強になります。
『信長公記』の太田牛一が主人公ってのは知ってましたが、てっきり信長とガッツリ絡むものとばっかり。

「本能寺の変」の急報が安土城に飛び込んでくるところから。
っつーか、信長もう死んでんじゃんッ!!
本能寺モノの地理的描写って、勿論殆どが京の都、さらには備中高松城攻めの羽柴陣、多くて細川の丹後、筒井の大和辺りが定番。
そういえば変当日の安土城って、意外と盲点だったなと改めて再認識させられました。
全員逃げ去った後、無人の安土城に入城する光秀しか読んだことなかったもんね。
異変を知って大パニックに陥る安土城内の描写が新鮮。

我等が牛一も明智軍に捕まるわけにはいきませんから、こっから必死の逃避行が始まるわけです。
さらに、信長から秘密の箱を預かってるという設定。
一人では持ち運び出来ないほどの重量なので、これを隠しながら逃げるという展開。
果たして箱の中身は何なのか?牛一は逃げおおせるのか?

この慌ただしい序盤から一転、次章から一気に時が飛び、豊臣政権内で鬱屈する牛一がマッタリ描かれます。
「本能寺の変」の真相と、信長の死体はいったい何処に消えたのか?という謎。
この今作のテーマに、主人公である牛一が真っ向から挑むまでがやや冗長といいますか、、、
とはいいつつ、前回も書きましたが、この主要テーマである本能寺以外のオマケが面白いんですけどね。

公に歴史を書き残すということは、取りも直さず、時の権力者に阿ることになってしまうという現実。
稀代の英傑信長の生涯を、丹念に資料を漁りながら、自らが思うままに書き記したいという宿願を全うしようにも、当然のことながら秀吉の検閲が入ってしまう。
筆を曲げざるを得ない悔しさと屈辱。
何とか検閲を潜り抜け、正当なオリジナルを後世に残そうと策を練る牛一だったが、、、

この攻防の終盤も終盤に、死体の謎と箱の中身がいささか取ってつけたように種明かしされる辺り、ミステリーとしては何とも弱い。
つっても、俺逆読みしてるんで。そうなんです、「明智」と「秀吉」先に読んでますから。
既に犯人もトリックも知ってる状態で読んどいて、ミステリーとして弱いもくそもない甚だ見当違いの批評ですよね、スイマセン。
それでもやっぱりこれだけは言わせていただきます、ミステリーの謎解きで超能力使っちゃうのは如何なものかと。
いきなり牛一が「ムーディー・ブルース」発動したときは度肝抜かされましたわ、おいおいスタンド使いかよッ!ってねw
そんなこんなで、たとえミステリーとしては弱いとしても(←しつこい!) 歴史小説としては十分面白いんで無問題。

そうそう!逆に三作目から読んだことによって、劇的に効果を上げた箇所もあるんですよ。
この三部作における信長の存在感、、、そりゃもう酷い扱いです。
基本的に出番僅かのモブ。出てくるキャラ出てくるキャラ、皆して信長のことディスりまくり。
織田軍団という史上最悪のブラック企業の超冷酷社長役ですから、まあ、むべなるかなというところ。
そんな足利義昭も真っ青の信長包囲網の中で、唯一の擁護者が牛一なわけです。

「たしかにその罪は谷より深いが、その功も山より高い」

と、アンチに対して、堂々の信長英雄論を披瀝する様は大いに溜飲が下がった次第。
正直俺、あんま信長好きじゃないんですけど、今回三部作で続いた信長下げにはいささか反発を覚えてましたので。
「明智」から「秀吉」、そして今作「信長」と三作目から逆に読んできて、流石にちょっと一方的過ぎないか?と加藤先生の歴史認識バランス感覚に懐疑心が芽生えたところに、ズコーン!と嵌りましたから。
信長が天下統一を果たした後、この日本を如何に導こうとしていたのか、、、
その稀有壮大なビジョンに心打たれました。

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三百冊超小説を読んできて、俺なりに辿り着いた真理が二つ。

【意思伝達は言語で明確に】
態度や仕草、雰囲気から察してくれはコミュニケーションの怠慢である。

【他人に自分の価値観を押し付けない】
どんなに素晴らしい意見でも強要した時点から諍いが始まってしまう。

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今回もまさにコレに尽きます。
話しゃいいんですよ。言葉でしっかりコミュニケーションをとればよかったんです。
光秀や秀吉にきちんと自分の考えを説明すりゃいいだけの話。
そもそも全員守りたいものは一緒なんだから(←今作内の話ね、史実はまた別)
「いろいろ苦労をかけるが、大願成就のため協力してくれ、頼む」つってね。
そうすりゃ皆、感涙に噎んで馬車馬の如く働いたでしょうに、、、
恐怖で縛り付けるのではなく、高潔な理想で導く方がリーダーとして遥かに合理的なのでは。

、、、、、、。

哀しいかな、正論が通じないところがこの世の最も理不尽なところ。
家臣とじっくり話し合ってる時点で、それはもう「織田信長」という個性を失ってるッ!?!?
、、、そりゃそーだ。


加藤先生御存命ならば、「家康」で四作目をリクエストしたいところ
★★★☆☆
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