mixiユーザー(id:5348548)

2021年06月15日09:50

317 view

講座「120分でわかる西洋絵画入門」(講師・山田五郎さん)その2

<承前>
19世紀になってからの西洋美術ですが、「古典主義」VS「ロマン主義」の構図です。
それぞれのキーワードは、

古典主義(欧州の保守本流)・・・文語、ラテン語、歴史性、普遍性、没個性、アカデミズム、メインカルチャー そして代表作家はアングル。

ロマン主義(19世紀の全共闘)・・・口語、ジャーナリズム、エキゾティズム、感性、現代性、市民性、サブカルチャー そして代表作家はドラクロワ。

ロマン主義は「反古典主義」。同時代の現実を客観的に反映。
これが写実主義→印象派→キュビズム→ダダイズム→ポップアート と時代の変遷とともに登場することになる。

アングルはラファエロにインスパイアされたんですが、結果、400年間変わっていない、ということに。
ドラクロワの有名な「民衆を導く自由の女神」は、1830年の7月革命がテーマです。今、起きていることを描いている。でもドラクロワ自身を登場させたり、胸をはだけた女性が中央にいたり、「盛ってる」感じがありますね(笑)。

西洋絵画の裸体画って、ヴィーナスや妖精、アダムとイヴといった、「実在しないもの」を描いてきた。この絵も実際にこんな女の人が現場にいたわけではない。

そして登場するのが「写実主義」。
クールベ(1819-1877)は、6m×3mの大作「オルナンの埋葬」で、小さな村の葬式の様子を描きます。現実を描いていくのだ!という表れ。
さらに登場するのが「バルビゾン派」。
当時のフランスって10年おきに体制が変わってるんですよ。
1830年の7月革命はブルジョワ革命、しかし1848年は労働者革命。
「落ち穂拾い」のミレーは、貧しさを描いて評価されるし、クールベはパリ・コミューンに参加して美術委員会議長にもなっていた。
「オルナンの埋葬」は1855年のパリ万国博に出品したものの落選、クールベは、なんと万博会場の前にパビリオンを作って「クールベ作品展」を開催します。
これが世界初の「個展」と言われてるんですよ。

マネ(1832-1883)は、現代の古典を作ろうとしました。
「草上の昼食」は、物議をかもしますが、マネの静物画ってタッチ一発! でリアルに描く。
マネ先輩に続け! ということで若い画家たちも作品を制作しますが、国の展覧会には入選しない。
それで1874年、写真館のスタジオに出展した絵のひとつが、あのモネ(1840-1926)の「印象・日の出」です。

私は「impression(アンプレッシオン)」は「印象」でなく「感じ」の訳のほうがいいかも、と思います。
この感じ、悪ないんちゃう? と次から自分たちで「印象派」を自称するようになったわけです。

印象派の絵画は遠近法を無視、筆触分割(太陽の光を構成するプリズムの7色を基本とし、しかもそれらをおたがいに混ぜないで使用するという技法)を用います。
「印象・日の出」も「日の感じ、雲の感じが出てるやん!」、そんな絵です。

モネの作品には睡蓮の絵が浮かぶように、水を描いたものが多いですが、水は常に光と色彩が移ろいます。彼は筆触分割でそれを表現しようとしました。

ドガ(1834-1917)は、外光でなく、室内の人工光を描いています。「踊り子」の絵がそうですね。
写真が登場しますが、画家たちは、写真では表現できない移ろいを表現しようとします。
この頃、チューブ入り絵の具が発明されたのが大きかった。
外で絵を描くようになります。それまで外でスケッチしても描くのは室内。
アトリエはたいてい北向きで、そうしないと影が動いてしまうから。
印象派はむしろ、変わる移ろいを描こうとした。
時間と言う要素を、絵の中に描いたのです。

「象徴主義」は、モローのサロメが有名です。
テーマは聖書の話だが、勝手に話を変えてしまう。これを見たワイルドは、この絵をもとに戯曲を書きます。
「サロメ」というものに、「魔性の女」を象徴させているんです。

「印象派」は1886年の印象派展を持って終わります。
スーラの作品をめぐっての対立があり、モネとルノワールはこれを認められない、と。
彼らは点描の不自然さを言ってるんですね。
「新印象主義」は3原色に分解して再構成する点描ですが、必要以上に画面が明るかったりします。

セザンヌ(1839-1906)は、遠近法と質感表現がダメな人(場内爆笑)。
自然を俺が描きやすいように変えてしまえ! と自然をそっくりに描くのをやめた。
1886年から1905年はポスト印象主義ですが、たまに「後期印象主義」と訳されてることがあります。印象派のあとですから「ポスト印象主義」のほうがいいですね。
「ポスト菅」とか、政界で言うでしょ?
ここには三大巨人がいます。
セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホです。
ゴーギャンは、平面的な強い原色が特徴で、フォークロアアートの影響を受けています。アフリカの仮面が、画面に描き込まれたりしていますが、かつては原始美術とかプリミティブ美術となんて呼ばれましたが「ポリティカル・コレクトネス」の立場からフォークロアアートの呼び名になっています。

ゴッホは、自分の内面が絵に出てしまう、って人ですね。
それがドイツの表現主義につながっていく。

1907年ピカソが「アヴィニヨンの娘たち」を発表。
キュビズムのはじまりという人もいますが、これはそこまで立体になっていない。
セザンヌへのオマージュで、プロトキュビズムと呼びたいです。
そして、その色彩が野獣の檻のようだ、と評されたのがマティス、ドランらの「フォービズム」。

抽象絵画の創始者とされるのがカンディンスキーですが、彼はモスクワ生まれでモスクワ大学法学部卒。
モスクワでモネの絵を見て感動、さいしょ表現主義の活動をしていましたが、パウル・クレーとともに「音楽を絵で表現できないか?」と模索します。

これがモンドリアンになると、さらに「見た目の色彩だけでよくない?」という作品になる。
そしてこれらを終わらせたのがデュシャンでしょう。
「もう、絵ェ描かんでもよくない?」というワケです。
有名な、モナリザの絵の複製に、ヒゲを描き込んだ「レディ・メイド」や、男子小便器にサインだけしたものを展覧会に出展したり。
アイデアとか、仕様自体が作品だ、というわけ。
「コンセプチュアル・アート」のさきがけです。

さらに登場するジュールレアリズムですが、ダリやマグリットを入れる人もいますが、本来のシュールレアリズムは、マックス・エルンスト。
偶然の力を借りて、無意識を表現する。
デカルコマニー(紙と紙の間などに絵具を挟み、再び開いて偶発的な模様を得る技法)、フロッタージュ(凹凸のあるものの上に紙を置き、鉛筆などの描画材でこするように描くことで、対象の凹凸や形状を写し取る技法)などを使ってます。

第二次大戦後、ニューヨークがアートの中心になりました。
ひとつは、ナチスの迫害を逃れて、アメリカに亡命したアーティストが多かったから。
そしてもうひとつ、あまり言及されないけど、「ニューディール政策」も影響しています。
ニューディール政策、というと、教科書では公共事業でダムを作った、などとしか出てこないけど、パブリック・アートを大量に発注してるんです。
壁画とか、街角の彫像とかです。

ニューディール政策下で生き延び、シュールレアリスムに影響を受け、花開いたのがジャクソン・ポロック。
偶然性、さらに、ネイティブ・アメリカンの砂絵にも影響を受けています。

さらに登場するのが「ポップ・アート」。レディ・メイドを受け継いでいます。
アンディ・ウォーホールの「スープ缶」なんて、なんでわざわざこんなものを絵に・・と思うでしょうが。「わざわざスープ缶を描くこと自体がアートや!」というわけです。
************************
2時間半にわたる駆け足の解説でしたが、非常に面白く、わかりやすい西洋絵画史でした。30分オーバーでしたが、終わると聴衆から大拍手。
YouTubeなんかでも、山田さんは絵画解説をUPされてるそうです。
ニューディール政策が、ニューヨークのアーティストに関係していた、とは初めて聞く話でしたが、そういうところで、歴史がピタッとつながりますね。
(6月13日、梅田阪急ビル オフィスタワー17階)

余談ですが、わたしが小5のとき、「モナリザ」がルーブルから日本に来ることが決まり、当時、一大モナリザブームが起こりました。
新聞のチラシにモナリザの複製画が入ってたり(裏面は広告)、郷ひろみが「モナリザの微笑」なんて新曲を出したり。
そんな折、3歳上の兄が購読していた旺文社の「中二時代」に、モナリザをめぐる特集が掲載され、マルセル・デュシャンがモナリザ複製画にひげを描き加えて発表したエピソードが載ってました。
「なぜそんなことをと思うでしょうが、美術の世界で『モナリザは絵画の最高峰』と言われていましたから、逆に美術家は、その最高峰を越えなけばならない。それでその権威をひきずりおろすために、モナリザなんてたいしたことない、と、デュシャンはひげを描いたのです」
そんな説明がありました。
田舎の小学生だったわたしはまさに「蒙を啓かれる」思いでした。その文章は強い印象を残し、むしろこれでいわゆる抽象芸術や前衛芸術については「よくわからんけど、普通にきれいな絵を描いても先人がいっぱい作ってるわけだし、もっと別の表現方法を考えないといけないしなあ」と、さほど偏見をもたなくなった気がします。
6 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年06月>
日 月 火 水 木 金 土
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930