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2021年03月21日10:50

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320冊目『輪違屋糸里』

【今回より上/下及び複数巻は、纏めて一冊とする】


浅田次郎著

新選組黎明期の大事件「芹澤鴨暗殺」を、芹澤の情婦「お梅」、島原遊郭の妓たち、屯所壬生村の女房衆ら女たちからの視点で描く。

→279『一刀斎夢録』に続く浅田先生渾身の「幕末三部作」です。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1971821273&owner_id=263792

刊行順を逆に辿ってますけど、後は『壬生義士伝』を一作を残すのみ。
でもなぁ〜先に映像観ちゃってんだよなぁ〜
渡邊謙さんと中井貴一さんの「斉藤せぇんせえぇ〜〜」が頭から離れないんですけど。
このイメージが記憶から薄くなるまでお預けですから、三部作読了は今暫くかかりそうです。

さて今作のキモ「芹澤鴨」その人ですが。
世間的には、新選組における解り易い悪役、暴虐非道の極悪人というイメージでしょうか。
今作でそのイメージが見事に反転しましたね。
元々俺的には芹澤とはちょっとした縁もあって、何かほっとけない感覚を勝手に抱いてたんですが。
昔、むかぁぁ〜〜しね、お芝居で演じたことがあるもんで、妙な親近感があるっつーか。

そんなこんなで芹澤率いる水戸一派のイメージが好転した代わりに、近藤以下の試衛館軍団の印象が地に落ちましたけど。
結局は権力の犬かよッ!と。
まあ芹澤も会津の命令で狼藉者を演じてたわけですから、同じ穴の狢なんですが。
同じ志で集まった同士で同じ過ちを犯してんのに何故仲良く出来んかね。
またもや日本人の宿痾、セクショナリズム爆発、大好きな派閥争いの始まりです。

完全水戸目線で読んでますから今回、過去他の新選組モノで慣れ親しんだ試衛館の面々がこんなにも別の顔で迫ってくるとは。
特に土方、恐ろしい男ですよコイツは。
誰が書いても格好良くなってしまう男「土方歳三」ですが、今回ばかりはやってくれました浅田先生。
狡猾にして冷酷無比、近藤を押し上げるためには手段を選ばない、まさに鬼の副長ここに極まれり。
それに引き替え芹澤の不器用さといったら、まるでNo.1ホストと中二の童貞ぐらいの開きがあります。こりゃ勝てんわ。

でも本当のところはどうなんでしょうね?「芹澤暗殺事件」
読後に調べてみたらオリジナルキャラなしの全員歴史上実在の人物なんですね。
いやぁ〜改めて浅田先生の筆力に脱帽、マジでこの小説がまんま史実ですって言われても全く違和感ありません。

何っつーかホント切ねぇッス。
幕末という激動の時代がそうさせるのか、人々に降り掛かる理不尽な運命があまりに辛過ぎる。
大将の器ながら上手く立ち回れない芹澤、新選組隊士に思いを寄せる妓たち、水戸一派/試衛館の間を何とか取り持とうとする永倉新八、隊士たちを我が子のように心配する壬生村の女房衆、これらの人々の思いを土方の野望が踏みにじる様は読んでてあまりにやるせない。
「他にもっとマシなやり方があるだろうッ!!なあ歳よ」と、俺が近藤勇だったら言ってやりたい。

中でも一番理不尽な目に合うのが、そんな土方に恋してしまった糸里天神なわけです。
いつの時代も危険な香りのする男って、どうしてこんなにモテるんでしょうか?
この人を好きになったら不幸になると解っているのに自分の気持ちを止められない。
そしてその気持ちを利用し尽くす土方、くぅ〜〜外道。
土方への恋慕なのか、はたまた相手への憐憫なのか、それさえも解らぬまま糸里が重大な行動に出る上巻末のシーンは号泣してしまいました。
ラブシーンの描写でここまで心抉られるとは。

土方と糸里、一瞬交わった運命の糸はすぐにまた別の方向へ紡がれていくわけですが、この糸里の最後の決断も胸に迫ります。
「一刀斎」のときの斎藤一もそうですけど、やっぱ人間生き様なんです。
好きな男と添い遂げるよりも、自らの矜持を貫き通す。
見事計画通りの土方以外は、誰も幸せになっていないのにラストに漂う清涼感よ。
結局土方が苦心の末練り上げた新選組も、このたった数年後、歴史の渦に呑み込まれていくことになります。
あれッ??芹澤のことたっぷり書こうと思ってたに、土方ばっかじゃん。
やっぱ新選組の核ですよね、土方歳三。


もう一人の憎めない人で無し「お梅」も良いキャラしてます
★★★☆☆
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