mixiユーザー(id:263792)

2021年03月13日19:07

307 view

318冊目『万波を翔る』

木内昇著

激動の幕末外交史、主人公は田辺太一。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E8%BE%BA%E5%A4%AA%E4%B8%80
渋いッ、何か読書中のイメージと違って厳いですけどw
侍がスフィンクスをバックにしてる写真見たことあります?
あの遣仏使節の一員だったんだって!マジか(ちなみに太一はあの写真には写っていない)

ペリー来航から大政奉還までの幕末外交史を一人の有能な幕府役人の目から活写、怒涛のボリューム。
泰平の眠りを貪った幕末に押し寄せる西洋列強、国論は攘夷/開国で真っ二つに割れまさに内憂外患、日本国の存亡の危機。
今まで幕末モノといえば、新選組や維新志士たちを主役に据えた内憂外患の所謂内憂に焦点を合わせた作品ばかり読んでたんで、外交を題材に採った今作は幕末史に新たな視点を与えてくれ非常に新鮮な気持ちで読み進めた。

百五十年前の出来事とはいえそこは同じ日本人、今とあんまし変わんない。
っつーか殆ど一緒、情けないくらい同じ過ちを繰り返してます。
一歩間違えれば西洋列強の植民地になってしまうかもしれないという未曾有の国難にあっても、しょうも無い面子や見栄、醜い派閥争いから脱却出来ず幕閣内ですら挙国一致の態勢を取れない。
しかもこの国難を利用して、幕政にダメージを負わせようと不毛な攘夷を繰り返す西国雄藩の暗躍。
この体たらくでよくもまあ、あの危機を乗り切れたもんです。

そして先ほども言及した通り哀しい哉この体たらくは、現在のコロナ禍ともドン被り。
何故コロナという国難を前に挙国一致で立ち向かえないのか。
メディアでは科学的根拠も曖昧に感情論が幅を利かせ、国会は揚げ足取りの醜い政争ばかり。
今日もネット上では、感染予防派と経済優先派が激しい罵り合いを続けています。
政権与党の方針は定まらずフラフラと頼りなく、批判しか能の無い無策の野党はもっと頼りない。
国民はどっちらけの無関心を決め込むか、モヤモヤと不満不安を募らせるばかり。

実は日本人って、合議制向いてないんじゃないの?
これは日本の歴史あるあるなんですが、毅然としたリーダーシップが発揮出来ず貴重な時間を浪費した上、関係各所の意見の擦り合わせと問題の先送りで、結局毒にも薬にもならない中途半端な対応になってしまうという愚が幕末外交にも随所に散見されます。

「何も捨てられない人は何も変えられない」

『進撃の巨人』アルミンの名言ですね。
日本人って、この損切りがもの凄く苦手ですよね。
リスクを背負うことを極端に忌避するというか。
誰がトップだろうが、百点満点全国民が賛成なんてことは絶対にあり得ないわけで。
どんなに練った政策だろうと必ず文句を言う奴はいるし、損する人も出るでしょう。
あらゆる可能性を考慮しそれらを徹底的に議論した後、今後の方針を決断し前に進むのがトップの仕事、そしてそれを尊重するのが民主主義でしょう。
コロナに限らず、五輪や少子化、安全保障や財政再建まで問題は山積しています。
この激動の時代にあって、問題を先送りにして決断から逃げるというのは罪です。
っつーか、派閥争い大好きの日本人には時間ばっかかかって何も決められない議院内閣制より、トップに権力を集中させる大統領制の方が合ってませんかね?
皆でダラダラ話し合うより、ワントップでガンガン決めた方がマシな気がするんだけど。
期限を切った独裁の容認 →→→ 大統領制の採用。

、、、って、また本の感想じゃねえぇぇぇーーーッ!!

いやあまりにね、一連のグダグダ感がそっくりだったもんでつい、、、
で幕末に話を戻すに、グダグダっつーか最早グチャグチャなんですが、このコロナ禍よりさらにカオスを増したあの国難をどうやって乗り切ったかというと、やっぱり人間力だと思うんです。
主人公の太一にしろ他の幕府役人しろ熱量が半端ない。
自らが所属する組織「幕府」のため、金儲けのため、立身出世のため、不純な動機はあれど、その根底に共通するのは日本を守りたいという純然たる思いなんです。
外交に一番大事なのは知識でも語学力でもコミュニケーション力でもない、愛国心です。
これだけは絶対。
勿論愛国心だけでは駄目、外国人を斬り付けた過激志士にも当然の如く愛国心はあったでしょうから。
だからこそ現状を正しく認識するための知識が大変重要であり、そしてその二つを最大限活かすためのスキルが語学の才能でありコミュニケーション力なわけで。

「心・知・技」その全て或いはいくつかを併せ持った逸材が影で幕末の外交を支えていたとは。
坂本龍馬や土方歳三ばかりが幕末じゃない!
そういう意味では今年の大河「晴天を衝け」には期待してます。
そうそう、あの渋沢栄一も例の遣仏使節の一員なんですって。
今作でもちゃっかり太一と絡んでます。
大河にも出てくるかな?太一、今から楽しみ♪

まあ、その逸材たちも幕府内の派閥争いに呑み込まれちゃうんだけど。
栄一は維新後も大活躍しますが、今作に登場する幕閣の切れ者たちは歴史に大輪の花を咲かせることなく散っていきます。
返す返すも惜しいッこれからの日本に是非欲しい人材なのに。
幕府にしろ明治新政府にしろ、何故もっと有為の士を掬い上げられなかったのか。
突き詰めていけば権力闘争や派閥争いなんて、あいつとは合う/合わない・好き/嫌いってだけの感情なんですよね。
こんなつまらない感情に才能が殺されるなんて。まさに不毛の極み。
逆にこの感情さえ乗り越えれば、主義主張や考え方の違いは話し合いで埋め合うことが出来るはず。
それこそが理想の人間関係であり、延いては外交にも繋がっていくことでしょう。

だ・け・ど、それが出来ないのが人間なんだよなぁ〜〜(哀)

ん??
軌道修正したつもりがまだ感想じゃねぇなと。
そうなんですよ良い読書っつーもんは、こうやって本の感想を飛び越え思考の海に放り込んでくるんです。
じゃあ文句なしで四ツ星かっつーと、それはそれ、また別の話でして、、、
ハイ、やっとこ感想です。
幕末・異文化交流・国士モノ・熱血主人公と俺陶酔のキーワードが並んだものの、今一琴線に触れないというか、正直淡々と読了したというか、もっと滾ると思ったんですが一体何が合わなかったのか、、、

役人の宿命というか、人事異動が凄まじいんですよ。
新キャラ登場してやっとこ馴染んできたなと思ったところで飛ばされちゃって、キャラに感情移入する暇がないんですね。
これは史実にもいえることで、徐々に外国公使との人間関係を構築してさあこれからが外交本番だというときに現場から外されて新任者がやり直しの繰り返し。
この外交現場が感じたであろうやるせなさを読者にも追体験させてるとしたら、相当な高等テクニックですけど。
主人公太一以外でキャラ立ちしてるのは、天敵上司「水野忠徳」と本筋に全く関係ない兄嫁のみで他は淡泊、よって本来はもっと盛り上がるであろう退場キャラの再登場シーンも(あれ、、、コイツ誰だっけ?状態)

知的好奇心は十分刺激してくれるんですが、感情は揺さぶってくれないつーか。
さっきの理想の人間関係の話とは逆ですねw
さっきつでに「心・知・技」で説明させてもらうと、、、
心・・・キャラに感情移入出来ず感動までには至らない
知・・・今回知り得た幕末史の裏側盛り沢山、知的好奇心大満足
技・・・文章は読み易く台詞のキレもあり (今の政治家にも聴かせてやりたい!)

まあこんなとこですか。
でもこんだけ長文捏ねくり回してるとこ鑑みるに、何かしら爪痕の残した作品であることは間違いありません。


英雄じゃない偉人たち
★★★☆☆
0 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年03月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
  • 01月
  • 02月
  • 03月
  • 04月
  • 05月
  • 06月
  • 07月
  • 08月
  • 09月
  • 10月
  • 11月
  • 12月