伊坂幸太郎 (著)
中学校教師「檀千郷」は、自ら〈先行上映〉と呼んでいる特殊能力を有している。
それは他人の咳やくしゃみを浴びて飛沫に触れると、その人間の未来を垣間見てしまうというもの。
使い勝手が悪くありがた迷惑なこの能力を、同僚の食中毒を防ぐような小さな親切に留め、やり過ごしていた。
そんなある日、生徒の飛沫を浴びた檀は、〈先行上映〉で東北新幹線が脱線する大事故の未来を見てしまう、、、
冒頭の拷問シーン。
正確には拷問を始める前に恐怖を煽るシーン。
あれ、、、コレ駄目かも、、、
ホント、歳を重ねるにつれて暴力描写に対する耐性の低下を実感します。
特に無抵抗な対象に一方的に行使される暴力。
戦記ものとかヤクザの抗争とかは全然大丈夫なんですが、いじめをテーマにした作品とかもう読めないと思う。
それに加え伊坂作品特有の軽快な暴力描写。
今作で言うと、「じゃあ今から拷問始めま〜す♪」みたいなノリ。
これがマジで受け付けなくなってきました。
拷問の標的は、猫の虐待動画を喜んで視聴するような品性下劣なクズ共。
「目には目を、歯には歯を」
ハンムラビ法典どんと来い的な俺からしてみれば、クズ共が痛めつけられて大いに溜飲が下がる展開のはず。
なのに何なんでしょうか?この込み上げる不快感は。
常々、凶悪犯罪者を擁護する人権派弁護士に義憤を募らせているくせに。
外道を地獄へ突き落とすのに、何を躊躇うことがあろうか?
作中「布藤鞠子」の台詞によって、明確にこの私的制裁は否定されてます。
多くの読者が読み流すであろうこの数行が、作中一番印象に残ってしまうという、拗らせに拗らせた斜め読み。
もう一度言いますけど、本来俺は「目には目を、歯には歯を」なんですよ。
凶悪犯罪者は、被害者と同じ恐怖や苦痛を味わうベきという考え。
それが今作読了後には、180度転換とはいかなくとも、もしかして俺って行き過ぎてんじゃね?というレベルまで揺り戻される始末。
日本は法治国家です。
どんな凶悪犯罪者であろうとも、あくまで法によって裁かれ罰せられなければならない。
如何なる事態であろうとも、感情により私的制裁が加えられることがあってはならない。
人類が長く暗い暴力の歴史を潜り抜け、ようやく辿り着いた法治国家という形態。
まだまだ道半ば、我々が暴力と完全に決別できる日はやってくるのでしょうか。
過去数多の小説を読んできましたが、思想信条にまで侵食してくる作品は滅多にありませんでした。
そういう意味では今作は稀有な存在といえるでしょう。
しかし決定的な弱点が、、、
面白くない。
伊坂作品で読書スピードが鈍ったの初めて。
合う合わないは別として伊坂先生に限ってハズレなしと、厳選せず書架から適当に引っ張ったら初めてのハズレ。
考えを改めるキッカケといえば当りですが、純粋に面白さからいえばハズレ。
面白くないプラス、主人公の檀先生が俺とそっくりでイライラさせられます。
責任感が強いお人好しだけど、実行力や度胸に欠ける。まんま俺。
〈先行上映〉みたいなやっかいな超能力、絶対いらねぇッ!!
人々が危険に晒される未来を無理矢理見せられて、現状を変える能力もないのにどうしろと?
責任感と正義感に押し潰されそうになる檀先生に自分を重ね合わせてしまい、作品を娯楽として純粋に楽しめない。
ニーチェ?読んだことあるわけないじゃん。
嗚呼成程ね、これも一種の精神拷問か。
解ってます、解ってますってば。
今作読んでこんな感想になるなんて、俺が心底拗らせてるだけ。
普通の感性なら普通に面白いと思います。
伊坂アレルギー
★★☆☆☆
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