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2023年04月08日09:28

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362冊目『テスカトリポカ』

佐藤究著

見てよこの表紙、何ちゅう禍々しさ。
書店に平積みされてる時から、その只ならぬオーラは要チェック済みでございました。
えッ直木賞獲ってんのッ!?マジか、これは否が応にも期待は高まるばかり、、、

かつての麻薬密売人は、日本で心臓密売人となった。
川崎で勃興する“血の資本主義”
金と暴力の臭いに吸い寄せられる怪物たち。
アステカの古き神は、如何なる裁きを下すのか、、、

凄まじい暴力描写に圧倒される。
あまりのえげつなさにドン引き。
人間としての生理反応が明らかな拒絶を示している。
そ・れ・な・の・に、ページを捲る指が止まらん止まらん、暴力に対する嫌悪感をさらに面白さが上回ってますッ!!

主人公は二人。
メキシコ麻薬カルテルの大幹部「バルミロ・カサソラ」と、日墨ハーフの少年「土方コシモ」
この二人の圧倒的存在感とカリスマ性。
そしてこれに絡むキャラクターも、それぞれスピンオフで主役を張れるポテンシャル。
さぁぁ〜〜って、何から語ろうか。

先ずはそうね、、、「メキシコ麻薬戦争」ですかね。
サボテンとポンチョの陽気な国。
まあ大方の日本人がメキシコに抱くイメージといえば、こんなところでしょう。
一方闇の側面、ダークサイドが麻薬ということになりましょうか。
犯罪組織の抗争といえば、ヤクザが敵対する組事務所に拳銃を撃ち込むみたいなことを想像すると思いますが、麻薬カルテル同士のそれはそんなもんじゃありません。
最新重火器で完全武装した戦闘員による戦闘、まさに戦争。
ドローン使って空爆までしてんだぜ、もう無茶苦茶。
そして読者を絶句させるのが、これが佐藤先生の創ったファンタジーなどではなく、現代のメキシコで実際に起きているということ。
法と秩序、正義が全く通用しない地域がこの地球上に今も厳然と存在しているという事実。
解り切っていたこととはいえ、改めてこうして突きつけられるとやっぱショックですね。
まあ色々不満はあれど日本で、基本的人権が尊重されて、法と秩序に守られつつ暮らせるっちゅーのは有難いことなんです。

で、ドローンに爆撃されて命からがらメキシコを脱出するバルミロなわけですが、この全世界をまたにかけた逃亡劇が凄ぇの何の。
これだけで充分一冊の小説になりえます。
敵カルテルの裏をかき敢えてアメリカへは北上せず、闇ネットワークを駆使しての、南米〜アフリカ〜オーストラリア〜インドネシア〜と決死の世界一周。
こんなんCIAのスパイも真っ青だろ。
んでインドネシア潜伏中に、“元”天才外科医末永と出会うことになると。
この末永がまた良いキャラしてんだわ、あんま調子こいてネタバレするわけにもいかないんで詳しく書けませんけど、正直コイツ主役でも全然イケます。

勿論もう一人の主人公「土方コシモ」の話も並列進行中。
バルミロがキャッチーなエンタメ班で、コシモが物語の深み担当ってな役割分担。
愛を知らず、川崎で純粋無垢に育った少年。
喜怒哀楽に乏しく、無為に生きる日々。
しかし彼は、卓越した芸術的センスと驚異の身体能力を秘めていた。

アステカの古き神の導きか、、、この二人が運命の邂逅を果たすわけです、川崎で。
ヤクザ、中華系マフィア、イスラム原理主義テロリスト、ベトナムの半グレ集団と、世界中から川崎に続々と化け物が集まる件はマジでゾクゾクしっ放し。
自らが所属する組織の利権伸長の為、血で血を洗う仁義なき抗争勃発ッ!!
奴等はあのメキシコの混沌を、この川崎で再現しようとしとるんです。
かつてメキシコでしてきた様に今度はこの国でも、豊かな北側を南から侵食しようとする自分に苦笑するバルミロ。
ホント、川崎っつーのが絶妙ですよね。決して東京じゃないっつーね。
首都圏で化け物や怪物が潜むのに、最もイメージがピッタリな街っつーか(川崎市民の皆様スイマセン)
歌舞伎町とか六本木じゃ駄目なんです、ギラギラで派手過ぎる。セレブ臭不要。
やっぱ港町で工業地帯ってのがイイんですよ。
あの高い塀で囲われた自動車修理工場の中で、一体何が行われているのか?
俺ん家から川崎なんて多摩川下ればスグですから。
僅か数十キロ先に怪物蠢く魔窟が展開しているというこの緊張感が、読書を更なる深淵へと誘います(川崎は素晴らしい街です、あくまで今作内の話ね)

正直展開は読めます、終盤の流れも短絡的で、起・承承承・一気に転結ってな感じ。
がッしかしッ キャラの魅力と圧倒的暴力描写で余裕の押し切り。
最初から最後まで一行もダレることなく、夢中で貪り読みました。
液〇〇素で腕を〇らせて、〇ン〇ーで粉々に〇く拷問シーンとか読んでみ。マジで竦み上がるから。
だけど、只のスプラッターってだけじゃないのよ、当然ですけど。
先ずは圧倒的暴力描写ありき、そして超強烈なキャラクターたち。
ここにアステカ文明特有の考え方や宗教感、征服者であるスペインの文化、中南米麻薬カルテルの実態という要素がブチ込まれて、作品全体が一種異様な雰囲気を醸し出してんのよ。
まさに表紙とタイトルに全てが集約されとるんですわ。

金か復讐か平穏か快楽か?はたまたアステカの神のお告げか?
各々それぞれキャラクターたちが人生で最も尊んでいるものは何なのか?
それが主役二人とどう絡み合うのか?
この化学反応も今作の読みどころ。
それから作品に散りばめられた各種蘊蓄も知的好奇心をバリバリに刺激してきます。
圧倒的暴力描写はもう既に天井ブチ抜いてますが、作品のリアリティを支えるディティールが素晴らしい。
犯罪の手口や情報の取り扱い、裏社会の流儀から富裕層との闇の繋がり、工芸品を作り込む職人の生き様まで。
まるで極上の都市伝説をそっと教えて貰った様な感覚。
静と動、深い精神性と凄まじい暴力描写が混然一体となった奇々怪々なる読書体験。
是非、皆さんも実感していただきたいッ!!

文学賞、増してや直木賞なんて、審査員受けするお上品な作品が獲るもんだとばかり(無知でお恥ずかしい)
多様性こそ豊かな文化の源泉だと確信するものなれば、佐藤先生には今後も独自の路線を突っ走っていただきたい。
佐藤先生のお写真拝見しましたが、まんま「チャターラ」じゃんw
作品のみならず、佐藤先生御本人からも凄まじいオーラが滲み出てます。


早くも次回対戦が楽しみ♪
★★★★☆
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