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2026年07月02日09:08

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映画「ロングウォーク」

戦争で国が分断され、貧困にあえぐ社会不安の中にある、近未来のアメリカ。

50州それぞれから若い男性が選ばれ、「ロングウォーク」に参加させられていた。
これはただひたすら50人が歩き続ける、というもの。ゴールはなく、脱落せず最後に残った参加者が莫大な賞金と「願い事を一つかなえられる」という特典が付く。

「時速4.8キロをキープすること」「速度が下回ると警告開始」「3つの警告で即死」「最後の1人になるまで歩き続けること」という4つのルールに従い、装甲車の兵士たちに監視されながら歩き続ける。
国を挙げてのこの「行事」は、名目では若者たちの奮闘を見て、一体感を持ってもう一度アメリカを輝かしい国にする・・というものだった。

レイ(クーパー・ホフマン)は、母(ジュディ・グリア)にクルマで送られて、スタート地点に向かった。母は、ロングウォークへの参加は、かなりの確率で「死」を意味すると分かっているから、涙にくれる。

レイは待機所にいた黒人青年のピーター(デビッド・ジョンソン)と名前を聞き合い、すぐに親しくなる。数分のあいだに「気が合うヤツ」とわかったのだ。

レイはピーターをはじめ、アジア系のハンク(ベン・ウォン)、黒人のアート(トゥット・ニュオット)、コリー(ジョシュア・オジック)、ロングウォークのことを本に書く、というリチャード(ジョーダン・ゴンザレス)らとなんとなく連れ立って歩き始めた。

しかし、これはいわばデスゲーム。
開始して間もなく、つまづいて転んだ参加者が立ち上がれないままでいると、容赦なく、兵士から射殺される。

その惨劇を見ないようにしてレイらは進むのだが、休息はなし、睡眠も許されない。
そんな中でもレイは、脚がつって、歩けなくなり、あやうく射殺されそうになった仲間に駆け寄り、落ち着かせ、脚がほぐれるようにしてやるのだった。

バーコヴィッチ(チャーリー・プラマー)は、参加者の一人を執拗にからかい、怒ったその彼が反撃しようと転倒してしまう。
しかし立ち上がることができないまま射殺された。
レイたちはバーコヴィッチを「お前が殺したんだ!」となじる。

休憩もないから、参加者は歩きながら飲み食いをし、場合によっては排泄しながらの行進。
当たり前だが、非人道的なことこのうえないデス・ゲームだった。

やがて体力的に限界が来て、脱落者がどんどん増えてくる。
そのたびに射殺死体が増える。
レイもピーターも必死にそんな状況に耐えながらひたすら歩くだけ。

ふたりは歩きつつ打ち明け話をする。
思想統制が厳しくなる中、レイの父は彼にキルケゴールの哲学書を与えたが、それが犯罪とされ、レイと彼の母の前で射殺された。殺した大佐(マーク・ハミル)は、まさにいま、ロングウォークを取り仕切って、装甲車の上でがなり立てている、その男だった。
レイはピーターに「優勝できたら、願い事はカービン銃、と言う」。その銃で大佐を撃ち、父の敵を取りたい、というのはピーターにも分かっていた。

ピーターは戦乱で両親を亡くし、孤児として育った。顔に大きな傷があるが、不良と喧嘩した時に付けられ、重傷を負ったのだった。

ロングウォークのルートは、レイの「地元」だった。
ふと沿道に、母が建っているのを目にしたレイ。
通り過ぎようとして、やはりたまらず母のもとに駆け寄るのだが、そのままだと射殺される。仲間に引きずられるように、行進の中に戻される。

ロングウォークは5日目に入り、歩いた距離は500キロ超え(東京ー大阪ぐらいか・・)。ここまで来ると、体力ももちろんだが、精神的に異変をきたす者が続出してくる。
大声で叫んで倒れる者、思わず、装甲車の兵士の銃を奪い取る者。
しかし、即座に射殺されてしまった。

とうとう、歩いているのはレイとピーターのふたりだけに。
大雨がふりしきっている。
最後の二人のマッチレースを見るために群衆が集まる中、ピーターは立ち止まり、レイを先に行かせようとするのだが・・


この手の「デス・ゲームもの」の物語は多い。
たくさんの人間を競わせ、脱落者が殺されていく・・なんてまるでわたしが昨年ネトフリで見た韓国ドラマの「イカゲーム」ではないか。

しかしこの「ロングウォーク」は、ただひたすら歩くだけ、というシンプルさ。
見ているうちに、こちらが息苦しくなる。スクリーンの中の参加者たちの疲労が、観客に伝染してくる。どこそこで終わり、というゴールが見えない分、その息苦しさが増加する。

そんな非人間的な状況でも、レイは仲間を見捨てない。ピーターとも絆が強まっていく。

この映画、原作はスティーブン・キングとのこと。
こんな話書いてたっけ? と思ったら、彼が大学時代に執筆を始め、「リチャード・バックマン」という別の筆名で、1979年に出版されたのだそうだ。

分断するアメリカ、もう一度世界一の大国に、とこだわる某大統領など、21世紀の現代のアメリカが、この映画の背景と二重写しになり、キングが予言したかのようだ。

R15指定なので、かなり残酷なシーンがいくつも出てきて「閲覧注意」の映画です。
(7月1日、T・ジョイ博多)
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