月村 了衛 (著)
昭和末期から平成中期の京都仏教界と闇社会を舞台に、志篤い若き僧侶が、権力と暴力に呑み込まれていく様を描く。
前にも書いたことありますが、俺は“力 ”の信奉者なんです。
プラカード持って心の限り叫んだとて戦争は止まりません。悲しい哉これが現実。
理不尽に行使される暴力の前では、平和主義は無力なんです。
外交で話し合うつったって、その外交を裏で支えているのは軍事力であり経済力、その国が持つ“力 ”、国力に他なりません。
弱者がどんなに正論を説こうとも、強者の論理が押し通るのみ。
ステージ�犬遼�期ガンは神に祈っても治りません。病院に行くしかないんです。
放射線や抗ガン剤の副作用で禿げるかもしれない。しかしガンを治療するためには避けては通れぬ道。
正義を執行するには“力 ”が必要不可欠、“力 ”を得るためには偉くなるしかない、偉くなるためには清濁併せ呑まなければならない。
前回(446冊目)、例え生きていくための犯罪であっても断じて許さんと宣っておきながら、舌の根も乾かぬうちに偉くなるための悪事には目を瞑るか、矛盾もここに極まれり。
敢えてもう一度。
俺は“力 ”の信奉者なんです。
正しいことを貫き通すためには、絶対に“力 ”がいる。
今作の主人公「志方凌玄」もまさに同じ考え。
数多の人々の生活を踏みにじってまでも目指すは、日本仏教最大宗派燈念寺派の頂点、総貫主の座。
腐りきった京都仏教界を浄化し、ひいては仏に救いを求める天下万民を導く。
そのためには多少の犠牲は止む無しと、必死に自分を押し殺し修羅となる凌玄。
古今東西、権力という魔物に魅入られ堕ちていった英雄偉人は枚挙に暇がありません。
果たして凌玄の志は、“力 ”を得るまで保ち続けることができるのか?
そしてその志に群がる京都の闇に蠢く魑魅魍魎ども。
金と利権の臭いを嗅ぎ付けたヤクザ・裏社会の黒幕・悪徳公務員が熾烈な権力闘争を繰り広げます。
どいつもこいつも金金金って、お釈迦様の尊い教えはどっこいった?マジ京都どうなってんの?
勿論フィクションとはいえ、あながち絵空事でもないのかなと。
俺、散歩でよく神社仏閣巡りしますけど、明らかに神社よりお寺の方がお金持ってそうだもんね。
境内の豪華設備を目にする度、こりゃ儲かってんなぁ〜〜つって。
作中でも触れられてましたが、この先お葬式ビジネスも先細りらしく、お坊さんでも投資とか財テクやる世の中なんでしょう。
俺は別に僧侶がお金儲けしちゃ駄目だなんて思いません。合法なら全然OK、、、って、合法ならね。
だがしかしッ、今作の生臭坊主共は揃いも揃って違法も違法、腐れ外道の大悪党ですから。
いくら俺が“力 ”の信奉者だっつっても、限度ってもんがあるわッ!!
バブルの狂騒の中、巨悪を討つべく修羅となった凌玄。
彼と志を一にする親友「瀧川海照」との共闘が、否応なしにあの作品を思い出させます。
398冊目『半暮刻』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988533484&owner_id=263792&org_id=1988670723
『半暮刻』みたいに、凌玄&海照のW主人公でも面白かったかも?
双方向の視点からこの物語を注視すれば、凌玄が何時?何処で?どうすればよかったのかが、もう少し見えてきたかもしれません。
さてさて、あのラストに読者は何を思うか?
破滅と見る方も多いと思いますが、俺は微かな希望を見い出しましたね。
その手は既に血で穢れているとしても、ラストのあの時点からでもやり直せるはず。
“力 ”以外の全てを失ったとはいえ、まだ“力 ”が残ってるじゃないか。
“力 ”を得るため今まで不幸にしてきた人々以上に、今から接する人々をその“力 ”で幸せにすればいい。
っつーか、これしかなくね?うん、これしかないっしょ。
じゃあ、地上げされた家族がこの境地に到れるかっつーと、、、確かにそりゃ無理だわ。
一殺多生つったって、その殺される一人はたまったもんじゃありません。
凌玄だって全ての人々を救えるならそうしたはず。でも彼は仏じゃない。
っつーわけで、“力 ”を持った偉い方々へ物申す。
私利私欲を満たすなとは言いませんから、ちょっとぐらい下々のことも考えてやっていただきたいと乞い願う次第でありますハイ。
最後にオマケをば。
関西弁(京都弁)の威力を改めて思い知ったわ。
っつーか、ヤクザと関西弁の相性良過ぎ。
生々しさ?臨場感?とにかく台詞のエネルギー量が跳ね上がるっつーか、気持ちがバンバン伝わって来る。
で、こっからが月村マジック。
ゴリゴリの関西弁の応酬の中、二人。
たった二人だけ、標準語喋るキャラクターが配置されてます。
この標準語の違和感たるやッ 凄まじい演出効果ッ
その無機質でどこまでも冷淡な感じが、キャラの存在感を押し上げる押し上げる↑↑↑
勿論「氷室」も素晴らしいけど、、、アイツですよ。
関西弁でどやされんのも怖いですが、標準語で詰められるのがこんなに恐ろしいとは、、、これぞ新感覚♪
偉い人ホンマ頼んますぜ
★★★☆☆
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