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2026年06月20日11:06

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韓国映画「君と僕の5分」

高校1年のギョンファン(シム・ヒョンソ)は地方の町から大邱(テグ)の高校に転校してきた。離婚してシングルマザーとして働く母親(コン・ミンジョン)が、兄から商売に向いた店舗を紹介されたからだ。母親は地下街で、婦人服店を開く。

時は2001年。ギョンファンには秘密があった。実は彼は日本の「サブカル」が大好き。マンガのほかglobeの音楽に惹かれ、MP3プレーヤーに日本の音楽を入れて、こっそり聴いていた。しかし、表向きは、日本文化は韓国では「禁止」されていた時代。

転校したクラスで隣に座っていたのがジェミン(ヒョン・ウソク)。ジェミンは何かとギョンファンに親切に接し、ギョンファンが聴いていたMP3を彼も聴いて、「じぶんも日本の音楽が好きだ」と打ち明ける。ギョンファンはglobeの「 departures」、ジェミンは「FACES PLACES」が好きだと言う。

バスケットのシュートの仕方を日が暮れるまで、ギョンファンに教えるジェミン。放課後も日本のCDが売っているという地下街の店にいっしょに通う。

だが、おおっぴらに日本のマンガや音楽が好きだとは言えない時代、globeのほかに浜崎あゆみや安室奈美恵、宇多田ヒカルの曲をMP3にダウンロードしていたギョンファンは、クラスの男子から「こんなもの聴きやがって」と激しく暴力を受けた。
ところが中間テストでギョンファンがクラスで1位を取ると、クラスメートの態度が、手のひらを返したように変わる。

ギョンファンはジェミンに強く惹かれていく。
彼は「自分は女性でなく、男性に気持ちが動く」人間だという自覚があった。
2001年、韓国では男性から女性に『性転換』した人がテレビに出たりしていたが、まだまだイロモノ扱いで、クラスメートも教師も「気持ち悪い」と言い放っていた。

夏休み、ギョンファンは、ジェミンやほかのクラスメートと、市内の映画館へ。
ギョンファンは「韓国映画はつまらない」と言ってたのに、上映されていた「猟奇的な彼女」を見て、号泣してしまうのだった。

ギョンファンは、「小学生の頃イジメにあっていた」と打ち明けてくれたジェミンに、自分の「性的志向」のことをさりげなく告白したのだが、ジェミンは逆にギョンファンをうとましく思うようになり、冷たい態度を取り始めた。

クラス中に「ギョンファンはホモだ」「ゲイだ、気持ち悪い」といううわさが流れ、ギョンファンは、噂を流したのはジェミンなのか?と暗い気持ちになる。
さらに、クラスで、何かと彼を目の敵にする男子から激しい暴力を受けた。
ギョンファンは「人と違っている・・それだけでそんなに憎く思うものなのか?・・」とつぶやくが、そこへやってきたジェミンに助けられた。

けっきょく、あるクラスメートが「エロビデオに出てた女優がギョンファンに似ている」と言ったことが独り歩きして、そんな噂になったことが分かるものの、ギョンファンとジェミンの溝は埋まらない。

地下街の商店街は再開発で立ち退きを余儀なくされ、反対運動をしていたギョンファンの母も、やむなく店を閉めることに。
別の町で商売を始めるため、ギョンファンはまた転校することが決まった。
母は、ギョンファンの様子がどこかおかしいのを見て、「ひょっとしてスパイなの?」「それとも麻薬をやってるの?」と息子に尋ねるのだが、息子が「同性愛」で苦悩しているとはまったく思いつくこともない。

globeの歌詞のような、雪が舞う日に、ギョンファンは思い出のバスケットコートに行ってみるが、ジェミンの姿はやはりない。

それから20年後、30代になったギョンファンは「恋人」の男性を、母に紹介する。母親もにこやかに応対。
部屋の私物を整理しながらギョンファンは、globeのCDアルバムの歌詞カードの隅に、ジェミンが書いた文字を見つけた。
高校1年の頃、違法ダウンロードサイトをこっそり運営していたギョンファンに、ジェミンは「オレも『グローブサランヘ ドットコム』というサイトを作りたいなあ」と言っていたのだ。
まさか、と思って、URLを入力してみるギョンファンだったが・・


日本の音楽が好きで、でも表向きは禁止なのでこっそり聴いている韓国の男子高校生、という設定に、さいしょわたしは「何を聴いてるんだろ? サザンオールスターズとかだったらいいな?」と思ったのだが、劇中で流れるのはglobeで、いわば「小室サウンド」なのである。

実を言うと、わたしは「小室サウンド」にはまったく興味がわかず、聴いてもいないし関心もなかった。その後小室哲哉が、女性問題やら金銭問題で地に墜ちてしまった感もあり、むしろ嫌悪感さえあるのが正直な所である。
「 departures」は、CMソングでいっときよくTVで流れてたので聴いたことはあったのだが、実はジェミンが好きだという「FACES PLACES」は、今回、映画を見て初めて聴いた、というありさまのわたしである。

「globeってそんなにいいか?」と言いたいところだが、20世紀末から21世紀初めの韓国のティーンエイジャーには「響く」音楽だったのだろう。
脚本・監督のオム・ハヌルは1988年生まれと言うから、物語の舞台の頃は中学生ぐらいか。監督もJ−POPにどこかで触れて思うところがあったのかもしれない。

「小室サウンド」で育った日本の世代には「刺さる」映画なのかもしれないな。
わたしは音楽には共感できなかったものの、ギョンファンの繊細な心の動きと、戻れない高校時代の思い出が、彼の心の支えになっていたところなど、うまくまとめた青春映画だったと思う。

さて、「日本文化は禁止」とはいえ、海賊版で韓国に持ち込まれたりするし、日本へ来る留学生はふつうに日本の音楽は聴けるわけだから、実際はかなり日本のサブカルは韓国で昔から知られていたように思う。80年代、わたしが通っていた韓国語講座の先生は同年代の留学生で「長渕剛が好きです」なんて言ってたし。

いまは、日本の若い世代が「K−POPが大好き」という時代。
オバハンのわたしがクルマの中で聴くのは山下達郎とか大瀧詠一とか中島みゆきとかユーミンとかサザンオールスターズです。
(6月18日、キノシネマ天神)
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