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2026年05月06日12:25

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442冊目『成瀬は都を駆け抜ける』

宮島 未奈 (著)

成瀬シリーズを愛読する読者諸賢におかれましては、私と同様の夢想を抱いた方も少なくないのではなかろうか。

最高主人公「成瀬あかり」その人と、かの森見作品との融合である。

「京都・変人・ほのぼの 」と言えば森見登美彦、森見登美彦と言えば 「京都・変人・ほのぼの 」
既にこれは、我が国文芸界に於ける常識であろう。
市井に京都大学を変人が巣食う魔窟との偏見を植え付けた張本人である、森見登美彦氏。
その京都大学に成瀬が入学したとあっては、最早両雄の邂逅を夢想するは必然、むしろ既定路線をも超えた確定事項といっても過言ではあるまい。

「京都・変人・ほのぼの 」という三要素を介し、シリーズ三作目にして遂に相見えた両雄ではあるが、キャラクターとしてのベクトルは正反対である。
ポジティブとネガティブ、陽と陰、まさに成瀬を太陽とするならば、森見キャラは月なのである。
縦横無尽に都を駆け抜ける成瀬の姿に、心躍る読者の面々が目に浮かぶというもの。
対して森見キャラは悲しい哉、先ず都を駆け抜けない。
一見、駆け抜けている様に見えるかもしれない。
否、よくよく森見作品を読み込んでいただきたい。
彼らは都を駆け抜けているのではない、都で引き摺り回されているのである。
能動と受動、その差はまさに天と地。黒髪の乙女どころか、もじもじとテレビから這いずり出られない貞子の如き有様なのである。
勿論、天下を取りにいく気もさらさらなければ、信じた道をいくべきかいかざるべきかと終始散々悩んで悩んで悩み抜いた挙句、引き返すのが森見キャラなのである。
そういう意味で、達磨研究会会長「木崎輝翔」は出色の出来栄えであった。
彼こそは森見イズムの体現者、成瀬シリーズに顕現した森見原理主義者と認定して差し支えあるまい。
そんな森見ATフィールドの全開を、その天然成分のみで完膚なきまでに中和する様はまさに圧巻。
流石は我らが最高主人公「成瀬あかり」、宮島版黒髪の乙女もかくやと言わんばかり。

勿論、森見成分以外も健在であれば安心されたい。
嗚呼、麗しき日常に揺蕩う愛すべき奇行の数々よ。
前作から僅か半年後の再会ながら冒頭の一編、「やすらぎハムエッグ」の新キャラ「坪井さくら」に完全シンクロしてしまうほど、成瀬その人を待ち焦がれる心持ちで読み進める私なのであった。

「理学部一回生、成瀬あかりだ」

この一言がどれほど強く心に響いたことか。
シリーズ愛読の読者諸賢は勿論、言葉をかけられた当の坪井さくらにも負けていないと自負するものである。
読了後、間髪を入れず二週目に突入。
今年に入って濃厚な読後感でもたれる作品が続く中、この軽快さたるや如何ばかりか。
うなぎに中華に焼肉と連日の御馳走責め、ふと差し出された握り飯と沢庵の喉越しを想像していただきたい。
これぞまさに王道直球ド真ん中、三十回以上は噛み締めたい定番の味なのである。

三作目にしてシリーズ完結と銘打たれているが、冗談ではない。
吉田寮に突撃する成瀬、就職活動する成瀬、パワハラ上司をやり込める成瀬、海外に旅立つ成瀬、月に降り立つ成瀬、本能寺で信長を救い出す成瀬、、、
最高主人公「成瀬あかり」が既に存在する以上、その可能性は無限大である。
「200万部突破で人気絶頂の今こそ辞め時ですよ」と、四畳半のOZUならばそのような妄言を吐くこともあろう。が、私は認めない、断固認めてなるものか。
我ら愛読者一同、成瀬と再会できるその日までいくらでも待ち続ける所存である。
ならばさよならは言わず、その日までごきげんよう。


夏の舞台も超楽しみ♪
★★★★☆
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