佐伯(渡辺謙)は、49歳で広告代理店の部長職。
昭和的サラリーマンで、ガンガン部下を叱咤し、新規の大規模キャンペーン企画を進めていた。
ところが接待の席のキャバクラで、超有名俳優の名前が出てこない。
大事なクライアントとの会議の約束を忘れ、先方の課長(香川照之)に激怒される。
佐伯の娘・梨恵(吹石一恵)は妊娠中で、直也(坂口憲二)との結婚を控えていた。
顔合わせのため渋谷へクルマで向かうが、佐伯は慣れた道なのに、迷ってしまう。
夫の異変に気付いた妻の枝実子(樋口可南子)は、佐伯に病院で検査を受けさせる。
認知機能の検査、MRI診断ののち、医師の吉田(及川光博)から「アルツハイマー病です」と告げられた。まだ40代なのに・・衝撃を受ける佐伯と枝実子。
佐伯は、引き続き会社での仕事を続けるものの、次第にもの忘れが激しくなり、自分が今どこで何をしているかを把握しづらくなる。
部下の生野(水川あさみ)や安藤(袴田吉彦)も、そんな佐伯部長の言動に不安を覚え始めていた。
局長(遠藤憲一)から退職を勧められるものの、佐伯にとっては仕事が生き甲斐。
もうすぐ梨恵の結婚式なので、それまで「現役」でいたかった。
しかし、部下や取引先の人間の顔と名前もうろ覚えとなり、閑職に回されてしまった。
結婚式当日。最後の締めのスピーチを任された佐伯。
ところがスピーチ原稿を洗面所に置き忘れてしまったのだ。
狼狽する佐伯だったが、枝実子に励まされ、即興ながら娘への愛情こもったスピーチをやっとの思いで披露する。
結局その年の秋に佐伯はやむなく退職。
枝実子は友人で陶器のギャラリーを経営している喜美子(渡辺えり子)に頼み込んで、働かせてもらうことに。
佐伯の状態は次第に悪化し、枝実子の苦悩は深まる。
そんなとき、喜美子は認知症患者の介護ホームのパンフレットを、枝実子に渡すのだった。
本棚に隠すようにはさんでいたそのパンフレットを見つけた佐伯は、ひとりで奥多摩のそのホームへ向かう。施設長(木野花)から説明を受け、佐伯は「自分が入ろうと思ってるんです」と言う。
佐伯は渓谷の吊り橋を渡り、山奥に向かった。そこには陶芸の窯場があるはずだった。
佐伯と枝実子は若い頃、そこで知り合ったのだ。そこには頑固で口うるさい老人の卯三郎(大滝秀治)が待っていた。佐伯は導かれるように、焚き木で火を起こすのだったが・・
制作は2006年、もう20年前の映画である。
公開当時結構話題になり、わたしの友人など「母がこれを見て謙さんのファンになったのよ」と言ってたほどだ。ただ、わたしは見ないまま。
改めて今回TVで視聴した次第だが、この20年で「認知症」をとりまく状況もだいぶ変わった気がする。
認知症になることが、決して特別なことではなく、それを受け入れて本人も家族も周囲も生きて行きましょう、そんな感じではなかろうか。
とはいえ、認知症(映画では若年性のアルツハイマー病)となった当人や家族の苦悩は大変なはず。
自分で自分が分からなくなっていく、出来ることが出来なくなっていく、という恐怖、おびえ、情けなさを、渡辺謙が全身で演じている。
誰だって病気にはなりたくない、年をとっても認知症にはなりたくない・・
共通した思いだと思う。
特に聡明な人や仕事が出来た人はその思いが強かろう。
しかし、長生きすれば大病を患ったり、認知症になるリスクはおのずと高くなる。
それは決して恥でもないし、どうそれと付き合っていくか、みな覚悟がいるだろう。
20年前の映画なので、昔の渋谷の街並み等も出てくる。
スマホでなく、みなガラケーを使っていたんだよなあ、と改めて画面を見ながら思い出す。
(4月9日)
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