文化七年(1810年)一月、雪の舞う江戸・木挽町。
折しも芝居小屋・森田座では「仮名手本忠臣蔵」が千穐楽を迎えていた。
舞台がはねた後、満員の観客がぞろぞろと出てくる中、それは起こった。
美濃・遠山藩士・伊能菊之助(長尾謙杜)が、父・清左衛門(山口馬木也)を殺して逃亡していた作兵衛(北村一輝)と対峙、その末に見事あだ討ちを果たす。
菊之助は、「あだ討ちの証人」となった、芝居帰りの大勢の観客の前で、作兵衛の首を挙げた。
その一年半後。
同じ遠山藩で、菊之助の親戚だという加瀬(柄本佑)が森田座を訪ねてきた。
実は、加瀬には腑に落ちないことが多々あった。虫も殺せぬような優しい菊之助があだ討ちすること自体が不可解だったのである。
加瀬は森田座の呼び込みをしている一八(瀬戸康史)をまずはつかまえ、菊之助のことを訊く。菊之助はあだ討ちの半年前から森田座に住み込んで、機会をうかがっていた、というのだ。
加瀬はそのほかに殺陣師の相良(滝藤賢一)、元女形の衣装方・ほたる(高橋和也)、見事な面を作る小道具方・久蔵(正名僕蔵)、その妻・およね(イモトアヤコ)にも聞き取りをするのだが、肝心なことになると、どこか奥歯にものが挟まったような説明で要領を得ない。
本当はなにか違うんじゃないか?
作兵衛の首はどこに埋められているのだ?
そこへ、森田座を仕切る、戯作者の金治(渡辺謙)が上方から戻って来る。
改めて加瀬が聞く、真実のあだ討ちは、あっと驚く背景だった。
遠山藩を牛耳る家老・滝川(石橋蓮司)の悪事をあばこうとしていたが、逆に追い詰められる清左衛門。伊能家の家名を守るために、気がふれたふりをしたのだ・・
そして菊之助の「あだ討ち」という一世一代の芝居をプロデュースしたのは、実は芝居小屋の面々だった。
これは面白かった!時代劇ミステリーとでもいう、どんでん返しの出来栄え。
倒叙法で、「あだ討ち」という大事件を振り返り、どんどんテンポよく物語が進んでいく。
それに出演の俳優さんがみなハマリ役だなあ、と思うキャストだ。
正名僕蔵は、つい昨年の大河の「べらぼう」で松葉屋の役で出てたし、時代劇が違和感ない。ひょうひょうとした侍の柄本佑、「侍タイムトリッパー」から侍づいてる山口馬木也(現在放送中の「豊臣兄弟」では柴田勝家役だし)、そして元女形の高橋和也が、人生の哀歓をまとわせて、好演している。ほかに菊之助の母役が沢口靖子。
それにしても渡辺謙、去年は映画「国宝」「盤上の向日葵」、大河ドラマ「べらぼう」で田沼意次の大役、そして今年「木挽町のあだ討ち」では重要なキーパーソン、いったいいつ休んでるんですか?と言いたい活躍ぶりである。
「木挽町」は、現在の東銀座あたりらしい。
原作も読みたくなる映画です。
(3月26日、イオンシネマ大野城)
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