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2026年02月22日19:38

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437冊目『五葉のまつり』

今村 翔吾 (著)

「大阪の陣」〜「大津城の戦い」〜「賤ケ岳七本槍」からの今村戦国マラソン四戦目、今回は「五奉行」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%A5%89%E8%A1%8C

って、また豊臣かよッ!!
やっぱり豊臣贔屓な俺、秀吉は派手で人間臭くて読んでて面白いんですよね。
返す返す晩年の老醜が悔やまれます。

さて今回はそんな豊臣政権を支えたスーパー官僚戦隊、五奉行のお話。
五人それぞれが主役を務める全五編の短編連作。
戦国モノといえば、虚々実々の駆け引きや戦場での武勇を豪快に描く合戦をイメージしがちですが、内政モノも中々どうして読ませてくれます。
地味な印象を拭い切れない内政モノですが、そこはそれ秀吉ですから。
一つ一つのイベントがド派手で映えまくり。

「よきにはからえ!」

あの信長に負けず劣らず秀吉もまた、ブラック企業のワンマン社長振りを遺憾なく発揮しまくってます。
毎回毎回無理難題を押し付けられる我らがスーパー官僚戦隊、GOBUGYOの活躍をとくと御覧じろ。
じゃあ、軽く全五編触れていきますか。


「まつりの壱 北野大茶会」

茶の湯に沼る秀吉が企画した、誰でも参加可能な空前絶後の大茶会。
主人公は土木担当の増下長盛。
増下長盛って誰?って感じでしょうが、五奉行は石田三成以外マイナー武将ばかり。
今回改めて感じましたが、相変わらず今村先生はマイナー武将愛が深い。
小説の主人公に据えるには正直弱い三成以外の四奉行を、見事にキャラ立ちさせてます。
戦国期には城や砦造りで最も重用される土木建築の業、しかし太平の世にこそ自分の業を役立てたいという長盛の思い。
会期は十日にして毎日参加者数千名、雨天に備え参加者全員が濡れない様に配慮しなければなりません。
準備期間が短く木材も不足する中、果たして長盛の秘策や如何に?
と、言いたいところなれど、今編最大の見せ場は利休vs. 三成の舌戦。
茶の湯に対する美意識の違いから(その実は豊臣政権内の主導権争い)参加を渋る利休。
天下一の茶人が不参加となれば秀吉の沽券に関わると焦る五奉行。
茶の湯で戦国を渡り歩いた怪人、「千利休」の老獪さ全開。
手練手管で遥かに勝る怪人を相手に、我らが愛すべき朴念仁に勝ち目はあるのか?
ココで流石の今村ポイント、利休を只の憎まれ役な腹黒陰湿野郎で終わらせません。
そうなんです、どっちが悪いとか間違ってるとかじゃないんです。
どうしても気が合わない、相性が最悪なだけ。
石田三成という余りに謹厳実直過ぎる漢の、熱過ぎる政への思いが故に引き起こしてしまう摩擦の物語なんですッ!!
最後両者が反発しあいながらも互いを認める件で、今作の当りを確信。
あの手作り椀は反則だわ(涙)
っつーか、三成が出しゃばり過ぎて長盛空気(哀)


「まつりの弐 刀狩り」

これは教科書にも載ってるから超有名ですね、全国に先駆け一揆鎮圧後の肥後国で実地。
主人公は司法担当の浅野長政。この人はキーパーソンですよ、関ケ原では五奉行中唯一の東軍ですから。
国人や地侍から刀を取り上げる。長い間自衛してきた者たちを武装解除させる。
刀を捨てる=誇りを失うとして、刀狩を断固拒否する者たちを如何に説得するか。
この難事に長政は五奉行の先頭を切って取り組みます。
長政の過去と一揆残党の暗躍も絡み、ちょっとしたミステリー仕立て。
並み居る国人衆を前に、「浅野弾正……浅野弥兵衛長政である」
から始まる、太平の世に刀はいらぬという渾身の説得が今編最大の見せ場と言いたいところですが、またもや横槍が。
「立花宗茂」推参ッ!!
肥後は一揆後で治安が定まっておらず、隣国の宗茂が護衛に付くという流れ。
一揆勢残党に囲まれ大ピンチの五奉行を救うべく、宗茂颯爽と登場。
あーあ、イケメンが全部持ってちゃいます。
立花宗茂といえば思い出されるあの作品。
397冊目『塞王の楯』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988408891&owner_id=263792&from=edit_diary_finish
後々石積集団「穴太衆」 や「国友衆」も続々登場と、過去作揃い踏みでまさに今村戦国オールスター状態。
宗茂に見せ場を掻っ攫われる形になる長政ではありますが、五奉行唯一の東軍ということもあり、三成との確執や家康への理解など、節々に隠し味が塗してある奥深いキャラに仕上がってます。あと最古参で秀吉の姻戚筋ってのもデカい。
軍事内政両面から人間関係まで。突出した才はなくとも万事そつなくこなす五奉行筆頭。
人気知名度は三成に遠く及ばずとも、ストレスで胃がキリキリ痛もうとも、長政が如何にして国人たちに刀(武士のアイデンティティ)を手放させるのか?乞う御期待。


「まつりの参 太閤検地」

これまた超有名な教科書案件。
問題は今回の検地が、一揆扇動の疑いが濃厚な伊達領で行われるということ。
主人公は財政担当の長束正家。
数学の天才にして奇人変人、今作きっての特異なキャラクター。
またもや例によって横槍が。しかも二本、名将「蒲生氏郷」&独眼竜「伊達政宗」
この強力な二本に貫かれる正家ながら、全く今編主人公としての座が揺らいでません。
アイツさえ、アイツさえいなければ、、、今作のMVPだったのに、、、
っつーわけで惜しくも次点に留まったものの、その奇抜過ぎるキャラクターは特筆もの。
検地ですから。田畑の面積と収穫量の計算に次ぐ計算、それまた計算です。
数字以外に興味がない変人正家のまさに独壇場。
他の奉行が秀吉への敬慕、豊臣家への忠義、天下泰平の維持など大義で動く中、“やりたいからやる”という純真無垢なモチベーションで事に当たる正家。
ある意味最強の異端児、怒涛の変化球、搦め手からの奇襲。
五編あるんでね、緩急付けていかんと。三番に正家を持ってくるこの今村采配の妙。
それでいて旧主「丹羽長秀」とのエピソードを捩じ込んでくる辺り、解ってらっしゃる。
無機質な人間コンピュータに灯る小さくとも温かい炎。本当に解ってらっしゃる。
更に唸らされたのは三成との対比。
空気は読めるけど我慢できない一言余計な三成のデリカシー欠如キャラと、正家のマジで空気が読めないド天然暴走キャラ。
同じ問題発言でありながら、読者の受ける印象がこうも違うものかとw
悪意や底意がない正家が何気なく漏らした一言が、問題の核心を衝いていることが作中幾度となくあります。
常識の枠外にいる人間が道を切り拓く、そういった意味での多様性の不可欠さを再認識させられた次第。
正家の強烈な個性に押され気味とはいえ、横槍ゲストにも触れておかねばなりますまい。
蒲生氏郷は安定の名将描写で特筆なし、注目は伊達政宗。
まあぁぁ〜〜陰湿悪辣卑劣、今村作品では珍しいこれでもかの下げ描写、手段を選ばず五奉行の検地を妨害してきます。
もともと好きな武将じゃないけれど、今作で増々大嫌いになりました。
でもこっからが今村先生の凄いとこ。次編で政宗の印象を反転させてきます。
伊達の後ろにはラスボス「徳川家康」も待機中。


「まつりの肆 大瓜畑遊び」

なんじゃコリャ?って感じで、初耳の方も多いのではないでしょうか。
要はコスプレパーティー、「文禄・慶長の役」中に肥前名護屋で催された士気高揚イベント。
主人公は宗教朝廷担当の前田玄以。
五編中で一番好きかも。
何せド派手、あの有名武将たちがどんなコスプレをするのか興味津々で読み進めました。
観客の声援をより多く集めた優勝者には望みの褒美を取らせるとの秀吉の気紛れから、またもや五奉行は天手古舞。
単なる遊び、慰労目的だったものが高度な政治的判断を要求される事態へ。
そもそもこの頃の豊臣政権は失政続きで微妙な時期。
もし茶人の仮装で利休切腹に抗議する者が現れたら?
もし優勝者が厭戦気分が高まっている唐入りの中止を願い出たら?
そんな中、家康秘策の仮装(何に化けたかはお楽しみ)が観客の絶大な支持を得ます。
もし家康に優勝され唐入りの中止を望まれたら、秀吉の面子は丸潰れ。
何としても家康だけには勝たせるわけにはいかんと、五奉行の暗躍が描かれます。
打倒家康の対抗馬として白羽の矢が立ったのがあの、伊達政宗という皮肉。
国友衆を従え鉄砲鍛冶に扮した政宗、その傾奇者振りを大いに発揮し、やんやの喝采を浴びます。
しかしそれでも尚、家康には一歩届かない状況、どうする五奉行ッ!?
兎に角今編は、趣向を凝らした武将たちのコスプレが見所。
超有名武将からマイナー武将まで、多種多様な装いで全く飽きさせません。
実はこの大瓜畑遊びを一番堪能したのは、特等席の秀吉ではなく、歴史マニアの読者の方なのでは。
ちょいネタバレですが、要チェック武将を二人ばかり紹介。
「京極高次」、これまた『塞王の楯』繋がりで穴太衆の石工に。あの茶目っ気は今作でも健在。
「織田有楽斎」、信長の実弟で容姿は瓜二つ。なりふり構わずの五奉行により職業限定というルールを無視して、信長に仕立て上げられそうになりますが、、、
その他有名武将続々登場、果たして優勝は誰の手に?予想外の大どんでんをお楽しみに。
そうそう、家康と演目がカブってしまった「真田昌幸」を説得するため、あのスーパーお兄ちゃんもチラッと登場。
364冊目『幸村を討て』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984838346&owner_id=263792
まさに今村戦国オールスター。


「まつりの伍 醍醐の花見」

教科書案件ほどではありませんがこれも有名、京都醍醐寺で催された豪華絢爛な花見です。
主人公は真打登場の行政担当石田三成。
桜の選定、移送、移植、醍醐寺の土壌改良、茶屋の主の選抜、参加者の席次、今回も問題山積、五奉行全員一丸となって事に当たります。
病に侵され余命いくばくもない秀吉最後の大イベント。何としても成功させなければならりません。
土木工事・周辺警備・経理会計・寺との折衝と奉行それぞれ得意分野で真価を発揮しますが、今編の見所は何といっても、秀吉と三成の絆。
三献茶の四杯目って、数ある歴史小説の中でも屈指のエピソードじゃね。
今村先生、、、コレを捻り出すとは、、、心底感服仕りました。
現代のビジネスにも通じる究極のおもてなしとは如何に?
読者諸賢におかれましては俺の感想ではなく是非、御自分の目で確かめていただきたい。

五編はざっと上記の感じ。では総評をば。
正直且つ意地悪に言えば、豊臣政権の暗部である利休切腹や秀次事件、真の国難である「文禄・慶長の役」から逃げてると言えなくもない。
利休や秀次が死んで朝鮮が侵略されている以上、政権中枢にいる五奉行の責任は免れません。
現実的な政治のドス黒さが、美談や感動秘話で覆い隠されている感は否めず。
そういう意味で今作での政宗や家康の動きは非常に良いスパイスになってます、まあ嫌いですけどね。
「大瓜畑遊び」で三成が唐入りを分析する場面があります。
曰く動機は、経済的背景(武士の失業対策、海外貿易の拠点として寧波を抑えたい)と、東アジアへ急速に侵出している欧州勢力の牽制であると。
侵略という史実と国益の追求、豊臣の重商主義と徳川の重農主義の対比、こういうガチ政治案件を天才官僚三成の目を通してガッツリ読みたかった。
まあまあまあ、褒めちぎるのが恥ずかしいから無理矢理駄目出ししてるだけなんですけど。
じゃあ、ついでに後二つほど。
相変わらず台詞が現代語っぽい&全部説明し過ぎ、もうちょっと読者に預けてくれてもいいかと。

ハイッじゃあ最後に長束正家を抑えた今作のMVPを発表しますッ!!
ズバリッ「大谷吉継」ッ!!
出たッ紀之介、いやぁ〜〜刑部格好良過ぎ。
426冊目『八本目の槍』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990824492&owner_id=263792&from=list_diary_title
何で刑部出てこないの?って不思議だったのよ、今作のために温存してたのね。

芦田愛菜ちゃんも大ファン、あの大谷吉継ですよ、御存知ない?
三成の親友です。文武両道にして温厚篤実、誰からも慕われる名将、あの秀吉をして「百万の軍勢を預けて、思う存分に指揮させてみたい」と言わしめた漢。
俺も数々の歴史小説を読破してきましたが、悪く書かれているのを見たことがありません。
今作でもその魅力が爆発ッ三成の窮地を幾度となく救います。
ただね、病魔に蝕まれているんですハンセン病。
重い体を引き摺りながら三成を助けに来る様は、否応なく感動を誘います。
もうね、兎に角不器用なんすよ三成が。真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐな漢なんです。
そんな三成を誰よりも深く理解している吉継、このままずっと友の傍で支えてやりたいけれど死の影が、、、
あーー思い出しただけでも涙が滲んでくるっつーの(泣)
このキャストで「関ケ原」やったら、俺絶対号泣する自信あるわ。


【予言】今村先生は「関ケ原」、、、やります
★★★★☆
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