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2025年10月04日19:30

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426冊目『八本目の槍』

今村 翔吾 (著)

戦国好きの方なら、タイトルだけでピーンと来るはず。
そうです「賤ケ岳の七本槍」ですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%A4%E3%83%B6%E5%B2%B3%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84

じゃあ八本目誰よって?ハイッ我らが石田三成です。
俺がゴリゴリの西軍派にして三成推しっつーのは、そろそろ浸透しましたかね?
七本槍から見た三成という短編連作スタイル。
そう、またしても豊臣関連。ホント豊臣ばっか読んでますね。
今ノリに乗ってる今村先生×推し武将、コレは昂ります。

大名に出世した秀吉は、親戚筋や近郷から優秀な若者を募って小姓組を組織します。
加藤清正や福島正則に大谷吉継、そして石田三成等々。
この時、後に頭角を現すスター武将たちが秀吉の配下に加わりました。
そして信長亡き後の織田家主導権争いをかけた柴田勝家との賤ケ岳の戦いで、大活躍するのが小姓組上りの若武者たち賤ケ岳の七本槍の面々というわけ。

歴史小説にして青春小説也。

ガキ大将がいてガリ勉がいて、喧嘩や恋に明け暮れる日々。
まさに「3年小姓組秀吉先生」状態、羽柴家中の学園ドラマですよコレは。
犬猿の仲であるはずの清正や三成が文机を並べ、勉学に励んでいるシーンを読むだけでも豊臣贔屓の俺は胸が熱くなるというもの。

清正ら武断派と三成たち文治派。この派閥争いを家康に付け込まれ、豊臣家は衰弱していきます。
しかし今作では小姓組時代の堅い絆で結ばれた三成たちは、豊臣家を守るという目的において連携しているという設定。
互いに反目し合いながらも、何としても豊臣家を守らんとする八人を応援せずにはいられません。
それでも史実の壁は厚い。
彼らは関ケ原で敵味方に分かれ殺し合う宿命。
この史実との整合性を如何に取るか?
まさに今ノリに乗ってる歴史作家、今村先生のお手並み拝見といった様相。
そうですね、取り敢えず各話整理しときましょうか。

一本槍「虎之助は何を見る」
いきなり加藤清正、真打を一番にもってきますか今村監督。
超人気武将にして武断派筆頭、俺も大好き♪
アンチ三成の急先鋒、関ケ原には直接参戦してませんが当然東軍寄り。
武勇伝ばかりが喧伝される清正ですが、実は内政も一流。
本来ならば自分も、豊臣政権中枢を仕切る吏僚の道を歩みたかった。
それを成し遂げ、確固たる実績を上げ続ける三成への嫉妬を通して、朝鮮出兵の裏で蠢く謀略が描かれます。
豊臣家を守りたいという志は同じ。
しかし政権中枢の三成と前線で戦っている清正では、どうしても乖離が生じてしまう。
目指す頂は同じだが、おまえとは別の道を行くと。
俺知ってっから。二人が頂上で会えないって知ってっから。
切ない。

二本槍「腰抜け助右衛門」
糟屋武則、、、誰?
戦国中級者を自認する俺でさえ、七本槍の一人っつー以外何も知らん。
そんな彼ですが、七本槍最強にして槍術の達人という設定。
これは史実ではなく今村先生のオリジナル要素かと思いきや、それなりに強いらしい。
ドマイナー武将が清正や正則を稽古で楽々と打ち負かす描写には違和感が拭えないものの、笑顔が素敵な爽やか好青年で誰からも好かれる人物として描かれています。
関ヶ原では西軍(wikiにて補完するに、正確には不明らしい)。
何故最強キャラが腰抜けなのか?
三木城の戦いで背負った彼のトラウマがテーマ。
最強が腰抜けに落ちぶれた後、如何に自分を奮い立たせ旧友三成の元に馳せ参じたか。
その心意気をとくとご覧いただきたい。

三本槍「惚れてこそ甚内」
何を隠そう俺が一番注目していた脇坂安治です。
何故ならば、そうッ!!関ケ原で裏切ってるから(怒)
さあ今村監督の采配や如何に?
ガチガチに構えてる読者へチェンジアップ。
女ったらしのチャラ男設定で拍子抜けと来たもんだ。
でもこれが案外良いキャラしてます。
舞台は丹波戦線。
丹波攻略は明智光秀の担当。何故秀吉配下の安治が?
今作では、丹波で苦戦中の明智軍への加勢という設定(wikiによると元々明智の与力だったらしい)。
黒井城主である赤井直正の調略を担います。
他家から加勢の小姓上りに、こんな重要任務やらせるか?と訝しみましたが、ないとは言い切れないのかも。
赤井家中への伝手を探るうち、安治は運命の女性「八重」と出会います。
この八重の正体がまた、、、そう来たかッ!!
そして、関ヶ原寝返りという特大エラーをどう補うのか?
そして次の四番へ打線が繋がっていく妙、冴えわたる今村采配。

四本目「助作は夢を見ぬ」
片桐勝元は中立。
徳川にも三成にも付かず中立。
どっちが勝っても豊臣家が生き残れるように中立。
誰よりも実直で生真面目、忠義を尊ぶ漢。
舞台は勿論大阪の陣です。
三成亡き後の豊臣家を必死に守ろうとする且元の姿が描かれます。
且元の忠義の前に家康、否、史実の壁が立ちはだかります。
如何に今村采配といえども、大阪の陣で豊臣を勝たせるのは不可能。
そこで貧乏くじを引かされるのが淀ということになるわけですが、これはちょっと可哀想かな。
例の八重の動きにも注目。

五本槍「蟻の中の孫六」
加藤嘉明ですね、じゃない方の加藤です(哀)
一番好きかも。
馬術が得意で、昆虫や動物が好きな不思議ちゃん。
いやぁ〜〜八人全員、それぞれキャラ立ちしてますねぇ〜〜
ネタバレ直結なんで内容には詳しく突っ込めませんが、三成と嘉明、最後の対話シーンはまさに今作最大の見せ場。
個人としての友情と大名としての立場。もうあの頃の二人には戻れない。
全てを呑み込んで優しく諭す三成、涙を堪える嘉明、、、と俺w
そんな彼も東軍、切ねぇ切な過ぎる。

六本槍「権平は笑っているか」
平野長泰、中山道をひたすら東進中ッ!間に合うか関ケ原ッ!!
遅参です間に合いません、秀忠軍付きですから(爆)
ネタバレですけど史実は大目に見てちょーだい。
彼も糟屋武則と並ぶドマイナー武将、そういえば大河『真田丸』でもそのマイナー振りをイジられてましたっけ。
七本槍で唯一、大名になりそこねた漢。
今作でもその劣等感を拗らせに拗らせてます。
槍も手習いも村一番、意気揚々と小姓組に乗り込んだものの、エリート集団の中では埋没してしまう。
甲子園でそこそこ活躍した選手が、プロすっ飛ばしてメジャー挑戦したみたいになっちゃいます。
そんな気後れを悟られまいと、いつしか偽りの笑みを顔に貼り付けるようになってしまう長泰。
これは彼が本当の笑顔を取り戻すまでのお話。
あの家康に切った啖呵、最高に格好良かったです。

七本槍「槍を捜す市松」
福島正則です。勿論ゴリゴリの東軍、関ケ原最前線でバリバリにやり合ってます。
断トツ一位の三成嫌い、脳筋、荒くれ武者のイメージ。
何とッ今作ではミステリー仕立だとッ!?おいおいマジかよ。
まさかあの正則が探偵役とは、、、未だかつて想像だに出来なかった変化球を放ってきやがる。
市松が捜す槍とは、三成が残した遠大なる計画でした。
自分が死んだ後、如何にして家康を封じ込め豊臣家を守るか。
智謀の限りを尽くし、考えに考え抜いた三成の秘策。
これはホントに遠大過ぎて度肝を抜かれました。
それに足りない頭で、一歩一歩近付いていく正則がいじらしい。
大津城門前に晒された敗軍の将である三成に、正則が罵詈雑言を浴びせるあの有名なシーン。
まさかあれが暗号伝達だったとはッ!!
トリを飾るに相応しいブッ飛び感、是非貴方も正則と共に三成の秘策を確かめていただきたい。

どうですか、この豪華ラインアップ。
友情あり恋愛ありミステリーありと盛り沢山。
七人が七人共、それぞれの味を醸し出しつつ、三成とのケミストリーを起こしてます。
そして改めましての今作真の主人公、「石田三成」その人です。
しかしまぁ、三成アゲアゲ祭りの凄まじさよ。
大ファンの俺でさえ、若干引き気味だっつーの。
常に仲間を教え導く教師であり、時には心の傷を癒すセラピストでもあります。
スーパー官僚にして天才戦略家、しかしてその実体は予言者のツンデレ王子様。
もし関ケ原で散っていなければ、三百年早く日本の歴史を進めていたかもしれない傑物。
っつーか、あのスペックなら余裕で家康にも勝てたんじゃね?
監督改め今村先生の主役インフレはあるあるで、お兄ちゃん無双にも相当面喰らいましたけど、アレ越えたわ。
364冊目『幸村を討て』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984838346&owner_id=263792

ブッ飛び要素はブッ飛び要素として楽しみつつ。
それでいて俺が一番唸らされたのは、武断派と文治派の対立を持久派と決戦派に置き換えたところ。
高齢の家康が死ぬのを待つか、徳川の国力が豊臣を凌駕しないうちに決戦を挑むか。
この説なら史実との整合性も取れて、すんなりと腑に落ちます。
何はともあれ、互いを幼名で呼び合う小姓組の友情物語を初めて追体験させてもらい、豊臣贔屓としては嬉しい限り。
あの面子なら豊臣家を滅亡から救えたろうにと残念でなりません。
でもまあ史実じゃあ、マジで仲が悪かったってのがホントのところなんでしょうけど(哀)

最後に一つ。
九本目と言っちゃ何ですが、あの方が全然出てこないじゃないですか?
三成一番の親友で、尾張派と近江派のバランサー、ホラあの超人気武将ですよ。
嗚呼そうか。
あの人出て来ちゃうと、全部持ってちゃうもんね、納得。


GYOBU欠番
★★★☆☆
1 1

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