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2021年12月11日21:45

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335冊目『傲慢と善良』

辻村深月著

「また読みたい」

真っ先に浮かんだ感想。
もうこれだけで四つ星以上確定、「今年の一冊大賞」もほぼ間違いなし。

理想の彼女にフラれたことを引き摺りながら婚活に励む西澤架。
何人もの女性と会ってきたが、どうしても交際してみたいという相手に巡り合えない。そんな中、やや地味だが真面目で気立ての良い坂庭真実と知り合い仲を深めていく。
結婚式が間近に迫ったある日、突然真実が失踪、彼女はストーカー被害に合っていた、、、

正直前半は全くピンと来ませんでした、架の婚活と一緒。
先ずはヒロインの名前、「真実(まみ)」ね。
どうしても真実(しんじつ)って読んじゃうんですけど。
、、、真実(しんじつ)?、、、ああ、真実(まみ)かみたいな。
ヒロインの名前が出てくる度、読み間違えてイライラしっ放し。
普通に真美(まみ)でよくね?俺だけ?
勿論読み終わった今は真実(まみ)の方がしっくりきてますし、こんな些細な突っ込みは吹っ飛びました。

っつーわけで、ヒロインの名前にケチを付けながら、「やっぱ女性作家の恋愛モノなんてオッサンとは一番相性悪いジャンルだわ」などと悪態をつきながら読み進めておりますと、第一部終盤で怒涛の展開ッ!!

第二部からは全く別の作品と言ってもいいくらい。
もうね、小説っつーか、極上の自己啓発本です。
読者の誰もが自らの中にある傲慢の存在に気付かされることでしょう。
流石に人生が変わった!ってのは言い過ぎかもしれませんが、考え方に少なからず変化が生じたことは確実。
これからの人生、自分の中で傲慢が頭を擡げてくることが幾度もあることでしょう、その度に読み返したい。

「善良な人間の中に潜む傲慢」という、日々の生活の中でモヤモヤと感じてはいたが今一つ掴みきれなかったものが書籍として顕在化している、読むことで今まで曖昧だった概念がハッキリと認識されていく快感。
霞がかった頭の中を、文章の風が吹き抜け晴れ渡っていく感じ。
しかも自己啓発本じゃなくて小説なんです。その文章たちがさらに物語として完璧に昇華されているという奇跡。

まさに感DO体験。
号泣w
いい歳こいたオッサンが恋愛小説で号泣ですよ。
全てが破壊された後の再生。
物理的な街の再生、そして二人の関係。
圧倒的景色の中で、まさにこのタイミングしかないというこの時に。
今読者が一番言って欲しい台詞をキャラクターが言ってくれるこのカタルシス。
それしかないよねってところにそれしかないものが嵌る、この圧倒的感動たるやもう↑↑↑
、、、ヤベぇ、激賞ついでに豪快にネタバレしてますねスイマセン。
いやぁ〜〜言いたいことが次から次に浮かんできて上手く纏まりません。

作家さんに限らず、世の中に何かを訴えようとする人って、二つのタイプに分かれると思うんですよ。
ポジティブな言葉で皆を元気にするタイプと、ネガティブな言葉で注意を促すタイプ。
子供が転んだとき、次からは転ばないように叱る母親と「あ〜痛かったね〜」と抱きしめる母親。
成長させるためには厳しく叱ったほうがいいんでしょうが、俺はね、俺はッ、抱きしめて欲しいッ!!
皆疲れてんのよ、叱られること否定や批判、世間に溢れかえるネガティブな言動に。勿論俺も。
そんな俺を、辻村先生はガッシリ抱きしめてくれました。

登場人物の殆どが善良なんですが、作中嫌な奴らも出てきます。
だけど彼女たちも決して悪ではない。
否、むしろ正しい、正しいからこそ強い言葉で他者を非難してくるんです。
これこそがまさに傲慢そのもの。
そして被害者とばかり思い込んでいた真実が、過去もっと弱い立場の人たちへ傲慢さを振りかざしていたという事実。
被害者を一方的に弱者として描くのではなく、加害者としての側面も見せる。
もしかして自分も傲慢だったのではないか?という気付き。
作品を貫くこのバランス感覚、大いに納得させられました。

我こそは正義也とふんぞり返ってる御仁、どうしていつも自分ばっかりがこんな目にと嘆いている皆様方、是非ともお読みになっていただきたい。
読者の誰もが架であり真実であり、善良さの中に傲慢を抱え込んでいるんです。
偉そうな上から目線のお説教ではなく、面白く物語を読み進めるだけで、自然とこの気付きに導かれる。
いやぁ〜〜参ったね、ありがとう辻村先生。
この気付きだけで、日々接する周りの人々がほんの少し優しくなった様に感じられる不思議(←ホントかよw)

兎に角、老若男女、、、いや十代は早いか、十代以外全ての層におススメ、特に婚活中の方は必読。
あっそうそう、それから彼氏彼女が外国人とか年収差が激しいとか、ギャップのあるカップルも読むべし。
価値観の違う世界に放り込まれたパートナーが、どんだけ居心地の悪い思いをしてるかそこの貴方、ちゃんと把握してます?
モテモテの異性と付き合うことになった陰キャ描写の生々しさよ。
リア充の友達なんか皆陽気なパーティーピーポーなんだから。そんな交友関係の中に恋愛経験が乏しい陰キャを放り込むなんて拷問でしょ。

でもね、さっきの母親の例じゃないけど叱られてこそ、試練を乗り越えてこそ、成長出来るってこともあるわけで。
只相手に合わせ良い人を演じ自分を抑え続ける「偽りの善良」から、多少我儘にはなってもハッキリと自分の意思を伝えられる「誠意ある傲慢へ」
我等がヒロイン真実の変化を貴方も見守って下さい。

「傲慢と善良」

他人に自分の価値観を押し付けることは戒めてきたけれど、気付いたら自分自身を一番抑え続けてたっつーか。
正しいとか間違ってるとかじゃなくて、自分の中の勝手なルールに縛られてないか、一つの考え方に固執するあまり周りが見えなくなってないか、俺も常に自分自身に問い質していきたいと思います。

最後に書ききれなかったことをサラッと。

婚活で無口な相手を気遣って、何とか話題を振ったのに軽く流され憤るシーン。
ま・さ・に「傲慢と善良」ここに極まれり、俺か!?俺のことか!?よくぞ指摘してくれました。

表紙の真実が90年代のポリゴンキャラみたい。CG?絶対絵の方が良いのに(←さっき勝手な価値観に縛られてないかって言ったばっかじゃん、あのね、こーゆートコですよw)

『一億円のさようなら』→323
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979161114&owner_id=263792
が蔵書に加わえられず甚だ残念。購入するのは年間一位作品、栄えある「今年の一冊大賞」のみという掟。
今回泣きの掟破りで「一億円のさようなら」を四つ星に昇格することにしました(オイオイそっちじゃなくて二作買えっつーの)


極上の自己啓発
★★★★★
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