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2021年05月05日17:04

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323冊目『一億円のさようなら』

白石一文著

ひょんなことから妻の巨額の隠し財産の存在を知ってしまった夫。
降って湧いた大金の存在は、長年連れ添った夫婦の絆をいとも容易く蝕んでいく。
果たして夫婦の絆は戻るのか?そして、本当の幸せとは?

面白いッ!!

宝くじに当たったりして急に大金を手にした主人公って、それを契機に人生を転がり続け不幸になるっつーのが定番だと思うんですけど、今作は一味違います。
先ず主人公の「鉄平」が、ニートとかの金に困ってる駄目人間じゃありません。
地方の中小企業とはいえ、化学メーカーの重役という設定。
妻から「遺産のこと黙っててゴメンナサイ、取り敢えず一億円あげるから冷却期間おきましょう」と突然ブッ飛んだ提案をされたらどーするか?
あるあるパターンとしては舞い上がって散財豪遊か、はたまた何も出来ずに只呆然と妻が帰ってくるのをひたすら待つかといったところでしょうか。
鉄平は動じません、全く普段通り、まさに鉄の平常心。

じゃあ、話が動かねぇじゃねぇーかと思うでしょ。
ドッコイ、動きまくりなんですよコレが。お金以外で。
数十億の隠し財産が発覚して一億円が手元にあるのに、何とッ!そのシチュエーションをガン無視です。
こーゆーパターンもあんのね、白石先生勉強になります。
妻の失踪、娘の妊娠、息子と親戚である従姉妹の交際、そして化学工場の爆発と部下の重体。
一億円の使い道も考えられないほどのトラブル連発。
実は、これらが一段落ついた第二章からがまた面白いッ!!

そしてはたと思うわけですよ、自分だったらどうするか?と。
一億円ですよ。
う〜〜ん、ちょっと贅沢して残りは貯金すんだろうなぁ〜〜
、、、はぁ〜〜ツマんねぇ使い方、これじゃ小説の主人公には到底なれません。
さてさて我等が鉄平は一億円をどうするのか?

福岡と金沢が舞台なんですが、紀行文としても楽しめます。
金沢がねぇ、凄ぇイイトコみたい。
素朴な人々に新鮮な海の幸、加賀百万石の歴史、こりゃ行ってみたくなるわ。
俺、福岡出身なんで福岡のシーンは懐かしく読ましてもらいましたけど(白石先生も福岡出身なんですね、どうりで詳しいはず)、作中の魅力では圧倒的に金沢です。
兎に角、魚介類マジ美味そう♪

知らない街にふらっと引っ越す鉄平のフットワークの軽さ、見習いたいです。
結局のところ人生を決定付けるのはお金じゃなくて、行動力ということでしょうか。
そうね、例え一億あっても知らない街には引っ越さないもんね、、、俺は。
現状維持という呪縛に雁字搦めですよコチトラ。
「変化を過度に恐れる心 」← 実はこれこそが一番の曲者なのでは、、、
あらゆる状況変化に動じず、常に臨機応変に対応出来るというのは、これからの時代最も必要とされるスキルではないでしょうか。

さて、引っ掛かった点も書いときましょうか。
白石先生、何っつーか、小説文法みたいなもんが独特です。
例えば、新キャラ出てきますよね。
普通だったら何処ぞの誰某と説明があるじゃないですか登場時に。
いきなり出てきて、何の違和感もなく話に馴染んでるから、アレ?どっか読み飛ばした?と焦って読み返してもそれらしい描写ないし、、、
釈然としないまま諦めて読み進めてたら、次回再登場時に説明みたいな。
読み辛ぇッ!別に謎に絡んでくるキャラとかじゃないんだから、初登場時に説明して下さい。
この記述方法に何かしらの意図や演出があるようには感じられませんでしたので、多分白石先生独自のクセだと思われます。
後、劇的展開を起こしといてかぁーらぁーの、オアズケ多過ぎ。
続きがスグ読みたいのに、どうでもいいシーンをワンクッション挟んでくる。
どうやら、読者を焦らすのが白石先生のスタイルらしい。
勿論溜めに溜めたエネルギーの解放によって得られるカタルシスは絶大な演出効果がありますけど、これ程の多用連発はいかがなものかと。

それともう一つ。
これは白石先生というより出版社側への苦言になりますが、表紙があざといッ!!

「直木賞作家・白石一文 文句なしの最高傑作!」

↑帯ならまだしも、裏とはいえ表紙にこの文言書くか?(写真撮っときゃよかった)
っつーか、この装丁だと帯に書くこと無いんじゃないの?帯がどうなってたか見たくなってきました。
折角内容が面白いのにこのクド過ぎる表紙の煽りで台無し。
あくまで俺の主観なんで、この表紙で面白そう!となる方もいらっしゃるとは思いますが、結構萎えてる人も多いんじゃない?そこんとこどーなんでしょうか。
初見のときの俺みたいに表紙だけで見切ってる人いたら勿体無いですぞ、中身はバリバリ読ませますんで。

前回の『Red』で夫婦というものに絶望しかけた俺ですが、今回白石先生の御尽力により持ち直しましたw
と言いつつ冗談抜きで、前回の「塔子」さんと今回の「夏代」さんだったら、世の男性100%夏代派だと思うわ。


三ツ星の最高峰
★★★☆☆

2021年12月11日『傲慢と善良』→335
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981071773&owner_id=263792
の年間一位認定により、特別措置発動プラス★
★★★★☆
1 1

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