深緑野分著
『戦場のコックたち』→259 以来二年ぶりで深野先生との対戦。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1968972203&owner_id=263792
敗戦後のベルリンで、毒殺容疑をかけられた少女の奮闘を描くミステリー。
深野先生の作品は二作目ですが、今回もその海外テェイストは健在、まるで翻訳作品を読んでるみたい。
日本人作家でこの空気感出せる人はそうそういないんじゃないでしょうか。
兎に角、敗戦で瓦礫の山と化したベルリンの描写が精緻を極めてます。
瓦礫の山に漂う悪臭、食糧不足、敗戦に打ちのめされながらも懸命に日々を生きるドイツ国民、我が物顔で歩き回る連合軍兵士、それらの情景がありありと浮かんできます。
序盤スリを追いかける緊迫した場面なのに、すれ違う人々や空襲で破壊された街の様子を微に入り細に入り描写するのにはやや閉口しましたが。早く捕まえろッ!逃げられるぞってね。
物語が進行すると回想シーンで、戦前戦中のベルリンの様子も描写されるんですが、これがまた息苦しくなるほどのリアリティ。
当然ホロコースト、ユダヤ人迫害の歴史に触れないわけにはいけませんので。
嫌悪から憎悪、そして差別から迫害へと。
ドイツ国内で高まっていくユダヤ人への敵意が容赦ない描写で読者に畳み掛けてきます。
日本も同じ敗戦国ですから同じ様な感覚はあると思うんですが、やはりホロコーストと米ソの分割占領の重みが段違い。
この二つの事実は日本の原爆をも越えて、ドイツの戦後に暗い影を落としています。
日本の戦後も一面焼け野原、瓦礫の山からの再スタートで慢性的な食糧不足、治安の悪化など問題は山積み。それでもやっと戦争が終わったという開放感と戦後復興に向けての凄まじいエネルギーの躍動が漂ってる雰囲気ありますよね。
それに比してドイツの場合は、ナチス関係者への凄惨な復讐や、自由主義陣営と共産主義陣営の占領地での格差、早くも始まった冷戦の最前線としての緊張感が戦後の開放感を殺いでしまっています。
そして、改めてナチスドイツによるホロコースト、人類史上最悪の蛮行という歴史的真実を突き付けられて、大きな衝撃を受けました。
作中描かれる、ドイツ国内でユダヤ人に対する迫害の度合いが徐々に増していく様は本当に恐ろしい。
人間がこんなにも残酷になれるということ、これは全人類が深く胸に刻んでおかなければならない負の遺産です。
閑話休題。
で、当時のドイツ国内描写の圧倒的濃厚さに比べれば、軸のミステリー部分は悲しいほどペラペラです。
正直、動機も真相もオマケみたいなもん。
この物語は決して謎解きを楽しむものではなく、当時のドイツに浸る為の作品なのです。
筆が重い重い
★★★☆☆
ログインしてコメントを確認・投稿する