mixiユーザー(id:263792)

2020年08月09日19:49

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305冊目『滅びの園』

恒川光太郎著

ブラック企業に勤める「鈴上誠一」
ある日何もかもが嫌になり、とある駅で途中下車してしまう。
しかしそこは、異世界と繋がっていた、、、

心を病んだ主人公が、異世界の優しい人々と美しい自然に触れ、自分を取り戻し、また日常に戻っていく。
そんな典型的なファンタジーを予想していたら、どっこいッハードSFでした。

誠一が向こうでのほほんと癒されてる間、こっちの世界がとんでもないことになってるっつーね。
地球全体にクラゲの様な謎の物体?が纏わりついていて、それに伴い全世界規模で、「プーニー」と呼ばれる人間に対し毒性を持つ正体不明の軟体動物が大量繁殖しているという地獄絵図。
空に浮かぶクラゲ、作中呼称「未知なるもの」は、どうやら別次元に存在していて、こちらからは物理的干渉が全く不可能な状態。
観測するに、中心の核付近に人間(誠一)が生存していることが判明。
人類はその存亡をかけて、何とか誠一に接触を試みるが、、、ってな展開。

異世界で癒されるファンタジーパートと、現実世界で繰り広げられる「プーニー」との死闘。
この両輪でグイグイ読ませます。
「プーニー」、まぁスライムを想像してもらうと一番近いと思います。
直接触れたり、食物に紛れたものを摂取してしまうと人間が徐々にプーニー化してしまうというえげつない設定。
「プーニー」に対する抵抗力には個人差があり、抵抗力のある個人は国がプーニー災害専門の救助隊としてスカウトしたりと中々に世界観が作り込まれています。
現在のコロナ禍にも通ずるとこもあって、色々と考えさせられたり。

翻って異世界の誠一。
地球がとんでもないことになってるとは露知らず、異世界を満喫中。
全くストレスのない楽園、親切な街の人々、美味しい食事、美しい風景、悩む前に問題が解決してしまう優しい世界。
始めは戸惑い何とか元の世界へ戻ろうとした誠一だったが、すっかりココが気に入ってしまう。
美しい妻を娶り、可愛い娘を授かり、まさに幸せの絶頂、元の世界のことなんて忘れ去ったときにヤツが訪ねてくるわけです。

どうします?貴方だったら?
偽りの楽園を出て、辛い現実に戻れますか?
「マトリックス」の青い薬と赤い薬だっけ?アレアレあれですよ。
ネオは、赤い薬を飲んで仮想現実の世界から覚醒しますが、我等が主人公「鈴上誠一」は果たして?

ファンタジーでSFで、さらに学園青春モノの要素もあって盛り沢山。
故に、個々のテーマの深掘りが物足りない。
自分の幸せか世界平和かの究極選択、才能ある者特有の苦悩、自己犠牲の尊さ。
みんな良いトコ迄迫ってるのに、あと一歩書き込めてない。
大間の本マグロをシーチキンにしちゃったみたいな。
雑な調理法で折角の極上素材が活かしきれてないもどかしさ。

それでも十分面白いですけど。
でも惜しいッ、もっとイケたのにというのが正直なトコロ。
何かあれですね、あらすじ書いただけの感想でサーセン。


A5和牛のサイコロステーキ
★★★☆☆
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