1945年、日本の敗戦で植民地支配から解放されたはずの朝鮮半島だったが、東西対立のあおりで、ソ連が占領の北部と米軍占領の南部との分断が危惧され、南だけの選挙の強行に反発が起きる。
48年4月3日、済州島(チェジュド)では、一部の島民が、外国勢力の干渉の反感から武装蜂起。
その年に成立した南の「大韓民国」は、済州島の海岸から5キロ以上離れた地域は「敵性区域」とみなして、出入りする者は無条件に射殺する、と布告。
海女として暮らしていたアジン(キム・ヒャンギ)は、村人たちと漢拏山(ハルラサン)に避難しようとしていた。娘のヘセン(キム・ミンチェ)は、村に残った義母・ゲオク(カン・ミョンジュ)に預けたものの、心配でしょうがない。
島に上陸した軍隊はしかし、「暴徒狩り」の名目で、無条件に島民を虐殺していく。
ヘセンは村に残る老人たちともども引き立てられた。射殺される村人たち。しかし、ヘセンはからくもゲオクの下敷きになって生きながらえていた。
胸騒ぎを覚えたアジンは、ムーダン(日本で言えば巫女)のホンスン(カン・チェヨン)に訊くと、「娘は生きている」と言う。
アジンはひとり山から下りて、必死にヘセンをさがす。
武装した島民の三人組が、イチョル(ソ・ヨンジュ)に出くわす。イチョルはアジンの夫だ。
だが、三人組は、疑心暗鬼になり、軍に密告したのではないかとイチョルを殺してしまう。
何も知らず、三人組と山の中で出会ったアジン。彼らは旧日本軍が残したダイナマイトを見つけており、アジンにも運んで、武装計画に加わるように迫る。
しかし、彼らからなんとか逃げ出したアジンは、奇跡的にヘセンと再会できたのだった。
夫・イチョルとヘセンと、幸せに暮らしていた日々を思い出すアジンだったが・・
生き延びるため、娘を連れて島をさまようアジン。
今度は軍人たちに見つかり「わたしはただの海女です!暴徒じゃありません!」と叫ぶのだった。
掃討軍のムン一等兵(キム・ウォンジュン)は、クリスチャンで、無差別に島民を殺害していく任務が神の名に正当なのか、懊悩をかかえていた。
果たして、アジンは逃げ延びることができるのか・・
「済州島四・三事件」は「光州事件」と並ぶ、戦後韓国史の悲劇である。
しかし、同じ国民を無残に惨殺したこの事件は、ながらく韓国ではタブー視され、おおっぴらに語られてこなかった。
わたしがこのことを知ったのは20代の終わりだったか。
大阪で中学教師をしていた女性が、済州島出身の在日コリアンに聞き取りをした本だったが、済州島の悲劇のことをその教師も初めて知り、衝撃を受けたという内容だった。
見ながら思ったのは、これは韓国だけの悲劇ではなく、普遍的なテーマである、ということ。ひとたび「暴徒」とみなせば、同国民でも容赦なく殺してしまう不条理さ。
レッテル貼りや、決めつけでいともかんたんに「敵」として排除していく、21世紀の現代と二重写しになってしまう。
子役を演じたキム・ミンチェがほんとうに芸達者。
感情を押し殺し、虐殺からサバイバルしたものの、声が出せなくなる、という悲しみをからだ全体にみなぎらせている。
タイトルの「ハラン」は、「冬の漢拏山で咲く寒蘭」とのこと。ハ・ミョンミ監督は、この花のように過酷な状況の中でも折れない人間の意志、生き延びようとする生命力の象徴タイトルにしたのだそうだ。
(5月27日、KBCシネマ)
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