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2026年05月07日14:23

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「眠れぬおまえに遠くの夜を」桐野夏生(文藝春秋)

<Amazonの内容紹介より>
32歳で遅咲きのデビューを果たし、人気俳優として活躍するパク・テミンは、「終わった男」ことニック・ナダンについて語り始めた。
10代の頃、ともに過ごしたヴァージニア州・アナンデールでの日々。しかし道は分かれ、ナダンは驚くべき速さで成功を収め、これまた驚くべき速さで凋落していった。
世界を股にかけるK-POPグループの一員であるという酩酊と、祖国からの追放。
挫折と成功、ふたりの男の運命が交錯する。
韓国芸能界を舞台、圧倒的彩度の独白、桐野文学の極北がここに。
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「文藝春秋」で連載中、2回ほど読んでいたが、単行本刊行で全編読むことに。
韓国の芸能界を舞台にした小説、というのがいかにも今どきだ。K-POPや韓ドラ視聴が日本でも多くのファンを産んでいる背景があるゆえだが。

パク・テミンが一人語りで、「ナダン」について彼の頂点と転落を語りつつ、自分の来歴をつづっていくストーリー。

テミンは裕福な家庭のお坊ちゃん。IMF危機後も中学からアメリカ留学の身だ。
17歳の時、コリアンタウンそばのスーパーの駐車場でのイベントで、偶然、ナダンを見かける。歌も踊りも抜群にうまい少年だった。

ナダンが気になり、テミンは同じコリアンということもあって親しくなろうとするが、三歳下のナダンは複雑な家庭環境で経済的にも困窮し、店でバイトをしていた。
ずっとアメリカにいたいテミンと対照的に、ナダンは韓国へ帰りたがっていた。

弟のようにナダンを気に掛けるテミンは、ナダンの芸能のずば抜けた才能を感じていた。

しかし、テミンは厳格な父から帰国を命じられる。
ナダンは、オーディションの受験費用が工面できず、テミンがそのお金を用立ててやった。

見事オーディションに合格したナダンは、三人組グループの歌手として人気を博し、それからはとんとん拍子に韓国芸能界の売れっ子になっていく。

アメリカで親密な友人だったつもりが、遠くへ行ってしまったナダン。
テミンは彼に複雑な感情をいだく。
父の会社を継ぐことなく、アメリカの大学の映画学科に進んだテミンだったが、独立系の映画に出たことが評価され、人気俳優への道へ。

しかし、人気絶頂だったナダンは、女性スキャンダルや大麻問題で、あっというまにスターの地位から滑り落ちてしまうのだった。


韓国芸能界の物語ではあるが、日本の芸能界も似たところがある。
芸能界って怖いところだ(;´∀`)
特に現代はSNSによって、不倫でもやらかせば、スティグマのようにずっと叩かれ続けることになる。
「人気」という目に見えないものに右往左往する芸能人たち。
わたしも子どもの頃から、すごい人気でヒット曲を連発していた歌手が、ぱったり売れなくなり、表舞台から消えていくのを何度も見ていた。
あの熱狂的な山ほどのファンとやらはどこに行ってしまったの? と不思議だったのだが。

「僕ら俳優は誰かのイメージを生きている『影』のような存在なのだ、と。そのことに、いつ気づくかで運命が決まる。『影』は、己を隠して、いかようにもイメージを変えて生きてゆかねばならない。それも大衆の欲望に合わせて。だから、僕は自分を殺して生きる。」(10頁より)。

ナダンが、低予算のマイナー映画に出たものの、いろんな騒ぎでお蔵入りになった作品。
テミンはあることがきっかけで、その動画を見ることになるが、「俳優」を名乗る自分が恥ずかしくなるほどの、ナダンの演技に圧倒される。「演技の力だけでなく、ナダンと言う人間の存在そのものが魅力なのだ」ということを、テミンは改めて認識する。
しかし、この国の芸能界では、スキャンダルを起こした後に待っているのは、恥辱ではなく、破滅なのだった。

韓国芸能界が舞台ながら、「虚構の世界で演じる」ことの恐ろしさ、辛さを描き切った長編。これ、韓国で翻訳とか、ドラマ化もすぐに出来るんじゃないかなあ。
桐野夏生さんは、このほかにも最近では「小説すばる」で、「徴兵制のある近未来」を、「新潮」で、双子姉妹の数奇な人生を、そして朝日新聞日曜のコーナーに「推し活」がテーマの小説を同時連載中。
おまけに、日本ペンクラブの会長もなさっていて、桐野さん、いつ眠ってるんですか!?とファンながら心配したくなる八面六臂の大活躍である。
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