青砥健将(堺雅人)は、離婚して埼玉県朝霞市で一人暮らし。印刷工場で働いている。
胃カメラ検診で病院に出向き、売店で出会ったレジ係の女性は、中学の同級生であこがれていた、須藤葉子(井川遥)だった。
缶コーヒーを手に何十年ぶりかの再会を語り合う二人。
須藤は夫とは死別し、いまはアパートにひとり住んでいるという。
青砥の胸によみがえる、須藤との記憶。
彼女のことを「太い」と思った。それは身体的なことでなく「芯が太い」。無口で人を寄せ付けない美少女。友人も自分も須藤に告白するがことごとく断られた。
再会を機に居酒屋で飲む青砥と須藤。店に聞き覚えのある曲がかかっている。
「あ、だれだっけ、これ?」。奥に座ってる店の主人(塩見三省)が「薬師丸ひろ子」と言う。曲は「メイン・テーマ」だ。
青砥はまた飲みに須藤を誘うが、須藤は「ごめん、わたし正直お金があんまりないんだ。外食はしたくない。ウチで飲む?」。
幼なじみで、いまはどちらも独身とはいえ、男と女がふたりきりで・・という状況にためらう青砥。
結局彼女の住まいに行くが、古いアパートで須藤はつましい暮らしをしていた。
朝霞には、「地元の同級生」が何人もいる。工場の事務パート・安西(椿鬼奴)、須藤と同じ売店で働くうみちゃん(安藤玉恵)、須藤にコクってふられた江口(大森南朋)・・
青砥の胃カメラで見つかった腫瘍は良性で問題なかった。しかし、同時期に大腸内視鏡検査を受けた須藤には、ガンがみつかる。
そんな彼女をいたわる青砥。手術の前日、須藤のアパートで一夜を過ごした。
「手術頑張ったから」と青砥は、奮発して買ったネックレスを病室で渡した。
付き添っていた、須藤の妹・道子(中村ゆり)は、そっと席を外す。
認知症で、青砥が息子ともわからなくなり、施設にいた母が亡くなった。
週に一度は顔を出し、母の好きな「ネクター」を切らさないようにしていた青砥。
葬儀の場には病後の身体を押して須藤も来てくれたが、そこに青砥の別れた妻(吉瀬美智子)もやって来る。
術後の須藤を気遣い、ボロの自転車で足しげく、アパートに青砥は通う。
人工肛門を作り、パウチ交換に慣れない須藤は、匂いがしないか神経質になる。
青砥は「思い切って年末に温泉に行こう。熱海とかどうかな」と誘うが、体調の良くない須藤は躊躇。青砥は「じゃ、来年にしよう」。きっと行こうと約束する。
術後六カ月検診があった日。
青砥は須藤のアパートで「いっしょにならないか」と彼女に告げる。
しかし、須藤は「それ、いちばんアカンやつ・・」とかたくなに拒絶。
そして、自分は青砥にとって一緒にいられるに値するような人間ではない、とまくしたてる。
曰く、結婚は略奪婚だった、夫と死別したあと、若い美容師(成田凌)に入れ込んで貢ぎ、夫の残した遺産を溶かしてしまった・・
青砥は、そんなことはどうでもいい、お前が辛いのを見るのが辛い、一緒にいたいのを決めるのはお前ではなくおれだ、と説得するが、須藤の心は変わらない。これからは道で会ってもしらないふりをする、と。
青砥は「でも約束したよな、温泉。お前は約束を破るやつじゃないよな」。うなずく須藤。じゃあ、一年後、と青砥はアパートをあとにする。
一年後、約束を心待ちにしていた青砥は、職場の昼休み、安西から、すでに先月須藤が亡くなったことを聞いて衝撃を受ける。
ずっと使っている自転車で須藤のアパートに駆けつけると、道子が遺品を整理していた。「お姉ちゃんに言ったんです、青砥さんにはもう長くないこと伝えたほうがいいんじゃないかって。でもお姉ちゃん『青砥には合わせる顔がないよ・・』って」。
ふたりで初めて行った思い出の居酒屋に寄ると、そこでは薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」がかかっていた。青砥はこらえきれず嗚咽するのだった。
「平場の月」、4年前に原作を読んで泣いた。
映画の封切りが近づいて、復習のつもりで再読してまた泣いた。
そして映画を見てまた泣いてしまった。
映像化に当たって、青砥役が堺雅人、と聞いて原作のイメージと違うなあ、と。
もっとやさぐれた感じだったから。
逆に井川遥は、原作の「須藤」の感じがよく出ている。
セリフはほぼ原作通り。
原作に出てこないのは、「須藤の元カレと青砥」「青砥の元妻と須藤」がハチ合わせするシーン。なるほど、思い切ってこれを入れてきたことで、あわだつ感情も映像ではあらわになる。
また、ラストシーンも原作からは変えている。
薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」という選曲は、これもなるほど、と思わされるチョイスである(わたしが大学生の頃流行った曲。薬師丸ひろ子の主演映画のテーマ曲だった)。
恋仲になっているのに「あおと」「すどう」と名字で呼び合うふたりが、中学時代のままでどこかほほえましい。
須藤が、意固地なぐらいに青砥を拒否したのは、検診でガンが再発し、愛情ゆえに頼り切るのをよしとしなかっただろうけど、原作読んだときも映画でも、
「もっと甘えろよ〜」と思わずにはいられなかった。
あまりに切ない幕切れ。離婚後アル中になりかかっていた、という青砥は、これでもう立ち直れなくなるんじゃないかと、心配である。
東京でなく、朝霞、という場所が舞台なのもよかったな。
出演はほかに中学時代の青砥(坂元愛登)、須藤(一色澄香)、印刷工場の先輩(でんでん)、須藤の父親(黒田大輔)など。
※原作を読んだときの感想
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981053102&owner_id=5348548
(11月18日、イオンシネマ大野城)
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