貫井 徳郎 (著)
第二次大戦末期、ソ連の侵攻を許した日本は戦後東西に分裂。
その後共産主義陣営の弱体化により、ドイツと同様、西側主導で統一される。
しかし戦後の分断は、統一から三十年が経過した今でも、旧東西間に拭いきれない格差と反感を植え付けていた、、、
アメリカに支配された西日本側の自衛隊員「辺見公佑」と、ソ連に占領された東日本側の主人公「一条昇」
二人は幼馴染みで親友という設定。
このあらすじと設定なら大方の読者は、ハイハイ東西間で揺れ動く二人の人生、愛憎と葛藤の物語ね。
と、当たりを付けるんじゃないでしょうか、当然俺も。
壮大な雰囲気が漂ってるっつーか、熱い読書になりそうな予感っつーか、やべぇ泣いちゃうかもみたいな。
、、、、、、。
これじゃない感が半端ない。
思ってたのと全然違う。
予想だけなら大歓迎なんですが、期待もバッチリ裏切ってきます。
貫井先生、申し訳ありませんがこっから先は本音全開です、御無礼は平に、、、
幸か不幸か、主人公の一条が善良なる一市民なんです。
貧困に苦しむ東日本の現状に不満を覚えつつも、平穏な暮らしを望む普通の人。
西日本を憎んでいるわけでも、東日本の再分離独立を支持しているわけでもない。
過激な思想信条とは無縁のノンポリ。
高い志や憎悪で物語を牽引するタイプではなく、受け身型のキャラクター。
そんな彼が、かくかくしかじかあれよこれよといつのまにか、テロ組織に組み込まれていってしまうというお話。
様々な葛藤を経て認め合う辺見との友情も、相容れぬ思想信条のぶつかり合いも、魂を刻むような東西の愛憎も、俺が喰いつきそうな要素は何もありませんでした。
兎に角、舞台である統一日本が全く作り込まれてません。
分断の歴史がリアルに伝わってこないし、生活描写は貧しいというより昭和三十年代みたい。
そもそも戦後首都が大阪になったからって、標準語が関西弁になるか?
この世界で生きるキャラクターに全く感情移入出来ないまま、作中一条よろしく、読者も先の展開へ流されて行きます。
後は、お得意の生活が苦しい、政治が悪い、あいつらばっかり楽して狡いといった、どっかで聞いた様な不平不満ばかり。
格差だの二等国民だのと、作中の日本と現実の日本をリンクさせようとてるんでしょうけど、俺は乗っかりませんよと。
とは言え、これらをノンポリの一条に語らせなかったことによって、特定の価値観を押し付けられることはありません。作中一貫して公平中立性が保たれてます、ここは素直に好感を持ちました。
しかしながら、確固たる意志がない人間を主人公に据えて、テロ行為に消極的に加担させていく展開は非常にストレスが溜まる。
そして今作の中核を占めるテロ組織「MASAKADO」、この内部描写が絶望的にペラペラです(哀)
これが東日本独立を目指すテロ組織かッ!?どう見ても大学のサークルレベルなんですけど。
不毛な派閥争いを散々見せつけられ、結局はお決まりの内ゲバコースへ。
拙いサークルレベルのくせして、粛清は暴力という生々しさにうんざり。
もう一人の主人公、MASAKADOを捜査する辺見パートも一条パートほどではないにしろ薄い。
自衛官である辺見と公安警察との捜査の主導権争いが軸になってきますが、公安のおっさんとじゃなくて一条と絡めやッ!!というのが正直なところ。
こっちもこっちでどこかで読んだような刑事モノの焼き直し、思想信条・キャラクター共に掘り下げが浅いです。
読了後気付いたんですが、巻末に参考文献が一冊も明記されていない。
分断国家、反政府運動、テロ組織、自衛隊、公安警察、米軍基地問題、男性ホルモンその他医学関係などなど。
専門的に高度な情報を要する緻密な描写を、今作に於いて貫井先生は既存の知識のみで押し通したということになります。
こういう話はリアリティを支えるディティールあってのものだと思うんですが、貫井先生のお考えや如何に?
そうそうまだ三発目があんのよ。
分断日本の生活描写、テロ組織とそれを取り締まる自衛隊や公安警察の組織描写、この二要素だけでも既にグダグダなのに、止めの医学関連が控えてます。
この世から争いをなくすには?と哲学的な問いを発したかと思えば、鬼門である理系に手を出すという迷走振り。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、素人目にも余りに荒唐無稽。
話に説得力を持たせるにはある程度のリアリティは必須だと思うのですが、貫井先生のお考えや如何に?
分断日本を通しての社会批判か、熱い友情物語か、人類は暴力を根絶できるのかという問いかけか。
貫井先生が読者に一番訴えたいことは何だったのか?さっぱり伝わってきませんでした。
第三部の逃亡編は面白かったです
★★☆☆☆
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