今村翔吾著
「大津城の戦い」ですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B4%A5%E5%9F%8E%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
数ある関ケ原の前哨戦の中でこのチョイス。
流石今村先生、目の付け所がシャープですね。
↓以下ネタバレに非ず史実なり↓
激しい攻城戦の末、大津城は落城しますが、西軍最強の立花宗茂は本戦の関ケ原には間に合わず、西軍大敗というまさに矛盾対決を地で行くような結果に。
故事の中でも最も有名な「矛盾」をテーマに定めたとき、今村レーダーが瞬く間に大津城を感知したのが目に浮かぶようです。
っつーわけで、矛盾改め矛楯です。
「最強の楯」と「至高の矛」が対決したらどうなるかっつー皆さん御存知のアレです。
石積集団「穴太衆」 vs. 鉄砲鍛冶「国友衆」
塞王の称号を継いだ主人公匡介 vs. 同じく砲仙を襲名したライバル彦九郎
大津城主京極高次vs.西国無双立花宗茂
穴太衆が積み上げた石垣を国友衆の大筒が撃ち崩す、崩されたらまた積み直す再び崩す、積む崩す積む崩すの根競べ矛楯対決。
ウチの常連さんなら既にお気付きかと思いますが、私ゴリゴリの西軍派でして。
しかも立花宗茂大好きときたもんだ。
正直、『塞王の楯』じゃなくて「砲仙の矛」の方が読みたかったかも。
終盤こそ穴太/国友の相互描写になりますが、あくまで今作は『塞王の楯』、穴太衆匡介の物語。
序盤からW主人公で進めて欲しかったなぁと思いつつ、それだと尺がパンクするのも自明の理。
ただでさえ560項の大長編。これで彦九郎の背景まで描き込んでたら、それこそ複数巻を跨ぐ大長編コースなってしまいます。
今作で描かれるのは、あくまで主人公匡介の物語『塞王の楯』ですから。
全編を通し、一人の男の激動の半生が描かれます。
戦国時代という歴史の大渦の中で藻掻いた一つの泡の物語。
一乗谷〜日野城〜伏見城〜そして運命の大津城へ。
綺麗に伏線と動機が繋がってるので、いくら560項の大ボリュームとはいえ、W主人公にする余裕は全くナシ。
大いに納得の読後感なれど、「砲仙の矛」への未練捨てがたく、、、
もうね、立花宗茂が限界突破ッ!!
強くて頭も切れて部下思い、おまけに謎の?美形描写まで捩じ込まれる始末。
こりゃイカン、掟破りのバランスブレーカーだぜ、あろうことか終盤殆ど持っていきます。
ゴリゴリの西軍派 × 立花宗茂大好き × 今村先生渾身の上げ描写=「砲仙の矛」激推し(爆)
一乗谷陥落、一家全滅の中、何とか生き残った匡介のトラウマ。
戦から何としても民を守りたいという決意、そのために石積みの業を極めるという背景は主人公としては申し分なし。
大津城主の京極高次も、剽軽で憎めない人物として描かれ(そのまんま『のぼうの城』の成田長親ですけど)非常に魅力的なキャラクター。
がッしかしッ
パーフェクトヒューマン西国無双立花宗茂が、その圧倒的キャラクター性を以って積み上げた楯を粉々に砕いていきます。
嗚呼何としたことでしょう、キャラクターがストーリーを喰らう下剋上状態。
加えて匡介と彦九郎も、やや彦九郎に分があるかと。
絶対に破られない石垣とどんな城でも落とす大筒。
自らが信じる業を極限まで高め、それを抑止力として恒久平和を築く。
全く異なる道程を辿るとはいえ、目指す頂は一つ。
石積みという業がロストテクノロジーとして歴史に埋もれていったのに対し、大筒は進化に進化を重ね、今や核という最終形態でもって大国間の全面戦争を押止めています。
彦九郎の抑止論が歪ながらも現代の平和を維持しているという事実。
そしてその大きな平和を守る身代わりとして、今も世界各地で紛争が頻発しているという皮肉。
塞王の楯が進化した未来を夢想するも詮無きこと、本当にやり切れない気持ちになります。
さてと。
最後に超主観的感想をば。あくまで超主観的感想故ご無礼は平に、、、
『幸村を討て』→364
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984838346&owner_id=263792
のときにも書きましたが、今作にて確信。
俺と今村先生、文章の相性が最悪。
皆して吃驚(びっくり)し過ぎ。
びっくりびっくりって、響きが絶望的にダサい。
えッ!?(きっきょう)って読ませんの?
だとしても、そうだとしても多用し過ぎ。
読み易くて軽いだけに、重厚感皆無。
台詞も相変わらず今っぽいです。
ストーリーとキャラクターは最高、石積みの業や段取りなど作品を支えるディティールも緻密なだけに、何とももどかしいッ!!
三度目の正直に期待。
9月16日脱稿、この感想文も関ケ原には間に合わず
★★★☆☆
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