mixiユーザー(id:263792)

2023年12月16日12:07

342 view

382冊目『道』

白石一文著

娘の事故死から心を病んだ妻。
この二年半、義妹と二人で懸命に支えてきた。
ようやく回復の兆しが見えた直後、彼女は二度目の自殺未遂を起こす。
最早限界だった。
こうなったら、もう一度“あれ”を試すしかない。
主人公「功一郎」は四十一年前、高校受験で不合格になってしまったが、“あれ”により救われた過去があった、、、

白石先生との対戦は、今回で三作目。

『一億円のさようなら』→323
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979161114&owner_id=263792
『記憶の渚にて』→339
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981590132&owner_id=263792

「一億円」+「記憶」≒『道』という感じ。
「一億円」の濃密な人間描写と、「記憶」の豪快なSF要素の捩じり込みが高次元で融合しています。
三作目にして早くも、白石作品の作風をガッチリ掴ませていただきました。

相変わらずキャラクターが渋い。
リアリティがあるというか、地に足が付いたというか、年齢が近いこともあって非常に感情移入しやすい。
俺的に物語の主人公は、喜怒哀楽がハッキリした感情の起伏が激しいタイプが好みなんですが、白石作品は真逆。常に冷静沈着、焦らず騒がず落ち着いて、一歩一歩確実に目標に近付いていくタイプ。
今作の「功一郎」も然り。
中堅食品メーカーで衛生管理を担うエリート。
そもそもクールなエリートキャラって、全然俺のタイプじゃないはずなんだけど「功一郎」にはストンと嵌りましたね。
作中の要所要所で「功一郎」が重要な決断を下す度に、成る程ねと納得しきり。
あらゆる想定外の難題が「功一郎」に降りかかってきますが、その悉くを的確に処理していきます。
まさにトラブルシューターのプロフェッショナル、オロオロするばかりの俺も見習いたいものです。

さて、そんなハイスペックキャラの「功一郎」が最後の最後、もうどうしようもなくなったときに試みる“あれ”について語らねばなりますまい。

“あれ”

ねぇ〜、出来れば内緒にしたい、秘密にしたい、ネタバレしたくない。
まあ、アマゾンでも図書館の端末でも、あらすじにガッツリ書かれちゃってるんでネタバレもクソもないんですが。
かくいう俺も、あらすじ読んで面白そう!ってなったクチですから。
いやぁ〜

“あれ”

を謎にしたまま感想文書き上げようと思ったけど、やっぱ無理だわ。
引っ張る?引っ張ってますねぇ〜〜
これがまさに所謂「白石文法」なわけです。
今作もキャッチーなネタを提示しておいて、暫くそれを放置するという焦らしの手法を多用してきます。
まあね、これは「一億円」で既に経験済みでしたから、イライラせずじっくり読み進めることが出来ました。
今まさに、コレを読んでいる貴方はどうでしょうか?
『道』を読了後、検索して来てくれた方が多いのかしら?
ようこそいらっしゃいました。
折角ですから、是非他の作品の感想文も読まれていかれては如何?

、、、、、、。

って、“あれ”でしたね、スイマセン。
ハイ、“あれ”とはズバリ、、、時間遡行です。
我等が「功一郎」、何と過去に戻れちゃうんですッ!!

渋いキャラが織りなす濃厚な人間模様に、この豪快SF要素が捩じ込まれてくると。
『記憶の渚にて』は、ミステリー・SF・ファンタジーの三要素がお互いを相殺してましたが、今作の骨太人間ドラマとタイムリープの相性はバッチリ♪
多次元宇宙論に至る壮大過ぎる展開になっていきますが、「記憶」のときのような置いてきぼり感は皆無。
哲学的でふんわりしたエンディングに逃げられることはありません、どうか安心して読み進めていただきたいッ!!

あらら、興奮して軽くネタバレしてますね、ゴメンナサイ自重します。

と言いつつもうちょっとだけ。
完全開示情報としてページ数がありますよね。
読書してて、この物語があとどれくらいで終わるかというのは誰にでも解ること。
残りもうあとほんの十数ページの段階で、この段階でですよッ、まだ猿を仲間にするシーンだったらどうです?
ハイついてきて、「桃太郎」で例えてますよ。
残り十数ページだったら、既に鬼ヶ島での戦闘が始まってないと尺が足らんでしょう。
オイオイオイ、こんだけ大風呂敷広げといてオチを付けずにブン投げかよと諦めかけておりましたところ、ウルトラCの捻り込みで着地してきます。

「出来ておる喃」

いやぁ〜参った、あのエンディングにはしてやられた!と自然と口角が上がった次第。
くぅぅ〜〜喋りてぇぇえッ!!
でもね、こればっかりはネタバレなしで語るのは不可能なんで我慢します。
しかしまあ、あんなに全ての伏線を綺麗に畳めるもんなんですね。
多次元宇宙の一つである『道』という作品世界における神が白石先生であることに、「功一郎」もさぞ感謝してることでしょう。

くぅぅ〜〜洗い浚いブチまけてぇぇえッ!!

いいですか皆さん、キーワードは「戦友」です。
誰がこのキーワードを口に出したか?
それはどのような意味合いで発せられたのか?
そして、「功一郎」にとっての「戦友」とは?
あんな誰も傷付かない鮮やかなる復讐劇ってあるんですね、最後に残ったモヤモヤが吹き飛ばされ大いに溜飲が下がった次第、いやはや感服仕りました。

じゃあ、“あれ”以外を諸々。
そうですね、やっぱ「白石文法」ですかね。
兎に角白石先生の作品は特徴が際立ってます。
ネタ焦らしと多様ジャンルの捩じ込みは先述の通り。
そして今回も紀行文は健在。
故郷福岡の描写と博多弁、大変懐かしく読ませていただきました。
東京の街それぞれに点在する、「功一郎」行きつけの美味い店描写も素晴らしい。
このメインストーリーと直接関係ない、周りの肉付けの部分が旨い美味い上手い巧い。
料理の味わい方、大将との関わり方で「功一郎」のキャラに一段と深みが増してます。

キャラの深みと言えば、「功一郎」の職業である食品メーカーの衛生管理についても、お仕事モノかっつーくらいガッツリ描写されてます。
工場での品質トラブルシュートだけで一作書けるじゃんって感じ。
日本各地を巡って、その土地土地で美味いもん食って、食品衛生管理を学びつつ、タイムリープして多次元宇宙に突っ込むっつーね、こんなごった煮の闇鍋あります??

し・か・も、ネタバレに配慮して書けない要素もまだまだあるし、、、
酸いも甘いも噛み分けた大人の女性の魅力と狡猾さ、〇の不〇、他の“あれ”、ニコラ・ド・スタール 「道」の秘密、そうそう西洋美術蘊蓄もあったわ。オイオイどんだけてんこ盛りなんだよ。

ネタ焦らしと多様ジャンルの捩じ込み、紀行文にグルメと。
で更に今回、「白石文法」に書き加えたいのは固有名詞の多用、、、どころか乱用振りです。
本来ならば、読者の自由な想像を殺す固有名詞での描写が大嫌いな俺。
「キアヌ・リーヴス」似のイケメンって何だよ。
小説家でしょ、文章のプロなんだから固有名詞じゃなくて、形容詞でどんなイケメンなのか表現しなさいよッ!!
と、毒づくところなんですが、今作においてはどういう訳かそんなに嫌じゃないんだよなぁ〜〜
「功一郎」の行きつけのスーパーが「ヤオコー」って、俺今、「6種の素煎りナッツ」摘まみながらコレ書いてんだけど♪
出るわ出るわこの他にも固有名詞連発、何故俺のアレルギー反応が起きないのかは謎。これが「白石文法」効果?

「白石文法」とは、作家白石一文氏の作品中に次の要素が多いことを言う
焦らし・多様ジャンル・紀行文・グルメ・固有名詞

っつーわけで、超おススメ。
ちょっとそこの貴方、娘の事故を防いでも防いでも、娘が死んでしまってタイムリープを繰り返す安易な展開だと思ってませんか?
否、白石先生は更に進化した能力者なんです。
之は「バイツァ・ダスト」に非ず「D4C」也
なんでソフトカバーなんだろ?この面白さなら絶対ハードカバーでしょ。
っつーか、表紙は絶対ニコラ・ド・スタール の「道」にすべき。


『恋は雨上がりのように』は絶対アニメ派
★★★★☆
1 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年12月>
日 月 火 水 木 金 土
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
  • 01月
  • 02月
  • 03月
  • 04月
  • 05月
  • 06月
  • 07月
  • 08月
  • 09月
  • 10月
  • 11月
  • 12月