mixiユーザー(id:263792)

2023年11月26日17:20

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381冊目『ブラックバード』

安東能明著

表紙を一見、双発の機体が目に飛び込んでくる。
おッ!?「B-25」じゃん、するってーと、東京初空襲ですか。
と、ページを捲るに、、、

>満州 鞍山飛行場
昭和二十年(一九四五)五月二十八日

の書き出し。
、、、うーん、終戦時の秘密作戦ものかな?と内容を確認せず即借り。
何せホラ、第二次世界大戦で使用されたプロペラ機マニアなもんで。ちなみにジェット機には全く興味なし。

陸軍の四式戦闘機「疾風」が翔け抜けるプロローグを読み終え、期待を新たに本編開始。

>昭和二十五年(一九五〇)五月二十五日。

ッ!?ちょちょちょっと待ってと、ここに至って今一度改めて表紙を再確認。

、、、、、、。

朝鮮半島がキッチリ描かれてるじゃないですか。
更に、デカデカと「Douglas A−26 Invader」の文字。
嗚呼そう、「ノース・アメリカン B-25 ミッチェル」じゃないのね、ハイハイ確かに尾翼の形が全然違うわ。

っつーわけで、俺の早とちり。朝鮮戦争時のスパイ空輸を題材にした作品でした。
朝鮮戦争ということで、凡そどこまでが史実かというのは解りますが、どこからが創作なんでしょうか。
ざっと調べるに、日本人パイロットによる隠密飛行の記録は見つかりませんでした。
事が事だけに、歴史の闇に葬り去られたか、、、

盛り沢山。
先ずは主人公日本人パイロットによるスパイ空輸の飛行アクション、これに朝鮮戦争全体を俯瞰するマッカーサー率いる米極東軍と、トルーマン大統領の米政府首脳陣との対立が大筋の流れ。
加えて、GHQとCIAによる日本国内での縄張り争い、戦後の航空行政を巡る白洲次郎一派との暗闘、果ては薄い恋愛描写までが捩じ込まれてて、ごった煮の闇鍋状態。
巻頭の主要登場人物一覧で、その多種多様振りに面喰いましたが、案の定焦点を絞り切れていない印象。
朝鮮戦争を題材にしたオムニバスを、無理矢理一つの作品に合成したみたいな感じ。
マッカーサー罷免、飛行アクション、戦後混乱期の航空会社設立。
三兎を追って、三兎とも取り逃がすかと思いきや、、、一羽は捕獲成功。

っつーわけで、トルーマン vs. マッカーサーは読み応えがありました。
全体的に歴史小説か時代小説か曖昧な中、この部分は確固たる史実を基にした歴史小説でしたから。
「朝鮮戦争」、東西冷戦下での米ソ代理戦争という特殊な構図。
第三次世界大戦への拡大を恐れ半島内での局地戦に止めたい政権中枢と、ひたすら勝利、即ち敵軍の殲滅を熱望する前線との軋轢。
心底恐ろしいのはこの対立に、戦地で今まさに苦しんでいる人々の人生が全く考慮されていないということ。
米中ソという大国に翻弄される朝鮮半島の悲劇と、自分では何も決められない敗戦国日本の悲哀。
作中、原爆使用の是非が大きなポイントとなっていますが、そのトリガーの余りの軽さに、被爆国の国民である我々は暗澹たる気分にさせられます。

で、この原爆使用の阻止に主人公が絡んでくる今作のヤマなんですが、これが曲者。
歴史小説から時代小説への急旋回どころか、なろう系の主人公無双といった様相を呈します。
ここに来て、リアリティとエンタメのバランスが完全に逆転。
これは決して、歴史小説がなろう系より高尚だとかのジャンル差別ではなく、朝鮮戦争という重厚な題材には、史実を重んじる歴史小説という形態が一番相性が良いという個人的感想です。
ノープランで突っ走る熱過ぎる主人公に、「ないわぁ〜」というのが正直な感想。

ついでに書かせてもらうと、今作の根幹である飛行アクションについても些かの違和感アリ。
巻頭の主要登場人物一覧で、主人公は「元逓信省“海”軍委託操縦生」とありますが、戦時中は満州で陸軍機に搭乗。
逓信省の委託操縦生という制度自体、勉強不足で初耳なんですが、海軍所属で「疾風」に乗るなんてことがあったんでしょうか?
終盤に陸軍航空輸送部へ異動になったとの台詞がありますが、初めから陸軍委託でよくね?
ずーーーっとモヤモヤしながら読んでました。

それから表紙の「 A-26 インベーダー 」、スパイ空輸任務で主人公たち日本人パイロットたちが搭乗し作中大活躍する機体なんですが、本文では最初から最後まで「B26」表記です。
米軍の機種区別の変更で、爆撃機から攻撃機になるんだろうなと思いつつ、またもやモヤモヤが募ります。
さらに厄介なのは、全く別の機体「Martin B-26 Marauder」の存在。
だもんで、てっきり初めは「マローダー」に乗ってて、新型の「インベーダー」に乗り換えるっつー描写があるもんだとばっかり。
B-25と間違えて読み始めたらA-26で、作中表記はB26だからマローダーだと思ったら、インベーダーだったっつー、まさにありのままポルナレフ状態。

ここで突っ込むにあたり、もう一回念入りにチェックしてみると、p62に以下の台詞が。
>「先週からB26に乗ってます」
>「マーチンの軽爆か?」
>「あれは退役するようで、双発のダグラス・インベーダー。カテゴリーが変わる前、A26と言われていたやつです」

安東先生スイマセン、俺の失念でしたね。
でも表紙にデカデカ「Douglas A−26 Invader」って書いといて、ずーーーっとB26表記なんだもん。

じゃあ、操縦輪/操縦桿の表記違いは?
B26は双発の爆撃機なんで、操縦輪が正解だと思いますが、時々操縦桿表記になってます。
>マスタングと空中戦もできるそうです。
なろう系のチートモードならいざ知らず、如何に軽快な双発爆撃機とはいえ、戦闘機と空中戦は無理です。

いちいち細けぇことウダウダ言ってんじゃねぇッ!!
って、否ッ否否否ッ!!
朝鮮戦争という史実を題材に採り、実際に戦った軍用機をフィーチャーする以上、今作におけるディティールは、ストーリーやキャラクターよりも重要な要素かもしれません。
故に、???な描写や台詞は著しく読書意欲を殺いできます。
まあね、俺が保守的なんですよ。
エンタメ重視の方なら楽しめると思います。でも俺はやっぱり、歴史モノはリアリティ重視なんでゴメンナサイ。

最後に航空会社設立の件。
このパートが、ごった煮の闇鍋感を特に増長させてます。
原爆投下とスパイ空輸、今作の軸に全く関係ない要素をわざわざ捩じ込んで、全体の統一感を乱す意図がさっぱり解りません。
あの白洲次郎が悪役なのもビックリ。戦後社会を牛耳るフィクサー感が半端ねぇっス。
とは言え、これはこれで興味深い題材なので、オマケ扱いではなく別の作品でガッツリ描かれればよろしいのにと、僭越ながら愚見を述べさせていただきました。
御無礼は平に、、、


真ん中がB25で右がA26、マローダーとポルナレフの枠無ぇ〜〜
★★☆☆☆
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