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2023年07月01日18:17

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371冊目『孤立宇宙』

熊谷達也著

実は熊谷先生は、俺の中でちょっと特別な作家さんでして、、、

ビビりの事なかれ原理主義者にして、ココでも常日頃、他人に自分の価値観を押し付けるな!と宣ってる俺が、この俺がですよ、人様の意見を完全否定するなんてあるまじき異常事態。
今後「熊谷達也」の四文字が刻まれた書籍は禁忌、最早二度と手に取ることはあるまいと。
それ程真っ向からの拒絶、圧倒的な反感。
今読み返しても、当時の憤りがまざまざと甦ります。
って、今作じゃなくて、別作品の文庫版巻末解説文のことなんですが。
『冬を待つ城』→284
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っつーか安部先生、完全にとばっちりでスイマセン。
そうなんです、あの↑解説文が俺と熊谷先生の出会いなら、今作を手に取ることは決してなかったことでしょう。
幸いにも先に『翼に息吹を』→202 読んでたんで。ふぅー危ねぇ危ねぇ。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1954855191&owner_id=263792

この特攻に対する公平且つ真摯な姿勢に触れていたからこそ、熊谷先生への絶対的信頼が醸成され、その安心感から完全否定に流れた次第でして、、、
っつーわけで、熊谷先生とは勝手に何かしらの“縁”を感じてる俺なんです。
揺るぎない信頼から七年、ありえない完全否定から四年。
あの、あのッ、熊谷先生が本格SFッ!?
これはもう読むしかないでしょう。
巻末に羅列された大量の参考文献が、否が応にも期待を押し上げますッ↑↑↑

メガインパクト(小惑星の地球衝突)まで二十数年。
AGI(汎用人工知能)が弾き出した人類の生き残り策は二つ。
地下シェルターへの避難と宇宙移民。
様々な思いを胸に人類はメガインパクトまでの時を過ごす。
地球に残る者と宇宙へ旅立つ者。
遥かなる時空を越えて人類は生き残ることが出来るのか、、、

ま・さ・にッ、気宇壮大にして雄渾、作中に拡がる世界観に圧倒されます。
主人公は、空自の凄腕パイロット「相原蓮(レン)」と、科学技術者「工藤彩音(アヤネ)」の幼馴染み二人。
上記のあらすじは読んでいただけました?
ハイ皆様の予想通り、当然地下シェルター組と宇宙移民組に別れます。
勿論別れたからには、、、そう!再会しますよね。
ええ、ネタバレちゃあネタバレですが、王道を越えた王道展開だし、読者の誰もが予想出来ると思うのでバラしちゃいました。

「愛し合う二人が遥かなる時空を越えて、運命の再会」

↑このベタベタに盛りまくったシチュエーションで感動しないわけありませんよね。
どっこい再会して嗚呼良かったねだけじゃ終わらない、ただ感動するだけの恋愛SF作品じゃございません。この先もう二捻りぐらいあります。

今作の醍醐味は何もストーリーのスケール感だけじゃありません、細部の作り込みが素晴らしい。
日本のSFってどうしても、チープさというか、場違い感みたいなもんが漂うじゃないですか。
リアルリアル、巻末の参考文献量は伊達じゃないです。ディティールが細けぇ細けぇ。
っつーか、科学技術のレベルが進み過ぎてて、こっちの理解が追い付きません。

電子生命体?に進化?してるんですよ。
地球に残って、地下シェルターに籠った人類ね。
肉体はコールドスリープ状態にして、意識をコンピューター上にアップロードしてます。
設備のメンテナンスなら作業用ポッド、外敵との戦闘なら戦闘用ポッド、普段の生活はアバターと、目的に応じて様々な形態に意識をダウンロードすることが可能というとんでもない科学技術レベル。
ぶっちゃけ、人類究極の宿願である不老不死が当たり前になっちゃってる世界なんです。
老いも病も無い、例え戦闘で戦死したとしても、もう一回意識をダウンロードし直せばいいだけの話(その間の記憶は失われるが)。
あらぁ死んじゃったかぁ〜、はいセーブポイントからやり直しねって、まるでゲームじゃん。
ここまで科学技術が進歩しちゃったらですよ、正直、地球滅亡とか宇宙移民とかどうでもよくなるんじゃないでしょうか?
だって、仮想現実の中で何の不自由もなく快適に暮らせるのに、わざわざ現実(物質世界)に拘る必要ないじゃないですか。
勿論、データが保存されてるメインコンピュータを物理的に(小惑星の衝突や敵対勢力から)守る必要がありますし、数百年振りに肉体に意識をダウンロードしたときの凄まじいまでの感度、その生体反応に驚愕する描写(射精の快感や食事の際の味覚等)がありますが、それぞれのメリット/デメリットを冷静に比較検討すれば、やはり電子生命体の優位性は揺るがないのでは。
そりゃいくら数百年振りの夢精超気持てぃーーッ↑♪↑♪ バナナジュースうんまぁぁいッ↑♪↑♪ つっても、流石に不老不死には勝てんでしょ。
果たして、“魂の乗り物”としてふさわしいのは、肉体か電子データか?
ってなことも、今作に内包される一つのテーマであります。

先程からチラホラと、「戦闘用ポッド」だの「敵対勢力」だの不穏なワードが頻出してますが、地下シェルターに籠った人類は一体何と戦っているのか?
今作実は二部構成でして、第一部が地下シェルター組を描く「孤立世界」、第二部が宇宙移民組を描く「拡散宇宙」となってます。
孤立した世界ってことで、またまた大ヒントですけど、ネタバレが過ぎますねスイマセン。
一部+二部で『孤立宇宙』と。

、、、、、、。

熊谷先生、「拡散世界」のが作品にあってないスか?

、、、、、、。

う〜〜ん、、、やっぱ『孤立宇宙』のが良いか、、、皆さんも是非読み終わった後でどっちがタイトルにふさわしいか考えてみて下さい。

っつーわけで、壮大なストーリーと徹底的に作り込まれたディティール、これが今作最大の魅力なわけですが、蛇足ながらちょっと引っ掛かったところも。
メガインパクトという全人類の危機にも関わらず、数名のキャラクターだけで対処してるって感じが、、、
勿論設定としては、全人類がそれぞれ動いていることになってるんですが、物語上、主人公周り数名の行動だけがクローズアップされるもんですから、地球規模の問題なのに市町村単位で進行してるみたいな、、、そこがなんともアンバランスと申しましょうか、、、まぁ、これがまさに「孤立世界」ってことなんですけれども。
それじゃ全然壮大なストーリーにならないじゃんって、安心して下さい、第二部で宇宙にバンバン拡散して行きますから→広い広い広いっつーの。

で、あらすじにもチラッと出てましたけど、この世界では、最終的な重要判断以外はAGI(汎用人工知能)が仕切ってます。
このAGIがまた曲者なんですなぁ〜これが。
人類の生存と幸せを至上命題としてプログラミングされてるんですが、曲者なんですよ、良い意味でも悪い意味でも。
生存はまだしも幸せ、幸せ、、、幸せッ!?!?
幸せとは何ぞや?これをAGIがどう解釈するのか??
「人間万事塞翁が馬」ですよAGI如きが。汎用人工知能くせに生意気だぞッ!と思いつつ予想の上の上をいくAGI、機械の非情さに温かみを感じるこの矛盾。
ネタバレ回避しつつ上手く説明出来てませんが、一つ言えることは、AGI(汎用人工知能)「ツクヨミ」、良いキャラしてます。

最期に小ネタを少々。
メガインパクト前/後で、キャラ名表記が「相原蓮」漢字表記から、「レン」カタカナ表記に変わるんですが、改めて日本語の表現能力凄ぇなと。
使い古された手法とはいえ、たったこれだけで未来度が格段にハネ上がるもんね↑
続々と出て来る専門用語も、AGI=汎用人工知能 みたいに和訳あるだけで頭にスッと入ってくるし。

本格ハードSFだけに、敬遠されてる方もいるかもしれませんがもったいない。
凄まじい科学知識量の中にも、幼馴染み二人のロマンスや、軽快な台詞の応酬、既存のアニメ・映画の引用など、ほどよい箸休めも用意されていてメチャメチャ読み易いです。少しでもSFに興味があるなら是非お薦めしますね。


『インターステラー』ですか、俺も好き♪
★★★☆☆
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