葉真中 顕 (著)
「ロング・アフタヌーン」
生物としての最優先事項である生命維持は担保された状態。
飢えることもなければ、寒さに震えることもない、捕食者が排除された安全な生態系。
しかし満たされない。
ただ漫然と暮らす日々、人生の倦怠期、魂の消化試合、心の栄養失調。
私たちはこの「長い午後」をどう生きるのか?
意に沿わない本を出し続けることを悔やみながらも、出版業界で奮闘する雑誌編集者「葛城梨帆」
年末の最終出勤日、梨帆の元へ小説原稿が送られてくる。タイトルは「長い午後」
送り主は「志村多恵」、彼女は数年前の新人賞選考で梨帆が推していたが落選した作家だった。
何故今頃になって、、、訝りながらも「長い午後」を読み始める梨帆だったが、、、
実は作中作が二作あります、「長い午後」と「犬を飼う」、どちらも志村多恵が書いたもの。
当然ながら、葉真中先生お得意の叙述トリックを志村多恵も伝承しとるわけで。
「オイオイオイ、マジかッ」
つってね。
先ず、読者の皆さんはこの「犬を飼う」でブン殴られますんで、覚悟しといて下さい。
そんでもって、この志村多恵ってキャラに警戒心上りマクリマクリスティ状態で原稿が送られて来るもんですから→「長い午後」ね。
ははーんと、「犬を飼う」が落選したからって逆恨みしてんだろコイツ、こりゃストーカーもののホーラー展開だなと予想するに大ハズレw
人生哲学ですから。
そうそう、人生の「長い午後」をどういきるのか?ってのがテーマ。
今作で人生変わるかっつーっと大袈裟かもしんないけど、心が揺さぶられる人は結構いると思う。
皆ホラ、「長い午後」を生きてるわけじゃないですか。
黒い絶望に沈んでるわけじゃないけれど、白く輝いてもいない。このまま灰色の諦観の中を流されていくだけみたいな。
喝ッッッ
喝だッ喝ッ!!
いや解ります解りますよ、俺だってとっくの昔に人生の「長い午後」に突入してんだから。
人生が白く輝いてない、毎日がキラキラしてない、生き甲斐を感じない、辛いキツイ虚しい悲しい何で俺だけ私ばっかじゃん馬鹿みたいつまんない飽きたオワコン疲れたダルい無理無駄意味ないしwww
喝ッッッ
喝だッ喝ッ!!
お察しします、そりゃ生きてるんだから日々何かしらあることでしょう。
がッしかしッ
敢えて問いたい、本当にそこまで腐るような状況ですかッ!?と。
嗚呼、まぁーーた本の感想からズレるわい。
そもそも、この現代日本に五体満足で生まれついたってだけでもS級レア引き当ててると思いますけどね。
ウクライナみたいに戦争してるわけでもなけりゃ、北朝鮮みたいな独裁国家でもない。
日本がホントに嫌ならいつでも出て行けるし、いつでも帰って来られます。
法に触れない限り、あらゆる人生の選択肢が用意されている。ま・さ・にッ自由ッッ
にも関わらず、自ら灰色の諦観を選んでんのは誰だって話。
キラキラした日々を目指して頑張るのはしんどいから、マッタリした日常に逃げ込んでるだけでしょう。
S級レア引きーの自由に選びーので、メチャメチャ恵まれてるくせに、世の中呪ってるヤツの何と多いことか、、、
喝ッッッ
喝だッ喝ッ!!
俺たちは自由なんです、努力も逃避も自由。
かくいう俺も偉そうに御高説垂れてますけど、人生逃げ続けマッタリ組也。
俺はね、日々生活の中で小さな幸せ見っけるの得意なんで、灰色の諦観に呑み込まれるようなことはありません。
世間基準で言えば明らかな負け組ですが、本人が幸せならそれで良いじゃない。
他人からどう思われようが関係ありません。
結局「長い午後」をどう生きるかつったって、自由なんです本人次第。
勿論、努力して現状を変えるのは素晴らしいこと。
頑張るのが苦手なら、俺みたいに日々の小さな幸せを見つける工夫をしてもいいし、愚かしく人生の倦怠期に沈み込んでいくのもこれまた自由。
もし貴方が今、「長い午後」を過ごしていて、次の行動を自由に選べる状況ならば、それはもう「長い午後」とは呼ばないのでは。
っつーわけで、努力もせずにグダグダ言ってるヤツは、上記の【俺流自由的自己責任論】で一喝です。
一喝なんですが、人生のエグいとこは、努力すれば必ず報われるわけじゃないっつーところ。
人生や夢、努力に対する価値観も人それぞれ千差万別。
たとえ血を分けた親兄弟、愛し合うパートナー同士であっても、この価値観がどうしても合わないなんてことは、人生を生きて行く上で誰でも経験する言わば“あるある”です。
だからこそ、今作主人公「葛城梨帆」の行動は、読者諸氏の賛否両論を大いに誘うところかと。
またここにもう一つの軸、男女の格差問題が絡んでくるんで更にややこしい。
俺が男で且つ保守的な考えだからか、正直梨帆には共感出来ませんでした。
そういう意味では、『ロング・アフタヌーン』より「長い午後」の方が数段面白いです。
ぶっちゃけ、ミサンドリースパイスが強烈過ぎるんで、途中で挫折した読者も少なくないと思いますが勿体無い。本質はこの嫌悪の先にあります。
長いこと読書続けてると、たまに次元突破しかけてくる作品があるんですよ。
次元突破には二タイプあって、読者を物語に引きずり込むタイプと、物語が現実に溢れてきて人生観が変わるタイプ。今作は後者。
繰り返しになりますが、俺が男で保守的傾向ってこともあって、今作はそこまでシンクロしなかったけれど、同じ様な悩みを抱いてる女性が読んだならば或いは、、、
それにしても、葉真中作品は女性主人公が多い。よく異性の心情をここまで理解出来るなと毎回感心します。
そういえば今作読んでて、過去の葉真中作品を次々に思い出しました。
先の通りお得意の叙述トリックと、時代を感じさせる描写は今作でも健在。
「犬を飼う」での生命倫理ついては、『ブラック・ドッグ』→240
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964387488&owner_id=263792
「長い午後」の介護シーンは、『ロスト・ケア』→285
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972607766&owner_id=263792
不毛な左右論争が、何の脈略もなくいきなり無理矢理唐突且つ強引に捩じ込まれてきても安心。
何故ならば、『凍てつく太陽』→300
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975156446&owner_id=263792
にて、葉真中先生の絶妙なるバランス感覚は体感済みだから。
振り返るに葉真中先生って、センシティブな問題にガンガン斬り込んでいくスタイルなんですね。
今作で七作目にしてハズレなしッ まさに押しも押されもせぬウチのエースです。
で、とどのつまり、我々はこの「長い午後」をどう生きるのか?
うーん、、、一万円札握りしめて、高級(←コレ重要)な鮨でも焼肉でも食ってみれば。
取り敢えず美味いもん食うのが一番手っ取り早い。
あとは、、、そうね、、、『ロング・アフタヌーン』読んでみるとか?
葉真中タイラント(ウルトラ怪獣)
★★★☆☆
ログインしてコメントを確認・投稿する