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2022年06月11日15:38

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347冊目『秀吉の枷』

加藤廣著

連投ッ!!
まさかの加藤先生連投ですよ。
っつーか、前回ネタバレした通りこの後『信長の棺』なんで三連投なんですけれども。
私、乱読派なんで。
どんなに気に入った作家さんでも立て続けに作品を漁るってことはまずありえません。
そうね、、、記憶に残ってる限り、、、『ジョーカー・ゲーム』シリーズの柳広司先生以来の快挙じゃないでしょうか。

さて、そんなこんなで「本能寺三部作」、今回は秀吉です。
前回の光秀もそうでしたけど、またしても秀吉のキャラ設定がドンピシャ。
まさに、想像する通りの秀吉像。
で、前回主人公の左馬助の悟りきったクールキャラ振りにイマイチ感情移入出来なかったんですが、今回の秀吉は真逆。
喜怒哀楽全開にして全身これ欲の塊。野望・名声・色・物・生命、あらゆる執着を手放せない権力者をこれでもかと活写。
良い意味でも悪い意味でも満ち溢れる感情、これぞ人間、これぞ人生って感じです。

人間味溢れる野心家から狂気の独裁者へと闇落ち、そして断末魔の恐怖に喘ぐ孤独な最期。
歴史上の人物とはいえ、何という波乱万丈な一生。
好き嫌いはハッキリ分かれると思いますが、やはり魅力的な人物ですよね。
権力は万人を惹きつけますが、誰からも好かれていた好漢がその権力に魅入られ、やがて毒され、果ては呪縛されていく様をとくと疑似体験していただきたい。

タイトルの「枷」ですが、秀吉は二つの枷に雁字搦めに束縛されているわけです。
一つは主家である織田の天下を簒奪したという業、もう一つは跡継ぎ秀頼の出自。
そうなんです、実は「本能寺」は上巻のみ、下巻は専ら豊臣家内のゴタゴタです。
ちょっと待って、「本能寺三部作」ですよね?
立花宗茂の件(バリバリカッコイイけど)や、しょっちゅう小説という物語から逸脱して加藤先生の考察になってしまう等、正直本能寺と超大目に見て豊臣家の跡継ぎ問題以外は蛇足感が否めません。
なので下巻は、「本能寺」関係無いじゃん!というのが率直な感想。
でも、この関係ないオマケが面白いからそれまた悩ましいところ。

今作のあとがきにて、琴線にド真ん中ストレートを叩き込んだ一節がありまして、、、
>筆者の歴史ミステリー執筆の基本姿勢は、勝者に悲哀、敗者に美学である。
いやぁ〜〜実に俺の好みを解ってらっしゃる。
光秀の美学、秀吉の悲哀、ですよね。そして何故か蚊帳の外の信長っつー役割分担。
っつーわけで、今作では「本能寺の変」の勝者である秀吉の悲哀が、これでもかと描かれているわけです。
邪道を突き進み奪い取った権力の座とはいえ、天下は天下、何としても自分の子供に受け継がさせたい。
しかしながら種無しという、権力者の悲哀と同時に溢れ出す男としての劣等感。
それでもどうにかこうにかやっとのことで授かった鶴松の夭折、淀の不貞、そして何より秀頼が我が子ではないのではないかという抱えきれない不安と不信。
天下は奪い取った。しかし天下以外の全て、人並みの幸せがその血に塗れた掌から零れ落ちていく。
加えて、常に自分の隙を窺っている宿敵徳川家康の存在。
日々衰えを増す肉体を叱咤し、何としても存命中に豊臣家を盤石にしなければならないという執念と焦燥。
いやぁ〜〜読ませてくれます、まさかまさか、あの老醜漂う晩年の秀吉に同情することになるとはッ!!

そんな権力闘争の渦巻く豊臣家中にあって一服の清涼剤は、正室「祢々」の存在。
尾張弁丸出しで語り合う二人のシーンは本当に微笑ましく、この後の歴史を知る者としては切なさを誘います。
愛妻祢々との間に嫡男さえ生まれていれば、間違いなく日本の歴史も大きく変わっていたことでしょう。

そんな糟糠の妻を裏切り、側室を渡り歩く秀吉必死の妊活も今作のポイント。
精力剤や媚薬は勿論、遊郭通いで鍛えた秀吉の性技や名医曲直瀬三秘伝の体位まで飛び出す始末。
歴史小説でも中々見当たらない視点で、非常に新鮮に読ませていただきました。

新鮮といえば、綺羅星の如くスター居並ぶ秀吉家臣団の中で「前野長康」の注目振り。
秀長でもなく官兵衛でもなく三成でもない、ソコッ!?ソコ来ましたかぁ〜って感じ、渋い。
今作のみならずこの「本能寺三部作」で、最重要人物といっても過言ではありません。
wikiで補完するに、色々と創造性を刺激する人物なのは間違いありません。流石加藤先生、目の付けどころがシャープです。

あとやはりこの人に触れておかなければ、秀吉の天才軍師「竹中半兵衛」の圧倒的存在感。
すぐ死んじゃうんで、出番僅少ながらもそのオーラは別格。
前野長康が秀吉の手足なら、半兵衛が脳って感じ。
神仏をも恐れぬ所業の信長を早くから覇王と断じ、秀吉にその成り代わりを説き続けた男。
多少の誤謬はあったものの、全てはこの男のシナリオ通りだったという流れ。
死期が迫るにあたり、秀吉に授けた遺言には大いに唸らされました。
しかしその天才をもってしても、信長の胸に秘めた真意は見抜けなかったと、、、
そしてその熱い想いをこの世でただ一人、直接信長から伝えられた人物こそ次回の主人公「太田牛一」その人なのです。
「本能寺三部作」第一作『信長の棺』感想文、近日公開予定ッ乞うご期待ッ!!


祢々の「藤吉どん」にスッキュンハート
★★★☆☆
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