加藤廣著
また本能寺かッ!
そぉでぇす、また本能寺。
ネタもフリもオチも全部知ってる話なのに面白い、そう!それが「本能寺の変」
ここ最近、ちょっと歴史小説から離れてたもんですから。
何かいいヤツないかなぁ〜と書架を彷徨うに今更ながらあることに気付く。
俺としたことが加藤廣先生のベストセラー「本能寺三部作」を華麗にスルーしとるではないかッ!!(ドラマ版は視聴済み)
本来は一作目の『信長の棺』から読むのが正攻法なんでしょうが、いきつけの図書館になかったもんですから。
で、覚えてらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、私、明智光秀大好きなんで。
連作モノは必ず一作目からという自ら課した掟を破り、三作目の明智からスタート。
主人公は左馬助こと明智秀満、斎藤利三と並ぶ光秀股肱の臣ですね。
本能寺の首謀者光秀ではなく、一歩離れた家来からの視点ってのが今作のポイント。
信長も秀吉も一切出て来ません、台詞の中で触れられるのみ。
専ら明智家中の描写に終始、殆ど光秀と左馬助の二人芝居の様相。
一番近くで光秀を支えてきた左馬之助の目から、いかに光秀が病んでいったかが克明に描かれます。
加藤先生が描く光秀像がドンピシャ。
常識人の秀才と狂気の天才、カッチリ嚙み合っていたはずの二つの歯車が時代を追うごとにズレていく様を左馬之助視線で追体験することになります。
天正十年六月二日に脱輪するというのは周知の事実ながら、この視点を変える手法で「本能寺の変」という手垢の付いた定番ネタが改めて新鮮に読めてしまうという趣向。
当事者たちから一歩距離を置いた左馬助の立ち位置がまさに絶妙。
光秀には忠義を尽くすが、信長に心酔しているわけじゃない。
秀吉とのトップ争いに躍起になる光秀をよそに、織田軍団内の熾烈な出世競争にも興味なし。
無欲でマイペース、願うは明智家の安泰のみというおよそ戦国の武者とは思えない草食振り。
微かに心に灯すは、己が馬術の腕を世に知らしめんとするささやかな承認欲求のみ。
この淡白に淡白過ぎるキャラ設定が好みが分かれるところかと。
うーーん、俺はね、喜怒哀楽が激しい感情表現が豊かなキャラクターが好きなんで。
今作の左馬助の様に何事にも動じないクールキャラは正直あんまり、、、
その分、信長の一挙手一投足に右往左往する光秀には感情移入しまくりですけど。
勿論、加藤先生もそういう効果を狙ってるのかもしれませんが、それでももうちょっと左馬助に感情の起伏が欲しい、明智家への忠義を越えて諦観さえ感じさせます。
もっと葛藤したい、物語の中で主人公と一緒に思い悩みたいんですよ読者は。
何もかも悟りきり諦観したキャラに感情移入は至難の業。
これは今作のテーマである本能寺と、もう一つの軸である恋愛描写でもそう。
光秀の娘「倫」との純愛と悲恋。
幼き日の淡い初恋、政略結婚からの離別、運命の再会、穏やかな夫婦生活、子をなせない苦しみ、そして永遠の惜別。
波乱万丈の恋愛模様が描かれるんですが、、、やっぱ淡白なんだよなぁ〜〜
もう一押し、もう一押し欲しい。
そりゃ当時の武家社会を舞台にした作品に、「愛してる!」みたいなラブラブ表現を求めてるわけじゃありません。
左馬助と倫が愛し合っているのは文章を読めば理解出来ます。
そう、頭では理解出来る。でもなぁ〜〜心に伝わってくる波動が弱いんです。
もし心理描写が俺と相性が良い作家さんだったら、号泣必至のシチュエーションだったはず。
最高の素材だけに、もうちょっと上手く料理して欲しかった。
それ故に面白く読んではいても、どこはかとなく漂う不完全燃焼感。
そしてもう一つ大失敗。
やっぱ一作目から読むべきでした。
今、この感想文書いてる時点で、二作目の『秀吉の枷』も読み終わって一作目の『信長の棺』を読んでいる状態。
それぞれが独立した作品なんで、どれから読んでも構わないとは思うんですが、やはり信長から順に読んでいった方が加藤先生が描かんとした本能寺の謎がより鮮明に浮かび上がってくるやに感じられます。
横着するんじゃなかったよ、申し訳ありません加藤先生。
と、毎度お馴染み素直に褒められない天邪鬼がゴチャゴチャ書き殴ってますが、使い古された大ネタ「本能寺の変」を、被害者・最大受益者・加害者の三方向から見つめ直すという加藤先生のコンセプトは秀逸。
しかし今作の神髄は本能寺の謎解きに非ず。増してや薄味のラブストーリーでもない。
じゃあ何なのさと問われれば、、、
ズバリッ「組織モノ」なんです。
是非貴方も史上最悪のブラック企業「織田軍団」に入社した新入社員の気持ちになって今作を手に取り、疑似過労死まで追い込まれていただきたいw
逆に人を使う立場にある方なら、尚更得られるものは多いかと。
職場の人間関係を改めて考え直す、“ビジネス書”としての側面にこそ注目すべし。
仕えたい上司 第一位「光秀」使いこなしたい部下 第一位「秀吉」
★★★☆☆
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