mixiユーザー(id:263792)

2021年08月08日21:00

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327冊目『また、桜の国で』

須賀しのぶ著

外務書記生棚倉慎がポーランドに赴任するところから物語は始まる。
第二次世界大戦勃発前夜、ナチスドイツの暴威がヨーロッパを侵食する中、平原の国(ポーランド)に降り立った若者の過酷な運命。

正統派、まさに王道。
最近は凝りに凝った変化球の小説ばかり読んでいたので、久々にド真ん中にズドンと来たね。
女性作家作品なんで、歴史的事実である外交や戦闘の描写よりも、登場人物の心情や交流に重きを置いた構成だろうと勝手に想像していたらとんでもない勘違いでした。
ガッツリ骨太、当時欧州が経験した凄惨な歴史と真っ向から組み合ってます。

戦前の軍国主義的風潮の中、父親が白系ロシア人であるため、その日本人離れした容姿をからかわれて育った幼少期のトラウマを引きずり、未だに日本人としてのアイデンティティをわだかまりなく確立出来ない慎。
そんな慎とポーランドで交わることになるのは、かつてシベリアから日本に逃れてきたポーランド孤児たち。
祖国に戻り成人した彼らは、幼い頃日本に助けてもらった恩を忘れず、日波友好のため外務書記生である慎をあらゆる面で支えることになる。

そして遂にナチスドイツがポーランドに侵攻、第二次世界大戦が勃発する。
軍事同盟国であるドイツを刺激してはいけないと頭では理解しているものの、その理不尽な暴力に憤る日々。
日本国の国益を第一に考えなければならない外務省職員としての棚倉慎。
ポーランドとの友情を貫きたい一日本人としての棚倉慎。
この一筋縄ではいかない微妙な状況が作品に更なる深みを与えています。
祖国とは?日本とは?本当に国を愛するというのはどういうことなのか。

国家間の付き合い外交も、突き詰めていけば人と人、それぞれ個人の交流から。
結局最後は一人の人間として、相手とどう向き合うかということ。
慎が出した結論とそれに応えるポーランドの友人たち。
どんな逆境にあっても、人を信じる素晴らしさ尊さ、そして儚さを改めて思い知らされました。

ナチスによるユダヤ人迫害やワルシャワ蜂起の壮絶な戦闘等、目を背けたくなるような悲惨な歴史を語るとき、どうしても大仰な物言いや説教じみた雰囲気が滲み出てきて鼻白むことも多いんですが、今作においてそれは皆無でした。
あらゆる思想信条から適切に距離をとった絶妙なバランス感覚。
そして主人公慎同様、全編に溢れる須賀先生のポーランド愛。
アマゾンでの絶賛も宜なるかな。
一作だけ読んで言うのも何だけど、俺、須賀しのぶ先生と相性バッチリだと思うw
大戦モノを結構書いてらっしゃる御様子、こりゃ今から次の対戦が楽しみだぞと♪

今年は、面白さだけでいうと文句ナシで『一億円のさようなら』ですが、一番好きな作品は?と考えるに今作かも。


もしかして須賀先生、軍ヲタ?
★★★☆☆
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