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2015年06月27日20:01

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読書日記No.834(AKB48と村上春樹と宮崎駿から日本が読み解けるか)

■佐藤優・斎藤環「反知性主義とファシズム」2015年5月金曜日刊

本書は、5月のとある金曜日に刊行された本ではありません。
「週刊金曜日」を出している株式会社金曜日という出版社の本なんです。(笑)

前読書日記に続いて、佐藤優さんの登場です。
まぁ、ある作家が気になると、どうしても続けて読んでしまうのです。

それに、ラカン派の精神分析学者斎藤環さんと、AKB48・村上春樹・宮崎駿さん
を論じて、日本社会を読み解く、と言われれば、きっと知的刺激に満ちた本では
ないかと思ってしまいます。

佐藤優さんは、前読書日記でもとりあげましたので、略歴は省きますが、
斎藤環さんは、佐藤さんより1年後の1961年生まれの精神科医で、サブカルチャー
についての論考や、ヤンキー化というワーディングで、現代日本を分析する
ラカン派の精神分析医として、有名ですよね。

早速、短い、惹句を紹介します。

“AKB48、村上春樹、宮崎駿...。知の怪物と気鋭の精神科医が、戦後レジームでも
イデオロギーでもない、戦後社会の“カルチャー”から日本の反知性主義を読み解く。”

章立てと小見出しの抜粋が、無類に面白いので、引用しますね。

第一章 AKB最終言論
 ・橋下批判とパラレル
 ・アベノミクスも宗教
 ・前田敦子は“悪魔”である!?
 ・AKBと天皇制
 ・AKBと大東亜共栄圏
 ・丸坊主事件と巨人の星
 ・TPPの中のAKB
第二章 「つくる」の解釈に色彩を持たせる
 ・「つくる」で描かれた死者の視点
 ・名古屋を舞台にするということ
 ・核となる灰田の物語
 ・クロは雪女的役割
 ・アカの自己啓発セミナー
 ・なぜ河合隼雄と親密か
第三章 「風立ちぬ」の「ふやけたファシズム」
 ・百田尚樹とは位相が違う
 ・スタジオジプリと零戦の構造
 ・なぜ零戦が物語になったか
 ・宮崎駿の中で抑圧されたもの
 ・ジブリ作品とファシズムの親和性
 ・ロリコンと飛行機オタクの両立
 ・宮崎駿の矛盾の総決算
第四章 日本にヒトラーは来ない
 ・日本でファシズムが起きるとしたら
 ・ITがファシズムの障害に
 ・オタクはファシズムに呑み込まれない
 ・ファシズムよりも恐ろしいもの

いやぁ、知的刺激に満ちた対談で、脳髄がピリピリと打ち震えたり
しました。

お二人は同世代で、子どもの頃のTVや漫画やプラモデルなどの
共通のカルチャーがあって、ただ、一番知的に成長する20代後半
から30代前半に、佐藤優さんはソ連に行っていて、教養的なところ
でズレがあって、だからこの対談が、さらに刺激に満ちているのです。

折りしも、百田尚樹さんの、沖縄をめぐる発言が大問題になっている
昨日今日。

百田さんとは、全くモノが違うと評価されている宮崎駿さんのファシズムの
定義を、佐藤優さんが述べている箇所を引用しますね。

“ファシズムの定義は、「束ねていく」ということ。それから、美とテクノロジー
を結び付けること。あと心理観がスタティック(静的)じゃない。ダイナミック
なんです。つまり生成概念になっている。”

“そういったことを考えると、ジブリ作品というのは、全体を通じて、非常に
ファシズムと親和性が高い作品です。もう「ナウシカ」から始まって
ずっとそうですよ。「紅の豚」もそう。強いていうと「猫の恩返し」だけは、
ちょっと違います。”

世相が、ちょっとキナくさくなっている今、知性とは何かについて、メジャーな
カルチャーを材料に、縦横無尽に知性派のお二人が語り合う対談に堪能
したことしきりでした♪
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